小さな幸せ大きな幸せ

 


「神田は子どもは好きですか?」

「あ??……お前、なんかあったか?」

「…ぃ、いいえ。別に」



神田が眠っている間に外に出ていたアレンは、どこに行っていたのか部屋に戻ってくるなりそんなことを聞いてきた。神田は不思議に思いながらも気に止めることもなく流したのだった。





―・・・





―コンコン



その日は久しぶりに任務もなく部屋で寛いでいた神田。



「神田、いるか?」

「……あぁ、」

「室長が呼んでるから、司令室に来てくれ」

「(ちッ、任務かよ)……わかった。すぐに行く」



読んでいた本を閉じ返事をしながらも任務の準備をして、10分後には司令室のソファーに座っていた。



「すまないね、久しぶりの休暇だったのに。緊急で任務に行ってもらいたいんだけど、いいかな? 今回はリナリーとふたりで。」

「はっ!?なんでだ!!俺はモヤシとしか任務には行かないぜ」

「ぇ……はぁ。アレン君から何も聞いてないのかい?」

「……なんのことだ…」

「…仕方ない、任務は別の人に行ってもらうから君はアレン君のとこに行って話を聞いてきなさい。 ほら、わかったら早く行く!」

「な、なんだよっ…」



状況も意味も理解しないまま、コムイに背中を押され司令室を摘まみ出された神田は、とりあえず言われた通りにアレンの部屋に向かった。





―コンコン



先程リーバーにされたようにアレンの部屋の扉をたたく。



「おい、モヤシいるか?」

「はーい。とゆうか神田、僕はモヤシじゃなくてアレンですっ!!」

「……中に入れろ」

「スルーですかっ。…はぁ、どうぞ」



神田は部屋に(半ば強引に)入り備え付けのソファーに座った。



「紅茶しかありませんが…どうぞ」

「……」

「……ι」

「………」

「…カ、神田?…僕がどうかしましたかι?」



アレンは沈黙のなか顔を見つめられ,いろんな意味でドキドキしながら聞く。



「…お前、なんで任務に行けないんだよ」

「…!?…っな、なんでですか?」



焦ったようにどもりながら聞く。



「さっきコムイに“任務にリナリーと二人で行け”と言われた。俺はモヤシと行くか単独でしか行かないと言ってあったのに。 でだ…お前、なんかあったか?」

「(…言うしかない、か)……あの、神田は…ユウは子どもは好きですか?」

「…は?またそれか。…あーまぁ、めんどくさいが…モヤシのガキなら…ぃぃ」



神田が言うとアレンは俯いていた顔をばっと上げ、その目尻には涙を溜めていた。
そして次の瞬間、座っている神田にがばっと飛び付く。
急に泣きだし、さらには抱き着いてきたアレンの行動に意味がわからない、と言う風に虚空を見つめたが、落ち着きを取り戻し泣いているアレンを自分から離しながら改めて聞いた。



「どうしたんだ?」



アレンは離された顔を神田の胸にもう一度埋め



「〜〜っ!だから、赤ちゃんができたんですよっ///!!」



顔を真っ赤にしながら半ば叫ぶように言い放ったアレン。

神田は珍しくぽかんとしたがすぐにその意味を理解し、泣いているアレンを力強く抱きしめる。

「……そうか。…アレンは産みたいんだろ?つか、産め。産んでくれ」

「い、いんですか?」

「あぁ」

「…っ…ふぇ…うわぁ〜ん、ユウぅ…うぅ…僕、元気な子生みますねっ、うぁ」

「いつまで泣いてんだ。母親になるのにお前はほんとに泣き虫だな。ガキに笑われるぞ」



神田も口ではそう言いながらもその顔は、普段からは考えられない程優しすぎる笑みを浮かべていた。



「…おい、顔あげろ」

「?なん…っ!?」



顔をあげたアレンに小さくキスをし、言う。



「…アレン、愛して、るっ…こんなときだし幸せなことばっかじゃないだろうが…っ結婚、してくれ///」



滅多に言われない愛の言葉と嬉しい言葉にアレンは



「っ!! はいっ///!!僕も愛してますよ//」



泣きながらもはっきりとそう答え、幸せそうに抱き合うのだった。





こんな戦いばかりの辛いときでも幸せはある

小さな幸せを未来の大きな希望と大きな幸せに





end





おまけ





神田たちが抱き合っている頃コムイたちは…


「神田から“愛してる”とか“結婚してくれ”とか聞けると思わなかったわ〜」

「んーぐすん、よかったね、アレン君。ほんとによかった」

「室長泣きすぎですよι ま、よかったっすね。…つか…これ、神田にバレたらヤバくないっすか……」

「「「………ιι…」」」





END



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