希望を胸に
「最近任務多いなぁ…全っ然神田にも会えてないし…はー」
「ウォーカー、コムイ室長が司令室にと」
「はぁ、…わかりました」
「(イラッ)貴女はエクソシストでしょう!?ならば、シャキッとしてください!職務怠慢と見なしますよ!」
「うぅー…リンクは五月蝿いし、神田には会えないし、任務だし、リンクだし…はぁーあー…」
「リンクだしとは何ですかっ!」
千年伯爵との決戦も間近に迫っている頃。
AKUMAが各地に大量出現するためエクソシストたちは一度の任務に長期間当たらなければいけなかった。
そのためアレンと神田は入れ違いばかりで全く会えていない。その上、会えてもアレンにはリンクの監視があるため、二人の時間はほぼゼロに等しかった。
いくらアレンでも愚痴りたくもなるだろう。
アレンがぶちぶち文句を言いながら歩く後ろを、一方的にツッコミながらリンクが追った。
「コムイさん、失礼します。……あ、…神田ぁ〜っ!」
司令室に入るなり神田を見つけたアレンは勢い良く抱きついた。
「お久しぶりです!帰ってたんですね、元気そうでよかったぁ」
「さっき戻った。監査官に変なことされてないか?」
「大丈夫です。いつもぶちぶち文句言いながら仕事してますよ。 それより…おかえりなさい!」
「あぁ、ただいま」
「文句を言ってるのは貴女でしょうウォーカー!」
神田は反論してきたリンクをアレンを抱き締めた状態で睨み黙らせると、ぴったりくっついて離れないアレンをさらにきつく抱きしめ返した。
ふたりの周りはピンクのオーラが出ていそうなくらい甘い雰囲気になっている。
それを静かに笑って見ていたコムイが口を開く。
「仲が良さそうでなによりだよ。それじゃあアレンくん、本題に入るけど…良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」
「……良、いほうで…」
素直に言うことを聞いたアレンがそう言えば「わかったよ」とコムイが続ける。
「じゃあ、良い知らせから。 …今日から3日間君たちには休暇に入ってもらいまーす!最近は入れ違いの任務でふたりで過ごせなかったでしょ。この3日間アレンくんには神田くんがついてるからリンク監査官もお休み。上に了承は得てるよ」
「ほんとですかっ!?ありがとぅございます! 神田、街に美味しいもの食べに行きましょうよ!」
「あぁ、付き合ってやるよ」
「うんうん。本当に君たちは仲が良いね♪ …じゃあここからは悪い知らせ。神田くんにはさっき話した通りだから」
「………」
「……本当に、良くないことなんですね」
アレンは神田の反応から予想がついたのか顔を引き締め、姿勢を正して話を聞き始めた。
「……2週間後、伯爵との決戦になる。…今までの決着を2週間後に着ける」
「っ!? っそう、ですか…じゃあ、今回の休暇はその戦いに備えて、なんですね…」
「そうなるね。リナリーたちも明日帰ってきたら3日間休暇になるから、久しぶりに4人で過ごすのも良いよ。休暇が終わればまた忙しくなるから…思う存分楽しんでね」
「そうですね、ありがとぅございます」
「それじゃ、話は終わり。それぞれ休暇に入って! あ、リンク監査官は少し残ってね」
「…はい」
「ふふふ〜それじゃリンク、さようなら〜!」
「ウォーカー!!」
神田の腕にくっつきながらリンクをからかうアレンは、司令室に来る前までと同一人物とは思えないくらい明るくなっていた。
―ガチャ、パタン
「それで、アレンくんのことなんだけど…」
ふたりが出ていったのを確認してコムイが話し出す。
「この3日間は勿論、神田くんがついてる時は監視をはずしてくれないかな?2週間後、決戦ともなれば皆で生きて帰ってくることはできないかもしれない…せめて、この間だけでもふたりで過ごす時間を増やしてあげたいんだ」
「…それは長官はなんと?」
「とても渋ってたけど、キミが良いと言うなら好きにしろ、と」
「……わかりました。善処します」
「ありがとう」
「…では」
―・・・
「神田とこうやって話すの、久しぶりですね」
「そうだな。 …お前はしばらく会わないうちに甘えたになった」
「っそ、そんなこと、ないですよ!?///神田こそ優しくなったんじゃないですか!?前ならこんなにべたべたしたら怒ったじゃないですか」
「なんだ、怒ってほしいのか?とんだMになったな」
「っやっぱり変わってないですね! あちょ、ちょっと!?まだお昼ですよ!?そういうことは…っよ、夜に//!ほぉらッ!一緒に街に美味しいもの食べに行ってくれるんでしょうっ?行きますよっ///」
服を脱がしにかかっていた神田をどうにか剥がし衣服を整えるアレン。
アレンの言葉を聞いて素直に離れた神田は、怪しげな笑みを浮かべて言う。
「へぇ言ったな?夜ならいいんだろう、アレン?」
「いっ、いやぁ〜さっきのは言葉のアヤですよー?嫌だな、神田ったら〜はははっ、はぅ」
「久しぶりに楽しもうぜ、アレン」
「い、いぃやぁぁあーーーっ!」
部屋から出てきたふたりをみた者は神田の怪しげな笑みと、アレンの今にも泣き出しそうな顔にだいたいの察しがついたという。
そして半年後のある日。真っ白な衣装を身に纏った二人が、手を取り合って団員の前を歩く姿が見られた。
end
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