運が悪かったというかなんというか。ゆっくり流れる雲を見ながら溜め息を吐く俺の耳に、ちょっとシカマル早くきなさいよー、といういのの甲高い声に対し、へーへー、と適当に返事を返しながら両手の荷物を持直しこちらを振り返ったいのとサクラの方へと歩きだした。今日は久々に任務もなく天気も良かったため、ふらっと散歩に出てみたのだがそれがいけなかった。偶然であった目の前の女2人組に出会い、それはもう理不尽なくらい強制的荷物持ちをさせられることになったのだ。めんどくさいことこの上ない。しばらく2人の後を少し遅れてだらだらと歩いていると視界の端に見知った黄色頭を見つけてそちらを振り返った。間違いないナルトだ、と確信した俺は口元に笑みを浮かべて奴の名前を呼ぶ。案の定いのもサクラもそちらを振り返る。後ろの2人は確実にナルトにも荷物持ちをさせるはず。ナルトには悪いが、道連れだ。 「んあ?シカマルいのサクラちゃん?」 「あれれ?ナルトくんのおともだち?」 シカマルが言ったとおり、振り返ってみたら確かにそこにナルトはいた。ただ1人じゃなくて2人、それも女の子と一緒にいるもんだから私は隣に立ついのと顔を見合わせる様にして驚いた。呼んだシカマルも女の子がいるのには気付かなかったらしくやはりこちらも驚いた表情をしている。3人揃って何してんだ?と近づいてくるナルトに、あんたこそ何してんのよ、と質問し返した。 「俺はfirst name姉ちゃんに木の葉を案内してやってるんだってばよ。」 first name、それがこの子の名前なのか、ナルトの台詞に続くようにして、こんにちは!と微笑む。さっきナルトは里を案内してると言っていたからもしかしたら里の子ではないのか、そう思って聞けばその通りらしい。 「first name姉ちゃんってば喧嘩して家出してきちゃったんだよなー。」 「ねー。」 「は?家出?!」 こんなかわいい顔して家出少女らしいfirst nameちゃんは笑顔でナルトの言葉を肯定した後、だんながうるさいんだもーん、とほんの少し頬を膨らませる。だんな、とは家族の誰かの愛称だろうか。お父さんとかお兄さんとか。まさか旦那様ってことはないだろう。どちらにしろ、家出なんて聞いて黙っているわけにはいかない。苦笑いを浮かべながら、家の人心配してるんじゃない?と言えば、ないない、と首を振って否定される。そんなことあるはずないってばよ!とナルトの奴まで否定しだすから私はおもわず首を傾げた。 「first name姉ちゃんの家族ってば酷いんだぜ!?なんだっけ、えーと」 「甘党とぎょかいるいと粘土とお人形しゅーきょーとお金と植物とぐるぐるとなぞ、だよナルトくんー」 「あ、それそれ。な!酷いだろ?」 わかんないわよばーか。私は軽く溜め息を吐きながら意気投合って感じの2人を見た。あの頭がキレにキレるサクラとシカマルもさっぱりって顔してるから、相当意味不明な回答だったらしい。それにしても精神年齢の低い子だと思う。さっきのだってほとんど漢字が使えてないじゃない。こういう、子供の家出が一番しつこくて質が悪い。私はにっこりと笑みを浮かべて、きっと家族みんな心配してるから帰った方がいいわよ、と説くように言えば、心配してたらそれはそれで気持ち悪い、と絶えることのない笑みを少しひきつらす。心配してたら気持ち悪いって、一体家族に対してどんな印象を持ってるのか。 「でもいつかは帰らなきゃなぁ…。」 「ええ!なんでだってばよー!」 「だっていつまでもいなくなってると殺されるー」 家族に殺されるって、どんなんだよ…。女の子の表現が過剰なのか、さすがに殺されはしないはずだ。ナルトがブーブー文句を言ってるようだが家出中の女の子が帰るって言ってんだ、いいことじゃねーか。 「でもあと1週間は帰らないよーせっかく木の葉に来たから観光したいし!」 「本当に!?姉ちゃん!」 「本当だよーだからナルトくん、案内よろしくね!」 つーことはだ、俺は結局1人で荷物持ち続行ってわけか…。そんな会話を交わしたあとさっさとその場を後にする2人を見ながら、俺は深々と溜め息をついてずれた荷物を持ちなす。もしこの1週間でまたあの2人に会うことになったら今度はその観光とやらに同行しようか。むしろ仲間内みんなで押し掛けナルトを冷やかしてやろう、なんてささやかな八つ当りを考えながら。 お気楽少女の楽しみ方 (ナルトくんのおともだち素敵ねーまた会いにいこうね!)(もちろんだってばよ!) |