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連戦が続いていた。今、兵たちがまとっているのは倦怠感からくる苛立ちと積み重なる疲労だ。これほど長引く戦は久々だった。そのひとつの理由は、こちらの戦力不足にある。ここにいる部隊は本隊ではない。本部隊から抜き取ったいくつかの小隊をまとめた部隊となっている。本隊とは別行動。運悪く、こちらが敵の大部隊と鉢合わせになってしまったのである。現在は本隊の応援を待ちながら守備に徹底している最中だ。

空は暗闇に包まれた。野営地のあちこちに火柱が立ち上っている。
夜食の時間がやってくると、兵たちは一斉に配分場へと向かった。一列に並び、皆は気だるげに自分の順番を待っている。

「うぅ、なんだか目がかすむ」

列に並ぶなまえはごしごしと目をこすった。同時に襲ってくる激しい眠気は心身の疲労からやってくるものだろう。
進む列によろよろと着いて行っていると、突然。
ドンッ
横から誰かに突き飛ばされ、バランスを崩したなまえは列から外れてスっ転んでしまった。

「い、いたぁ……っ」

地面に殴打した尻をさする。顔を上げると、なまえが並んでいたスペースが早くもどこにもなくなっていた。

「おおっと、わりいななまえ。きちんと並ばねえあんたが悪いんだぜ」

代わりに、そこのスペースには中年の意地の悪そうな男がムカつくような笑みを浮かべて居座っていた。完璧なる横入りだ。いち早く食にありつきたいのは誰しも同じだというのにこの男は……!
しかし、あいにく文句を口にする気力はなかった。

「……はぁ、最後尾か」

なまえは木の枝を支えに立ち上がり、渋々、列の最後尾に位置した。
やっと順番が回ってきて椀に夜食を注いでもらった。

「ふわ、こんなものでもすごく美味しそう」

軍用食は“こんなもの”なのだ。
椀を大事に大事に両手に乗せて自分のテントに向かった。

「おい、あんた」

テントに入ろうとしたところで背後から声が聞こえて、振り返ると驚くほど近くに若い男が立っていた。ひどく疲労の様子が伺えた。
色の悪い瞳がなまえを見下す。ぎょっとしながら後退ろうとしたとき、なにか、違和感が――
次の瞬間。

「ッ!?」

男の腕がなまえの口元を覆い、体を抱くように締め付けた。その拍子に椀を落として、夜食が台なしになった。半ば強引に、野営地と隣合わせにあった林の中へ引きずり込まれる。
一体なにがなんだかわからなくて、ただひたすら男に抵抗していた。

「あぐっ!」

木の根元に投げるように押し倒され、悲痛に声を上げた。

「な、なにを――!」
「黙れよ」

威圧するような目つきの男は、なまえの体を組み敷いた。興奮をあおるような息遣いが頬にかかる。

「黙って犯らせろ」

愕然とした。
まさか、こんなことが、起きるなんて。







ごめんなさい
まさかのバージル出てこない…^q^
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