(2007.04.15)



最初はまさかと思った。今までこんなことはなかったのに。オイラは目を丸くしてその様子を見ていた。オイラだけじゃない。イタチも鬼鮫も飛段も角都も、今この場にいる奴全員同じ気持ちで同じように目の前の光景を見つめている。だって信じられない、あのfirst nameと旦那が喧嘩をしているなんて。オイラや飛段とfirst nameが喧嘩をすることはよくあるし、イタチや鬼鮫、角都ともたまにだが意見の食い違い程度のことはあった。しかしfirst nameと旦那が睨み合っているところは初めて見たし、正直ありえないことだと思っていた。first nameと旦那は趣向が似通っている部分があるためかあまり意見が食い違うこともなく、たまにあっても旦那がすぐに妥協するか、それができないようならいつものきつい性格を生かしてものの見事にfirst nameを言い包めてしまう。またfirst nameが何かしでかしたときも旦那は反論する間も与えず一方的にfirst nameを叱り付けてしまうので必然的に衝突するようなことにはならないのだ。だけど今は、


「…だからそいつは違うって言ってんだろーが、わかんねーガキだな…。」

「私が書くんだから何書いたっていいじゃん!だんな勝手だよー!」


あ、あのfirst nameが旦那に反論してるぞ、うん…。今までfirst nameに楯突かれたことがなかった旦那も少し扱いに困っている様で小さな舌打ちが聞こえた。旦那は暁の中で一番first nameの扱いが上手いと思っていた。そこに多少の親バカはあるものの、甘さはない。オイラ達はどうもfirst nameを甘やかすところがあるようで何か頼まれたりせがまれたりすると、まあいいか、なんてなることが多々あるのだが、旦那にはそれがないのだ。だからfirst nameも旦那の言うことは基本的に素直に聞く。怒られたときの怖さを知っているから。だけど今のfirst nameは恐怖よりも怒りが勝っているようで、目が据わっている。first nameだって正式メンバーじゃないにしろ一応は暁にいるのだ、いくら言動や行動が子供でもそれは犯罪者であることを指している。こんなに怒ってるfirst nameは始めてだ。一体どんなことになってしまうのやら…。


「………の…、…か…。」

「あ?聞こえねーよ。」

「だんなの…、ばか…!」

「なっ!誰が」

「だんななんかゼツに食われちゃえばいいんだー!」


……心配、いらなかったみたいだな…うん。first nameはそんないかにも子供らしい捨て台詞を残してから瞬身でさっさと姿を消してしまった。オイラの後ろから、俺ハ傀儡ハ喰ワナイ、といつのまにか現われていたゼツの声が聞こえてきたので振り返って、わかってる…うん、と言ってやる。再び旦那に視線を戻せばそれはそれは不機嫌そうに顔を歪ませ舌打ちをしていた。本当は今すぐ、旦那旦那、と話し掛けて喧嘩の原因を問い質したいのだがとてもじゃないけと話し掛けれる雰囲気ではない。そんな中、がらっとリビングの戸が開いた。一斉に視線がそちらへと集まる。そこにはこの重たい空気に不信感丸出しのリーダーが立っていた。リーダーは、何があった…と半ば呆れたような、そんな声を出しながら傍にいたゼツに何かの処理を頼んでいた。大方先の任務で出た死体だろうけど。再び旦那に視線を戻したときリーダーが、そういえば、と話し出すのが聞こえ再び視線をリーダーに向けた。


「…first nameは一体何処へ行った。任務でもないのに瞬身を使って出ていったが…。」


驚いた。きっとこの場にいる全員がだ。first nameは自室へ帰ったものとばかり思っていた。しかしそうではなく出かけたというのだ。ゆっくりと旦那の方を見れば、そこには先程の数百倍は機嫌の悪そうな旦那。その様子を見たリーダーも大体の事情は把握したみたいで、オイラ達は全員、帰ってきたfirst nameの身を心の中で案じた。がしかし、数時間後オイラ達の心配は別なところへと変わる。その日、first nameが帰ってくることはなかった。





叱られ少女のいじけ方

(first nameのやつ、出かける前には行き先を言っていけと何度も…!)(旦那…やっぱアンタ親バカだよ、うん…)

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