楽しい時間はあっというまに過ぎちゃうもので、1週間たった今日、木の葉を後にした。この1週間でいっぱいともだちもできたしおいしいものもいっぱい食べれたしいっぱいあそんだしすごくすごく楽しくてよかったんだけど、そういうときって必ず何か大切なことを忘れてたりするもので、 「…おっお財布が吹雪いてるー…」 木の葉であそびまくってたべまくってさらにおみやげも買いまくった私の手元にはあと少しのお金しかなくなってしまった。今日のご飯は大丈夫だろうけど宿屋に泊まるのは無理だろう。つまり帰るなら日が暮れないうちに帰らなきゃいけないんだけど絶対だんなとか怒ってるしこんな状態のお財布を持って帰れば角都にも怒られてしま、う…。 「きゅっ究極の選択だぁ…。」 帰って怒られるか野宿するか、2つに1つ。しかしどっちに転んでも私にいいことはない。むしろ悪いことしかない。 「…おなかすいた…。」 そういえばそろそろお昼の時間。でも今はこれ以上お財布の中身を減らさないよう、なるべく節約をする必要がある。ある、けど…。 「食欲には何事も勝つことはできないのでーす!」 そういうわけで近くの茶屋で一服。ただでさえ寒いと泣いていたお財布はさらに寒々しくなりなんかもう悲鳴をあげてるけど今は気にしない。今私が考えるべきことはいかに安く沢山のお茶請けを食べるかであって財布の中味ではない、というか考えたくない。 「あれ?あれって…」 茶屋の前に広がる一面の木の中、ずっと奥に、たぶん普通の人には見えないくらいここからは遠いから向こうも気付いてないだろうけど、木からにょきっと生えたりできるのはどう考えてもあの人しかいないわけで、つまりあれは、 「ゼツ?」 こんなところに、任務かな?私は食べた分のお金を置いてゆっくりとゼツの方へと歩いていく。こんなところにいるなんて、任務の標的は、 「木の葉ですかー?」 「first name?!」 「ゼツひさしぶりー!」 「ナンデコンナトコロニ…?」 なんでと聞かれて私は言葉につまる。だって、家出して木の葉で1週間あそんでました、なんていえないもん。だけどゼツは私が家出したことは知ってたみたいで、モウ戻ラナイカト思ッテタ、だって。そんなことできるわけないのにね、私は所有物なのに。 「マダ帰ラナイツモリカ?」 「怒られるのが怖いの?」 「…怒られるのは怖いけどだぶるで怒られるのは怖いなんてもんじゃないんだよ…。」 「…今度ハ何ヲシデカシタ?」 呆れたようなゼツに無言で現在進行形で嘆いているお財布を差し出す。それを見たゼツはすぐに納得して頷いた。角都のお金絡みの怖さは暁共通事項なのだ。 「何ニ使ッタ?」 「や、宿代と食事代…」 「ダケカ?」 「…と、あそびました…」 ゼツはわかっていたといわんばかりの溜め息を吐く。わかってたなら聞く必要ないのに。そんなことを考えながらゼツの次の言葉を待つ。ゼツが発したのは単純に、諦メロ、の3文字。たぶんそういうだろうなーとは思っていたけど、実際言われると辛いものがある。うんん、悪いのは私。わかってるんだけど、目先の恐怖を思うとどうしても気が滅入っちゃう。 「…ソンナニ落チ込ムナ、first name。」 「だ、だってー…」 「一緒ニ帰ッテヤル。ダカラ、」 「ほんとう!?」 ゼツの言葉にすぐ反応した私は頷くゼツに飛び付いた。やっぱりゼツはやさしいなって思う。ぎゅーっとゼツに抱きついてたら相変ワラズ表現ノ仕方ガ過剰ダナ、とかなんとか言われた。だってだって、うれしいことは体いっぱいで表現したいんだ! 「first name、帰ル前ニ任務ヲ終ワラセナケレバ…」 「悪いけど待っててもらえる?」 「うん待つ待つー!任務がんばってね!」 するとゼツはめきめきと地面に潜っていく。私は近くの木にもたれながらゼツの潜っていった場所を見つめ、とりあえずゼツを待ってる間に何個かの言い訳でも考えておこう、そう思って軽く目を伏せた。 失敗少女の悩み方 (first name待タセタ、ナ…寝テル…)(…どうやって連れて帰る?)(……) |