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こんにちは。
私はとある高校に通うとってもワルな女子高生、名前は佳音…

あぁ、やめた。
こんなの柄じゃないのよね。

お久しぶりとでも言うべきなのかな…よくわからないけど、番外編とかいうわけのわからない話のために今日はきました。

今の私のとっっってもウザったい日常をお見せします。

助けてください、ほんとに、誰でもいいので。







「佳音」

朝の光がさす下駄箱。
耳元で囁かれた。
甘い声にぞわっと肌を粟立たせて私はバッ!と振り返る。

「ちょっと…」

背後に立っていた人物に睨みを効かせると、その男は端正な顔をふわっと崩して笑うのだ。

「おはよーございまさぁ佳音、今日も女神のように麗しいですねィ…あんまり美しくて周りに天使がちらつきやした」

「あっそ、眼科行けば」

ふいっと顔を背けて靴箱を開いた。わざと数段低い声で言い放つのだ。
なめられないよう、絡まれないよう。

だって。

「あっれれ、おかしーねィこの子首筋が真っ赤でさあ」

聞くからにニヤニヤした顔でそう言い寄ってくる憎いあんちきしょーに、私は大声で叫ぶのだ。


「うるさいっ、沖田のバーーーカッ顔だけ男!チャラ男!死ね!」

だって私の顔、真っ赤に決まってるから。

そう、その名は沖田。
沖田総悟。

とってもうざい、私のーーーー。


「ちょっ、土方聞いた?きーた今?佳音が俺の顔褒めた」

「ねぇお前なんでそんな嘘みたいにポジティブなの?死ぬの?」

後ろからそんな会話が聞こえる。
ヒジカタというのは沖田の友人(?)で、なぜ(?)などつけたかと言うと、友人というにはあまりにもサディスティックな扱いを日頃から受けているからだ。

この男、聞けばとんでもなく悪趣味なサド野郎だという。

最近やっと周りの人からそういう実態を聞かされたのだが正直驚いてしまった。

だって、沖田は優しい。
甘くてうっとおしくて、軟弱な女みたいな奴だ。

でも、そういう沖田は私にだけの、特別な沖田なんだって、近ごろわかった。

「お前ぜってーなめられてるぞ、遊ばれてンだよ」
「はっ、言ってろ土方。
うらやましーからって妬みなさんな。
佳音は俺の女。
かわいーかわいーおれの彼女でさァ」



「…ばーか」

下駄箱の出口のところで少し立ち止まって、後ろでヒジカタとバカやってる沖田を見つめ、ぽつりと呟く。

そう、バカなのだ。

だけどわたし、私って…
私は、そんな沖田のことがーーー。








ドロップ 番外編

『梅雨明けて』








「中間考査が済んで浮かれとるアホもおるじゃろうが、知っての通りいつの間にやら期末考査の方がもう近い。

この範囲は頻出じゃぞ、しっかりついてきておるか?」

私は肘をついた手で頭をかきむしった。

バッカじゃないの、何が二次関数よ。
頂点座標や定義域がなんだってーのよ、知らないわよ、勝手に求めてなさいよ。

教科書に並んだ難解な等式や不等式、そしてグラフ問題に目を凝らす。

この範囲はまだかろうじて、中間考査に沖田と猛勉強したから基礎的なことはわかる。

わかるが、こんなたくさんの問題を解いていたらもう頭がおかしくなりそうだ。

(沖田…)

沖田が今目の前に現れたらきっと全部やってくれるだろう、現れないかな…神様のよーに、今目の前に来て欲しい。

そう思った。
なんとも不純な動機であった。


月詠は教室の窓際を、微笑ましく見守っていた。

学校を騒がせていた不良少女。

しかしある時から学校の休みが極端に減り、それだけでも万々歳であるのになんと授業にもさぼらず参加するではないか。

同僚の銀八から軽く話は聞いていたものの、この生徒の心変わりに改めて感心するのだった。

(Z組みのヤツら、捨てたもんでもないのかもしれんな)

彼女を変えた、騒々しい、個性豊かなメンバーたちを思い浮かべながら。


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