あるところに、とうふが大好きなおとこのこがおりました。

彼はゆうしゅうなにんじゃをそだてるにんじゅつがくえんのせいと、忍たまです。あたまもよくてぶじゅつにたける、まさにぶんぶりょうどうをいく彼でしたが、とうふのこととなると少し…いいえ、かなりキャラがほうかい気味になってしまうのが玉にきず、とまわりからささやかれていました。

そんなある日、がくえんちょう先生からおつかいをたのまれた彼は町へ下りることになりました。

「こんにちは、くくちくん。お使いへ行くの?じゃあ出門表にサインおねがいしまーす」

へっぽこ事務員のこまつださんに挨拶をしてサインを済ませ、いざ町へくりだします。

****
とくに何事もなく町へ着いた彼は、さっそくたのまれたものを探しに行きます。


ゆうしゅうな彼にとって、にんむとも言えないようなただのお使いはかんたんすぎたのか、あっという間に終わってしまいました。

「よし、これで全部そろったのだ。」

ぶじにすべての材料を買い終えた彼は、せっかく町のにぎやかな市場へきたのだから少しのぞいてみることにしました。

仲の良い友だちに買っていこうと思いうまそうな団子を包んでもらっているとき、ふと、はいごからなにやら視線を感じます。
何気なさをよそおい、ちらりと後ろを見てみると、彼は目を見開いていきおいよくはしりだしました。

向かった先には−−−

「田楽どうふなのだ!」

ぱあっと目をかがやかせておみせのおじちゃんに焼きたての田楽どうふを5つ入れてもらい、ほくほくと軽い足どりでがくえんへとつづく道を歩きます。
****
その帰り道、きれいな泉のほとりを歩いていると見知った集団がこちらへ向かってくることに気づきました。

「やあ、くくちじゃないか。お使いかい?」
「くくちせんぱいこんにちはー!」

彼は薬草をつみに来ていたほけんいいんかい+くせ者と出会いました。

「こんにちは。お使いを終えて、帰るところなんです。」

そんなあたりさわりのない感じの挨拶を交わしてほけんいいんかいと別れた彼はふたたび歩き出します。

しかし、ほんのちょっと進んだところで…

「うわぁっ!」

なんと新調したばかりのぞうりのはなおが切れて、ばたーんっと顔面から思い切り転んでしまったのです。
痛いし恥ずかしいし、真っ赤な顔をしてむく、と起き上がった彼はあることに気づいて今度は顔面そうはくになってしまいます。

買ったばかりの…焼きたての…田楽どうふが………

転んだひょうしにぽーんと飛んでいき、泉へ落としたようなのです。

「そんな…とうふが…とうふが…」

あまりのショックで言葉が出てきません。ぼうぜんじしつ、ただただほうしんしたひょうじょうで泉をぎょうしし続けます。
彼の目から、ひとつぶのなみだが泉へ−−−


ポタリ。

するとどうしたことでしょう。

泉全体がまばゆく光り出し、人がでてきたのです。
おどろいた彼ははんしゃ的にザッと後ろへ飛び退いてふところからくないをとりだしそれをかまえ、たいせいをととのえます。

「だれだ!」

「いやいやいや、そんなにけいかいしないでよ!」

現れたのは泉の精でした。

「おれはこの泉を護る主だよ。さっきなんか温かいものがあたまに当たってさ。きみ、何か落とさなかった?」

聞かれた彼はこくりと頷いて言いました。
「俺のだいじなだいじなとうふを、落としてしまったのだ…」

しょんぼりうなだれた彼をかわいそうに思った泉の精は、両手にきらきらかがやくとうふをもって、口をひらきました。

「安心しなよ!おれが拾っておいたんだ。えっと、きみが落としたのはこの、上質な絹を使ってその道うん十年のしょくにんがていねいに作り上げた絹ごしどうふ?それともこっちの、食堂のおばちゃんがたんせいこめてそだてあげた大豆で作った1日限定3杯の高級とうふ?」

どちらも価値の高いものでした。

しかし彼は、いいえ、と首をふります。

「泉の主さま。俺はこんなに上等なとうふはおとしていません。それに、とうふなんかより俺は、勘ちゃんが欲しい」

「うん。きみはなんてしょうじきものな………ん?あれ?」

急なアドリブに焦った勘右衛門は、声を落として兵助を叱ります。

《こら!兵助、台本無視すんな!》

「だってこの話、正直に答えたら全部もらえるんだよね?」

…うーん、間違いではないけど…やっぱりどこか間違ってるかも…?

《雷蔵、語りが突っ込んじゃだめ》

あっ!ごめん三郎。えっ…と、正直に答えた彼へのごほうびに、泉の精はすべてのとうふと…ごめん勘右衛門、あとは任せるよ…

「えっ、このまま進める方向なのっ?ど…どうしろと…」

「勘ちゃんもくれるんでしょ?」

「兵助!さっきまでと別人じゃないか!何か雰囲気まで違うし…は!豆腐!ほら、全部あげるから元に戻ってーっっっ」

****《雷蔵、急遽台本を変えたからこれ読んでいい加減締めよう》


ははは…えー、その後、しょうじきものの彼はにんじゅつがくえんへ帰り田楽どうふも高級とうふも泉の精も、みんな美味しくいただきましたとさ。


****おしまい。








 

キャスト
主演

豆腐=五年い組 久々知兵助
泉の精→同じく、尾浜勘右衛門

友情出演

小松田さん
忍術学園保健委員会のみなさん

特別出演

くせ者

語り
五年ろ組 不破雷蔵

脚本・監督
五年ろ組 鉢屋三郎

竹谷八左ヱ門→…で、田楽豆腐屋のおじさん…←苦しい。

以上!


****

ほんとごめんなさい。
しかし後悔はしていない。



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