(2008.05.31)



ある晴れた日の夕方。私は木に登ってなんとなく夕日が落ちていくのを眺めていた。何も考えることなく、ただ沈む温かなオレンジを瞳に映す。ふわりと吹いた風が髪を撫でた。それとほぼ同時に、元気そうっスね、と特徴的な口調で放す声が聞こえて私はゆっくりと振り返る。おもわず、マダラさん、と呼びそうになるのを何とか喉で止め、トビさん、と後ろで逆さ吊りになる男を見た。


「おかげさまで、毎日充実してます。」

「そうっスか。まさか生き延びるなんて思ってもなかったっスよ。」

「ええ、私も。今こうしてこの世に存在していることが信じられません。」


トビさんは、計画が狂ったな、と溜め息を吐いた。おもわず、ごめんなさい、と謝ってしまう。私が貴方に感謝する気持ちは本物なのに、仇となってしまった。だけどトビさんは片手をヒラヒラと振って、別にいいっスよーと大して気にしていないような素振りを見せる。


「first nameの持ってくる情報は十二分に組織の役に立ってるますからね、精々これからも使わせてもらうっス。」

「それはもちろんです。暁にはどこよりも優先的に無料で情報を提供いたします。」

「ま、当然っスね。下手に死なれるよりこっちの方がこちらの利益になるから結果オーライってとこっスね。今は情報屋に専念してるんスか?」

「いいえ、ただでさえ一所に留まらずフラフラしてるのに仕事までこんな不定期なものだと生活できませんから。副業としてパン屋さんでアルバイトをしています。」

「パン屋?」

「小さい頃の夢でしたから。」


首を傾げるトビさんにそう言いながら笑顔で頷いてみせる。角都さんの紹介です!と付け足せば、ふーん、と興味のなさそうな返事が返ってきた。トビさんは溜め息混じりに、精々野垂れ死にしないよう頑張るんだな、と突然仮面を外しマダラさんの口調で言い放った。あっけに取られてその顔を凝視するとすぐに仮面は装着され、じゃあ失礼します、と再びトビさんになったマダラさんは夕焼けと一緒に闇に溶けていってしまった。1人残された私はしばらく先程までトビさんのいた場所を眺めて、それから再び沈み続ける太陽へと視線を戻した。少し目を放していた内に随分と欠けた太陽は程無くその姿を完全に隠し、闇が辺りを支配する頃、私は1度瞬き始めた星を見て、その場から姿を消した。





▼あとがきと解説

 私がこのサイトを作ろうと思ったのは第一にこの話が書きたいと思ったからでした。もう携帯サイトは作らないだろうな…そう思っていた矢先のことで私自身、この意志の弱さに呆れながらもサイトを作り制作開始。行き当たりばったりな部分もありましたがなんとか予定していた完結に結びつけることが出来て満足しています。
 書き始めた当初この話は死ネタで終わらしてやろうと思っていました。理由は原作に触れないため。原作を変えることなく連載する為、時間軸を2部始動前に設定して書き始めたのですがヒロインがいたら矛盾が生じる。そう思い、なら殺してしまおうか、なんて物騒なことを考えたのですが、やはり連載ですし後味よく終わりたいと思い、このように落ち着けました。
 この連載にまだ不可解な部分が残っているとすればサイかな、と思います。ですがこの作品は決してサイの話ではなくあくまで主体は暁です。暁、という複数を相手にしている以上、誰か1人とくっつくことが許せなかった私はあえてサイとの話を書きました。暁内での疑問としてラストに関するマダラの思いをおまけ的に上に少しばかり書いてみましたがサイとの関係まで解決させてみるつもりはありません。これから先の話は脳内で勝手にサイとくっつけるもよし、暁の誰かとくっつけるもよし、その他自分の好きなキャラとくっつけるもよし、貴方なりの解釈を見つけてみて下さい。
 それから16話について。ラスト近くに突然付け足した話ですが、特別な理由はなく、ただ元メンバーとも絡ませておきたいと思ったのと、実は話の数合わせ的な意味もあったり。この事に関してはあまり深く考えないことをオススメします。
 なんて、長々偉そうに(すみません…)綴ってみましたがこれがめかくしあそびの全貌、というより無駄知識です。

 最後になりましたが、今まで読んで下さった方々、感想をくれた方々、皆様に多大なる感謝を。本当にありがとうございました。

 2008.05.31 ゆいん

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