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もうすぐ一時限が終わるというのに、いまだに黒子は戻ってこない。
授業開始前は必ず先生が出席を確認する。もちろん黒子の名も呼ばれたのだが、先生はどうやら彼がいない事に気づいてないまま授業を進めているようだ。黒子の特性のようなもののせいか。影の薄さはこんなときでも良好――
ではなくて。
あくびをかましつつ、つまらなそうに授業を聞いている隣の火神に、小声で、

「ねえ、黒子が授業サボるなんて今まで一度もなかっと思うんだけど……」
「だな。雨でも降るんじゃね?」
「いやそれ普通じゃね」

どうしてか、黒子のことが気掛かりだった。教室を出ていくときの落ち込んだ背中も、授業のサボりも。
苦手だという事実がそんなにショックだったのだろうか。私のせいなのだろうか。……いや、火神がまた変な言い方をしたんだ。口が悪いから盛った言い方をしたに違いない。だから黒子が怒って様子がおかしかったんだ。そうだ、バカガミの口が悪かったから――
と思い悩みながら無意識にシャーペンでノートを塗り潰していると、横から。

「おい。どんだけ思い詰めてんだよ」
「え? いや、だって……」
「別に誰が悪いわけでもねーのに馬鹿かおまえ。人間、苦手なもん持ってて当たり前なんだからよ」

これは、火神なりの励ましなのだろうか。

「今さ、私けっこう落ち込んでるように見えてた?」
「ん? ああ、うんこ我慢できなくなったのかと思うくらい落ち込んでた」
「ちょっと馬鹿野郎、少し声でかいよ死ね」

時計を見る。もうすぐ授業が終わる。
終わったら黒子を捜しに行こう。
このままじゃ、胸につっかえたものが取れない気がするから。

「ね、火神。授業終わったら黒子捜してくるから」
「は? なんでだよ、別にヘーキだろ。そのうち戻ってくるって」
「いいの。私がイヤなの」
「……あっそ。勝手にしろよ」

なぜか火神は機嫌を悪くした様子で吐き捨てるように言って、顔を背けてしまった。

「なにスねてんのよ?」
「スねてねえよ」
「どこが。もう、相変わらず短気なんだから」
「うっせえ」

私はフフ、と笑みをこぼした。
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