兄イヴェと孤児院時代ローランサン。ノエルは孤児院出身でシエルと友達。二人はノエル経由で知り合いという残念なオリジナル設定。
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 三つ年下の僕の可愛い妹、ノエルは孤児院出身だ。どんな理由なのかは知らないが、親が彼女を養子として迎え入れてから、早いもので二年が経った。優しく器量の良いノエルはすっかり家に溶け込んで、お兄様と僕を兄として慕ってくれる。僕もそれが嬉しくてノエルを実の妹として可愛がった。
 そんなノエルだが、久し振りに届いた孤児院からの手紙に、すっかり友人が恋しくなってしまったらしい。普段は欲のないノエルたっての希望で、僕達は孤児院に遊びに行くことになった。


***


 孤児院に着いて早々、ノエルは友人の女の子――確か、シエルという子だった――と会話に花を咲かせていた。本当に嬉しそうな二人に水を注すのは嫌だったので、僕は孤児院の周りを散歩することにした。
 外は野原で、豊かな自然が思い思いの音を奏でる。風車が風で回り、そして野の緑がたなびくこの景色が好きだった。一度大きく伸びをしてから意気揚々と歩き出した。
 しばらく歩くと辺りを一望できる特等席に着いた。それは一本木の下にある木陰。そこに立つと、孤児院が小さく見えて、更に首を回すと風車が目に入る。あまりに素敵な景色で、僕は絵の具とキャンパスを持って来なかったことをひどく後悔した。まあいい、次の機会にしようと思い直し、代わりに両手の人差し指と親指で四角を作り、その中に景色を収めた。うん、綺麗。やっぱり今日はこれで満足しよう。
 少し休もうと木元へと歩いていったとき、見覚えのある白銀が見えた。ああ、もしかしなくても彼じゃないか。ゆっくりと近付いて木の裏側から顔を覗かせると、そこに居たのはやはりローランサンだった。

「やぁ、久し振り。」

 そのまま声をかけると、ローランサンは驚いたようにこちらを見た。彼は座っているのでこちらを見上げるような体制になる。

「なんで……。」
「ああ、ノエルがここに来たいと言ってね。僕はそれについて来たんだよ。」

 見上げるローランサンの顔は以前よりも大人っぽくなっていて少し驚いた。とは言ってもまだまだ少年の域を抜け切らないが。弟の成長を見る兄の気分ってこんな感じなのだろうか。緩む頬をそのまま、ローランサンの隣に腰を下ろした。

「大きくなったね。もうそろそろ成長期かい?」
「……たぶん。」
「ローランサンは背が高くなりそうだなぁ。抜かされないかどきどきするよ。」
「……ふうん。」

 相変わらず口数の少ないローランサンに、懐かしさから笑みが消えない。他愛ない会話が楽しくてずっと話しつづけた。あまり喋らないにしても、相槌はきちんと打つローランサンに、話は尽きることはなかった。
 しばらく話していた後に、ふと初めてローランサンに会ったときのことを思い出した。猫のようにこちらを警戒してしまって、今ぐらい話せるようになるまで随分時間がかかったものだった。

「ローランサンって、最初会ったとき猫みたいだったよね。」
「そうなの?」
「うん。なんかね、人間を怖がる野良猫みたいだった。……そうだ、ローランサンは僕のことをどう思った?」
「イヴェールのこと?」
「うん。」

 ローランサンは膝を抱えて座っていて、その腕の間に顔を埋めて考えている。どんな答えが帰ってくるんだろう。こっそり楽しみにしていると、ローランサンは顔を上げて口を開いた。

「変。」
「えっ、そうなの?」
「変……、へん?……うん、変。」

 ローランサンは一度首を傾げたが、大真面目な顔でそうのたまった。変って、変ってひどくないだろうか。第一印象が変なんて、いくらなんでも悲しすぎる。でも、ローランサンはなにか謎が解けたかのようにすっきりした顔だ。真っ直ぐな藍色が少し痛い。

「……ちなみに、理由を聞いてもいいかな?」

 このままだとあまりにも悲しいので、せめて理由を聞こうと僕はローランサンに問い掛けた。ローランサンは少し視線をさ迷わせた後、躊躇いながら口を開いた。

「なんか……イヴェールだけ、変だった。他の人と違ってた。」
「違うかな?」
「うん。こう、なんか、変。きらきら?ぴかぴか?してた。」
「……うーん、そうかなぁ。」
「うん。」

 ローランサン自身もなんと言えばいいかわからないらしく、一生懸命当て嵌まる言葉を探しているようだった。あんまりにも一生懸命考え過ぎて、眉間に皺が寄ってしまっているのを見て、なんだか申し訳なく思った。

「まぁ、今は変と思われてないしいっか。」
「ううん、今も変。」
「ええ、嘘でしょ!?」
「変。」
「うう……じゃあもういいよ、変で。そろそろ暗くなるから、帰ろうか?」

 立ち上がってローランサンに手を差し出すと、躊躇いながらも手を握り返してくれた。まだ小さい手は、ローランサンが少年であるのだと伝えていた。

「また明日もここで話そうか。」

 こくん、と頷いたローランサンに微笑んで、僕は手を繋いだまま孤児院へと歩いて行った。






first impression
変かって言われたら違う気がするけど、それしかぴったりな言葉を知らない。


100430

……………………

ローランサンはイヴェールを「特別綺麗だ」と思ってるし、そう言ったつもりです。
小さい子ってあんまり言葉を知らないじゃないですか。だからローランサンは「特別」を「他の人とは違う」、「変」と言って表しています。「綺麗」は「きらきら」、「ぴかぴか」で。
完全に私の自己満ですすみません……。


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