お前の主、あなたのペット



一体何故付き合っているのかという根本的な質問までされた沖田。

このふたりの奇妙な関係は、勿論ここでも昔からみなに知られていた。

「今日集まってもらったのは他でもねぇ、明日の討ち入りの件についてだ。
少数派テロ組織とは言えど気をゆるめるなよ。心して聞け」


威厳たっぷりに一番奥の中央に立ち、女泣かせのバリトンで語る加え煙草の男がいた。

音にも聞こえた真選組鬼の副長、土方十四郎である。
端正な顔を上げ指揮をとばす姿はさすがだ。

横ににこにこと、局長の近藤。

今朝の議題は先程副長が述べた通り明日の討ち入りについてで、幹部たちが集められていた。


「日時は明日午後の9時、1から5番隊まで。残りは屯所で待機……
おい、聞いてんのか総悟!」

「きいてまさーきいてまさ。
今日の会議は明日の討ち入りのためでしょ」
「のっけしか聞いてねーじゃねーか!」
「聞いてますって大丈夫ですよ。」

「ったくてめーは…
それから加恋!会議のときくらい人形おいてこいと何度言ったらわかるんだてめー!」


説教の矛先が隣の少女へ変わる。

麗しい着物の人形を胸に抱き、加恋はにこにこと何でもないような顔をした。
幼い表情に土方は舌打ちする。

「貸せ。俺が預かっといてやるから」
「いや」
「いやじゃねー!よこせっつってんだ!」

「嫌ですーー!にこちんまよまじんひじかた死ねこのやろー!」

頬をふくらませ土方を見上げるようにして高い声で加恋は叫んだ。

「こるあああ!てめぇ一体どこでそんな言葉覚えてきたんだ!めっ!」
「隊長が…」
「総悟おおおおお!」

回りの幹部たちは飽きれぎみだ。
沖田は面倒くさそうにちらりと横に目をやる。

「おい総悟!お前そんなことしつけてる暇があんならちゃんと指導しろ!」
「うるせーなほっとけよ。
言っても聞かねーのは目に見えてるでしょ。構わねーで下せェ。」


だるそうに頬杖をつき冷たく言い放つ。
土方は言葉に詰まり、罰が悪そうにちらりと加恋を見たあと咳ばらいをした。

「とにかく明日に関してはそういうことだ。
もう一度言う。夜9時、1、2、3、4、5番隊は門前に集合だ。
1番隊は前線に立つ。各自刀の手入れしとけ」

以上、と一礼し土方が下がると近藤がにっと笑った。

「ようし、それじゃ解散でいいぞー!みんな体調気をつけとけよ」

がらがらと障子が開き、幹事たちが解散していく。

朝の白い光。
座ったまま、加恋は座敷に差し込むその明るさをじっと見つめていた。

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