short | ナノ
部活帰り。
バスケ部員たちはアイスクリームを片手に夕暮れを背にして帰路を進む。

「だからお前はダメなのだよ」
「いやいや〜、やっぱダンク並にブチ破る勢いでゴール決めないと手に入らないっしょアレは。ガード堅いっすよマジで」
「わかってないのだよ、黄瀬。より遠くからのシュートが無難で正確であり、最も魅力的なのだよ。ダンクなど一方的かつ破壊的なシュートであるが故にゴールをキズつける可能性がある。目に見えてるのだよ」
「なに言ってんすかっ。この溜まりに溜まった溢れ出す気持ちをぶつけるにはダンクがイチ番あってるんすよ!」
「何度も言わせるな、なのだよ。知っているか? 俺のシュートはボールがゴールに吸い込まれていくのではない。ゴールがボールを吸い寄せているのだよ。俺のシュートは必ず入る。アレも同じことだ。お前の敗北は決定的なのだよ」

睨み見下ろす緑間と、うまいことを言われて悔しがる黄瀬。

「ぐぬぬ〜っ……、じゃ、じゃあ青峰っちはどうすか!」

後ろを少しの距離を置いて歩いている青峰は顔を上げた。

「あ? いや、死ぬほどどーでもいいわ。つか俺に敗北はねぇし」
「……あ、なるほど。無理矢理って手口っすね、さすが青峰っち……。あ! でもそれはダンクに近いゴールのっすよね! ね、黒子っち、ね!」

青峰の隣を歩く黒子。
アイスクリーム(一番減っている)を頬張りながら黄瀬を見、心底わからない、というように眉を引き寄せた。

「すみません、そもそも一体なんの話をしているのか少しも読めないんですけど」
「え!? ……っもう、黒子っちはしょうがないっすね〜。そんなんじゃあなまえっちに逃げられちゃうっすよう?」
「なまえさん?」

なまえはバスケ部マネージャーである。彼女はまだ志望校を決めておらず、部員たちが行くどこかの高校に進学しよう、と言うのだ。
それを耳にした《キセキの世代》たちはどうにかして彼女を連れて行こうと奮闘している最中なのである。

「あ、なるほど」

少し考える素振りをしていた黒子が、やっと口論の意味を理解したようだ。

「なまえさんにどう告白すれば同じ高校に行ってくれるか、ですね。それをバスケのシュートに例えてるんです」
「おいテツ、真面目な解説すぎて笑えねえよ……」

黒子は無視して、かすかに目を輝かせた。

「なまえさんは、僕と一緒に誠凛に行きます」
「!?」

三人はその発言に驚愕した。
衝動で黄瀬はアイスクリームを落としたが、そんなのはどうでもよかった。

「えっ、ちょ、ちょちょちょ、どういうことっすか! 俺たちがなまえっちを誘う前にもう黒子っちに取られてた……ってことすか!?」
「黒子ォォォオ、どういうことだ!」
「い、いやまあ、テツんとこなら許せっかな? ……いややっぱダメ!」

黒子は余裕そうにアイスクリームを舐める。

「というか、推測です。ですが、きっと僕に着いてきてくれると信じてます。だって、」

自分の影に目を落とす。

「彼女の光は、僕の影にとって絶対に必要なものですから」

黒子は口元をかすかにほころばせていた。
その場に立ち尽くす三人。一人、先を歩いていく黒子の背を見つめる。

「俺、負けた気がするっす……」
「黄瀬、口にするでないなのだよ」
「まあ、仕方ねぇだろ。なまえの光は俺よりもアイツを濃くできるからな」

負け組の真上で、カラスが鳴いた。
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