夜うさぎと仔ねこちゃん
生きてゆくのに、理由がいるの
あなたのことが好き。
ほたるの光がちらつきながら夏の晩を彷徨うように
あなたの視線を逃れて消えたり現れたりするのは、美しさだけ見せていたいから…
なのかもしれない
生きる理由を、探している。
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一体、今は何時なのだろう?
私は夜の街をうろついていた。
「…やっと気分よくなってきた」
あの倉庫で。
真っ暗な闇のなかで、隊長が灯す火の明かりをじっと見つめてしまった。
私はお化けも虫もたいして怖くはない。もちろん人並みに驚いたり、少しぞっとしたりはするけれど、少女漫画の女の子のように可憐に怖がって好きな男の子の背中に隠れるような、愛らしい真似はしないと思う。
銀ちゃんや、トシの方がよっぽど乙女ちっくだね?
「似た者どうし」
ふふっと笑みがこぼれた。
だけど怖いもの、私にだってほんとはたくさんある…
「失敗しちゃったな…」
こん、と足で蹴った小石の行方をぼんやり追う。
私は隊長や、他の誰かに、余計な姿は見せたくないのだ。
ここでは誰もがそう。
誰もが過去を背負って、誰もがそんなものとは無縁そうなふりをして、自分の中で折り合いをつけながら毎日強く生きている。
誰の過去もきちんと聞いたことない、だけどみんな同じもの同士だから、それはなんとなくわかってるはず
隊長にも、トシにも、近藤さんや銀ちゃん、神楽ちゃん新八くん、隊士のみんな…
そして私にも。
みんなに同じだけ与えられた苦しみや過去の過ちがあるはず。
私は自分だけたやすく他人に渡して背負ってもらおうなんてそんなことは考えていない。
同じように強くありたい。
この場所で、私を強くするものの一つはそんな気持ちだった。
こんっと強めに蹴った石が、少しの勢いをもって遠くへ転がってゆく。
なおも下を向き目で追いながら、私は足を早めてそのあとをおう。
追って、そしてーーーーー。
「……」
はっと足元の視線の端にうつるものに目をやった。
靴だ。
ということは誰かの足である。
こんな夜更けに、こんな場所で、歩きもせずここに立ってる?
「思った通りだったよ、俺は正しかったね…こんな月の夜だ、絶対何かおもしろいことあるってね」
その声。
さすがに私も固まって、…忌々しいようなものではないけど、でもそれは私の心臓の鼓動を早めるには十分な衝撃を持っていた。
私はその声を知っている。
「久しぶりだね、子猫ちゃん」
隊長とは異なる部類の、美しい顔を持つ男だった。
白い肌と桃色の髪が艶やかに光って、その青い瞳が…獲物を見つけた肉食動物のような目をしたその眼差しが、私を射抜いている…
「神威くん」
わたしはその人を知っていた。
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