(2008.05.26)



燃えている。
私はその国から少し離れた森の高い木の上からじっと今日の夕方まで賑わっていた町の残骸を見た。任務に出かけて3日の暮れ、ようやく目当ての国を落とすことが出来た。幾分かてこずったが、これで任務は完了した。ただ、


「…完遂は…出来そうもないな…。」


ここからアジトまでは急いで2日、タイムリミットには到底間に合わない。任務完了の報告が出来なければそれは私の中で任務を完璧に遂行したことにはならなかった。


「…まあこの怪我じゃ…どの道、無事にアジトに帰れそうもないしね…。」


この国は忍びこそ保持していないがそれ以外の軍事力に長けていて、それこそそんじょそこらの隠れ里に引けは取らなかった。だからこそ人力柱に手を出そうとして暁の目に止まってしまったのだけれど。どちらにしろ、私1人では厳しかった。何とか陥落させたもののこちらの身体的ダメージも大きく、元々死ぬつもりで来たから止血できそうな物も持っていない。痛いなあ、なんて私が苦笑いを浮かべてる間にも体からは多量の血液が失われていた。私は溜め息を吐いてその場に座り込む。はぁ、と深く長く息を吐き出してみても体はちっとも楽にはならなかった。


「…これは、飛段さんと一緒にゲーム、できそうにないな…。」


ごめんなさい飛段さん、そう呟いて瞳を閉じる。そこで気が付いた、飛段さんとだけではない、と。デイダラさんとまた一緒に遊びに行けない、サソリさんとまた一緒に修行が出来ない、イタチさんとまた一緒にお団子を食べながらお話が出来ない、鬼鮫さんとまた一緒にお料理することが出来ない、角都さんとまた一緒にお菓子を買いに行けない、ゼツさんとまた一緒に日向ぼっこが出来ない、ペインさんとまた一緒に任務のお話が出来ない、小南さんとまた一緒にお茶が出来ない、私はもう、みんなと一緒に何かをすることが出来ない。そう考えると無性に悲しくて、だけどやっぱり涙は出なかった。それが何だか悔しい。悲しいのに私は泣けない。私の涙は当の昔に枯れていた。目を細めると国を焼き尽くさんと燃え盛る炎がちらつく。私はぼんやりとそのオレンジを瞳に映していた。


「…やばい、かも…」


体は溢れる程に血を流してもう限界だった。それを今まで支えていたのは国を落とさなくてはという任務への執着と耳に響く人々の断末魔。だが国を潰してその場からそれなりに距離を置いた今、私を支えるものはなくなり、また私自身も与えられた任務を、完璧ではないにしろ終えて集中力だとか全てが事切れていた。私は重たくなった目蓋をゆっくりと閉じようとする。巡るのは今までの楽しかった暁での時間の記憶。これを作ったのは私であって私ではないけれど。


「…心残りなんて、作る気…なかった、のに…。」


本当の私自身で彼らとの思い出を作れなかったことが酷く私の心にあって、後悔してて、だけどやっぱり泣けない私は私に嫉妬した。小さい私ならもっと素直に泣けたのかなって。それから私は自分自身を嘲笑うかのように口元を緩めて、視界から光を遮断するように目を閉じた。





あそびはもうおしまい

(最後に聞こえたのは彼らの私を呼ぶ声で)(ああなんてくだらない幻聴)

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