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「秀吉様のいない世界に価値などない」

豊臣秀吉がこの世を去ってから、それをよく耳にする。三成にとって豊臣秀吉という男は絶対的なものだった。
秀吉の影を探してか、空を仰ぐようになった三成は苦しんでいた。敬愛していた二人共々死んでしまったからではない。けれど理由はわからない。しかし、苦しんでいた。
そんな後ろ姿をいつも目にしていた。
だから私はさみしかった。

「三成、秀吉様と半兵衛様の元へ、行きたいか」

そっと、その垂れ下がった肩に手を置いた。
三成はこちらに顔を向けようとしたが、またすぐに戻した。
わずかにその顔が空を見る。

「わからない」
「そうか。……私は、もし行くとしたら」

石田が終わる時だよ、と続けた。
三成はゆっくりと俯いた。

「そうか」

なにを思ってか、肩に置いた私の指に三成は手を触れさせた。

「……では私は貴様が終わる時に行く」

沈着な声だった。
なぜかそのとき、私は口元に微笑を浮かべていた。
そのとき、彼は一体なにに苦しんでいるのか私は少し悟った。
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