getgive | ナノ


中らずと雖も遠からず

正直、姿かたちだけを観点に入れれば“ぼ”が付く団体様の1人かと思った。

「おう」
「ど、どうも……」

長身、白髪、赤い目、そして目の下にある不可解な傷跡。
一般人が一目彼を見れば、一歩その場を下がるであろうその容姿にスコアは必死に考え出した。
他の事を全て押し殺すような勢いで、この状況をフルスロットルで考えた。

麗らかな天気の下、昼下がりと言う女の子が喜びそうな場所で、スコアの予想も須く10代の感性豊かな女の子。
しかし

「あんたがスコアだろ?マフラーで一発で分かるぜー」
「は、はぁ……」

男ははにかみながら隣に座る。向かいに座れば、という考えはスコアの口からは出せなかった。

兎に角相手に不快な思いをさせてはならない。何が起こるかわからない。
それだけを一心に暗唱し、適当に合図地を打つ。

「俺の名前知ってるのか?」
「い、いいえ。すみません」

190cmあまりの男と、予想の為に160cmくらいにしてきたスコア。そのあからさまな見劣りに思わず青い剣客は身を縮こませた。

「そか、鴛也っつーんだ。宜しくな」

別段呆れた様子も無く、鴛也は藍色の髪を大きな手で掻き混ぜる。その扱いに慣れていないスコアは更に恐縮するだけであった。

鴛也が怖いか、と聞かれれば多少のしこりは残るがNOと答えられる自信がスコアにあった。簡単なことだ。更に恐れ戦くべき人物が居るからである。

そう簡単に言ってしまえばそれまでだが、この男の素性を要らない限り下手に言葉を発することは出来ないであろう。
スコアはウェイターから渡された珈琲を嚥下する。そして事の重大さに気付くことになる。

「スコアー?」

鴛也は不思議そうにスコアを覗き込む。スコアは申し訳なくなってしまい目を合わそうにも合わせられない。

珈琲と一緒に出されたのは“愛らしい”と言う言葉が似合う甘味、パフェである。

予想に備えていたスコアは予め女子供が喜ぶようなものを注文し、自分だけ珈琲を頼んでおいた。

不味い。彼は背中に不愉快な寒気を感じる。

こんな男だか女だか分からない奴が珈琲を飲み、隣に座っている立派な大人がパフェを食べる。自分はなんと言うことをしてしまったのだ。
彼にこんな恥をかかせてしまうなんて、一体どう詫びを入れればよいのだろうか!

「えっ、鴛也さん!すみませんっ。いいい今すぐ他のモノを頼みますから!勿論代金はこちらで払わせていただきますから!申し訳ありません!」

周りの目など気にしない。スコアは鴛也へ平謝り。急いで店員を呼ぼうと手をすかさず上げようとした。その瞬間、鴛也がその手をがしりと掴みスコアの声を抑えることに成功した。

「ぎゃあっ」

どうしようごめんなさい!

「スコア!オメーもしかしてエスパーかよ!」
「……は?」

ぎゅっと硬く瞑った目を恐る恐る開くと、視界には妙に輝いた鴛也。
どんな表情をしても端正な顔立ちなので、見るに耐えないというほどでもないが、スコアにしてみれば一種の不気味さを感じてしまうものだった。

「あ、あの……」
「これ、俺が食べていいんだよな?俺の好きなモン知ってるなんてなぁ!」
「は、はぁ……」

急に饒舌さが増した鴛也を見て、ただ呆気に取られた間抜け顔でパフェと彼を見るスコア。
気のせいだろうか
(犬みたい……)

少々失礼なことを考えながらも、少し落ち着いた様子でスコアは冷めてしまった珈琲を飲み干す。

「おい、スコア」
「はい?」

浮かれた声音で呼ばれた名前。再び顔を鴛也の方へ寄越すと口の中に何かを突っ込まれた。
甘く冷たいアイスクリーム。正面にはスプーンを持って、最初の鋭い表情とは程遠い、笑顔の鴛也。
初対面時のギャップに気圧されながらも、ありがたく頂いておく。

「あ、ありがとう、ございます」

豆鉄砲を喰らった鳩のように目を丸くしながらも、礼を述べる剣客を見て、鴛也はまた嬉しそうににこりと笑った。

どうやら、この人はただの甘党であり、良い人らしい。
スコアはそう悟り、あんなに悶々と考えてたことが馬鹿らしい、と自分を自分でせせら笑った。

「なぁ、他のものも頼んで良いんだよなー!」
「えっ、あ、はい!」


*
あたらずといえどもとおからず。
兎に角大まか合ってるけど、的中していない、そんな2人だといいなと思って書いたんです。えぇ、書いた結果がこれですよ。
久々のコラボだったので、張り切って書かせていただきました。
なんだか、2人の特長を生かせなかったような消化不良さがぷんぷんするぜ!
愛縷様、素敵なお子様ありがとう御座いました。







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