聖なる夜に口づけを
今日はクリスマス
そして愛しい人のbirthday
「はーい注目〜!それではー…クリスマスパーティー、という名のアレンくんのバースディパーティーを開催しまーっす!!」
コムイが言うと同時にホールのあちこちからクラッカーの弾ける音と「おめでとー!」と言う声が聞こえてきた。
そして俺の隣には“クリスマスパーティー”に参加するつもりでここに来たモヤシがいる。
ステージの方を見て固まってるとこからして、いまいち状況がわかってないんだろう。
「カ、神田…なんですかっ?これっ」
言ってるそばから聞いてきやがった。驚きすぎだろ。…そんな反応もかわいいが。
そうこうしてるうちにモヤシも状況を理解してきたのか、ホールにいる奴らにへこへこしながら礼を言い始めた。
こいつらは何かにつけて酒飲みたいだけだから、礼を言う必要もないが、あいつのいいところだろう。
「さぁ、みんなアレンくんの誕生日を祝って、かんぱ〜い!!」
「「「かんぱ〜い!!!」」」
コムイの掛け声で好き勝手に騒ぎだす団員たち。
モヤシは乾杯のあとすぐに「料理取ってきます!」と走って行った。俺は座れる場所を二人分探し座った。
一人になるとふと思う。「あいつに会ってから自分は変わった」と。前なら二人分の席なんて探さずに座ってるヤツを目で蹴散らしそこに座っただろうし、第一にこんなパーティーには参加すらしなかった。俺も丸くなったもんだ。
と、横に目をやるとモヤシが飯を食いながら俺を見てた。
「!?…テメェいつから居やがった」
「ん〜へっほーはえはられふよ」
「…飲み込んでから喋れよ。何言ってっかわかんねぇ」
「あはは、すいませんっ。 結構前からですよって言ったんです」
「っ!?〜〜っ…っあとで、部屋行くから待ってろよ」
「ふふ、わかりました」
くそっ。モヤシの笑う顔は兵器だ。いちいち心臓に悪い。自覚してほしいもんだ。
「飯取ってくるから、ここにいろよ。絶っっっ対動くな」
俺は見ていられなくなり、適当に飯を持ってくることにした。…とは言っても危なっかしいからすぐに戻ってくるが。
―――それからクリスマスだからと団員にプレゼント(酒や菓子)を配り、ジェリーからのプレゼントである特大ケーキを食べたりと、ゆっくり時間は過ぎていった。
―・・・
「ふぅ…疲れた。でも楽しかったぁ。ほんとに優しい人達ばっかりだ…まさか誕生日のお祝いしてくれるなんて。……にしても神田遅いなー」
そんなことをアレンが考えていると扉をたたく音がした。
―コンコン
「モヤシ、入るぞ」
「っ!! もぅ!!勝手に入ってこないでくださいよ!!」
「いいだろ、別に」
「着替えてたらどうするんですか!……何か飲みますか?」
「……茶…」
「はい、わかりましたっ」
いつの間にかこいつの部屋には俺の私物や、故郷・江戸のものが増えていた。
茶だって以前俺が「茶はねぇのか」と言ってからどこから持ってきたか知らねぇが、置かれるようになったものだ。
「はい、どぅぞ。」
言いながら、俺のは緑茶、自分のは紅茶の入ったカップを静かに置いた。
「…」
「…」
「……」
「……??」
「クリスマス、だな」
「そぅですねぇ。今年は雪が降ってないけど」
「誕生日、だな」
「はい。少しだけ神田に近くなりましたよ♪結婚できるようになっちゃいましたっ」
「…っ!?///」
それを聞いた瞬間アレンを抱き寄せて、言ってしまった。
「…結婚、してくれ」
「へっ!?//あ、え…はいっ?」
「〜〜っだから!!結婚っしてくれって言ってんだよっ…二回も言わせんなっ!」
「…ぼ…僕で、いいんですか?」
「ああ」
「左手はこんなだし、左目は呪われてますよ?」
「そんなの気にならない」
「…い、いん、ですか?」
「あぁ、結婚してくれ」
否定的なことを言いながらも俺の団服を握る手にはだんだん力がこもって、「離さない」と言っているようだ。
仕舞いには胸に顔を埋めて嗚咽混じりだ。
「よろしく、お願いしますっ!」
顔をあげてあのきらきらの笑顔で返事をするモヤシ。
短くキスをして指輪をはめてやれば嬉しそうに何度も光に当てて「わぁ〜」とか「ふふ」とか言いながら眺めていた。ほんとかわいいやつ。
そして、モヤシから離れひとつしかない扉に向かって静かに歩く。
モヤシを見てみると意味がわかったのか笑いながらこくっと頷いた。
それを合図に思い切り扉を引けば…
「わぁ!か、神田君ιお、おめでとぅ!!」
まさかバレているとは思っていなかったのか吃りながら言ったコムイ。天下のエクソシストがこれしきの気配も察せないようでは、この世界はとっくに滅んでいるだろう…。
「…はぁ〜…いつもなら問答無用で叩っ斬るが今日は許してやる。その代わり…今すぐここから立ち去れ。今の聞いてたんならわかるだろ。このあとどぅなるか」
「カ、神田っ止めてくださいよっ、そんなカオでみんなにそういうこと言うのっ!」
俺が含みを持たせて言ってやれば、あいつらよりモヤシが恥ずかしかったようだ。
何を今さら言うのか。プロポーズまでしている恋人と致していないわけがないだろうに。
「いいじゃねぇか、本当のことだろ?」
「もぅ!!」
「じ、じゃあみんな!今日は帰るぞっ!!」
リーバーが声をかければ思い出したようにコムイが言う。
「神田くん、アレンくん、明日もまたパーティーするからね。君たちは強制参加だよ〜主役だからねぇ」
喋ってる途中からリナリーとリーバーに背中を押されながら帰るコムイと、その後ろを楽しそうに帰っていく団員たちだった。
「…あいつら最初っから聞いてやがったのか」
「ふふ、みたいですね」
「……さて…うるさいのはいなくなったし…始めるとするか」
口端を吊り上げながら言って、キスをしてモヤシの肩を押してやれば、俺たちだけの甘い時間の始まりだ。
「Merry Christmas Allen」
翌日の『結婚祝いパーティー』で終始アレンが神田に支えられていたのはまた別の話。
END
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