ギリギリバースデー

 


はぁぁー…疲れた。
ある意味任務に行くよりも…

この歳になって誕生日を祝われても嬉しくない。つーかだるい寝かせろ。




そろそろ晩飯か、なんて考えてる時リナリーと馬鹿ウサギが部屋に入ってきた。入ってきたってより、飛び込んできた。何事かと思うくらいな勢いで。



「ユウ/神田!Happy Birthday(さ)☆」
「勝手に入ってくんじゃねェっ!この馬鹿ウサギ!!」
「なんでさ、ユウ!リナリーだって入ってるんにー!つか、無視すんなさー」
「ファーストネームで呼ぶな!」
「まあまあ、落ち着いて。これからバースデーパーティーするから来てほしいの♪主役がいないと意味ないでしょ」
「…めんどくせぇ」
「いいから、行くわよ。ラビ、連行しちゃって♪」
「あいさー!」
「はぁ!?行かねェよ!おい、離しやがれっ馬鹿ウサギ!!」
「いでっ!ちょっ、暴れんなさ、ユウ!」
「だったら、は な せ !」



てな具合で食堂に連行されてから数時間。
晩飯時だったのが完全に日が落ち、時刻は真夜中と言ったところでさっきやっと解放された。
…つか、無理矢理逃げてきた。

今食堂は酔っ払いの巣窟と化し、間違って立ち入れば最後、…変態どもの餌食だ…抜け出した横でファインダー数人が捕まっているのを見た。…あいつらが無事に帰ってくる保証は…ない(←)


結局は何かにつけて飲みたいだけなんだよ、あいつらは。



…思い出したら余計疲れてきた。

明日も任務はねぇがすることもない、あいつもまだ帰還してないだし寝るとするか。





―・・・





その頃アレンは任務でイタリアに来ていた。


すべてのAKUMAを倒し後ろにいたリンクに振り向き様に聞いた。



「リンク!今何時ですか!?」
「まもなく0時になります」
「え!?リンク、早く戻りますよ! すいません、任務完了しました」
『はい。では、ゲート開通しますので少々お待ちください』
「了解。 …あぁっ、早くしないと今日が終わっちゃう〜…あ!」
「今度はなんですっ?」
「プレゼント買えてないんだった!」
「プレゼント?…あぁ、神田ユウの誕生日でしたね」
「そうなんですよ…プレゼントは、…明日買いに行こう。あ、来ましたね!」
「あ、ウォーカー!待ちなさい!報告が先です!!って…まったく」



開通するや否やゲートに飛び込むアレン。
リンクは一度止めるが、ため息をひとつ吐いていつもよりゆっくり、猛スピードで走る健気な少女の背を追った。





―・・・





風呂上がりの神田が、もはやただの宴会場と化した食堂から聞こえる喧騒を遠くに聞きながら歩いていると、正面から何かがすごい勢いで走ってくるのが見えた。

目を凝らすうちにそれは近くまで迫っていた。



「カーンーダー!!」
「…モヤシッ!?」



―ガバッ



「いってぇっ!…おいモヤシ、お前明日k 「Happy Birthday!神田!」



突進する勢いで神田に飛び込んだアレンをどうにか抱きとめ、なぜ居るのか問おうと神田が口を開けば、それを遮るようにアレンが言った。

その時丁度見計らったように0時を知らせる鐘が鳴った。



「あーあぁ、神田の誕生日1分も一緒に居られなかった…でも、間に合ってよかったですっ」



アレンの勢いとサプライズに呆けるがその言葉を理解して、普段誰にも見せない優しい笑顔できつく抱き締め直す。



「…サンキュ。誕生日はどうでもいいが…お前に祝われるならいいもんだ」
「ふふ。あ…僕今任務から帰って汚いんであんまり寄らない方がいいですよ。…プレゼントも買えてないんです…すいません…」



少し体を離して遠ざけながら、申し訳なさそうな顔で言ったアレンの頭を撫で、小さなキスをする。



「んなもんいらねェ。こんな日ぐれぇは離さないからな」



神田が確信をもって言えば、追い付いたリンクが言う。



「ウォーカーには監視が必要です。…と言いたいところですが、明日の晩までなら許しましょう。夕食が終わったら戻るのですよ」
「本当ですか、リンク!?ありがとう!」
「…はっ、お前も少しはものがわかるようになったな。…モヤシの部屋、漁るなよ」



そう言うとアレンを片腕に抱き、怪しげな言葉を残して自室の方へ消えていった。





「んー、神田の部屋久しぶりですね。…なんだか落ち着きますねっ」
「っお前な…あまり煽るなよっ…とりあえずシャワー行ってこい」
「ふふ、はい!」



どうにかアレンをシャワールームに行かせた神田はベッドに腰掛けため息をひとつ吐く。



「(…はぁー…明日は1日一緒だが無理させる訳にはいかねぇしな…にしても、今日のアイツは素直だな。つか、甘えただ。監査官がいねぇからか?可愛いからいいんだがよ、…俺、押さえられんのか…?)」



などと、ひとり悶々と無限ループしていれば可愛い彼女の声に意識を引き戻す。



「神田?頭抱えて、具合悪いんですか…?」
「いや、違ェ。つか、もっとゆっk……」



顔をあげ固まる。
それもそのはず、目の前にはバスタオル1枚を身体に巻き付けただけのアレンがいたのだから。

ピシッと固まったままの神田にアレンがニッと笑って抱きつく。



「神田!改めてHappy Birthday!…今日は、その、誕生日なのに…プレゼント買えなかったから、ぼ…僕、僕が、プレゼントっ、です//!」



無邪気に抱きついてきたと思ったら全く予想しない発言にもう一度固まる神田だが、プチッと言う音と共に今度は神田が妖艶にニィッと口角をあげて抱きしめかえす。



「俺は煽るなって言っておいたからな。後から腰が痛いだの何だの言われても知らねぇぜ?」
「っ良いです。久しぶりに好きにしてください//…その代わり、明日の午後はお出かけですよっ」
「はっ、上等だ」





「お誕生日、オメデトウ、神田」





翌日、二日酔いで元気のない食堂内で小さな子どもを抱っこするようにアレンを抱きしめ歩く神田と、抱っこされるようにしがみついているアレンが目撃された。


某監査官の報告書によると『二日酔いが酷くなる程のイチャつきっぷりだった』そうだ。





END





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