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油で揚げて、はいお終い
「すぺいん、とはどんな国でござるか?」 「そやねー。温かくて、魚介類が美味しいトコって言うのかなー」 「良い所、でござる」 「せやろー。あ、油に気を付けて」
じゅっ、と小気味良い音が小さな台所に立った。油の中で小さく何度も何度も弾ける、その白く長いものを見て、灯幸はぼーっとしながら思った事を言う。
「しかし、このちゅろすというものは星の形をした金太郎飴みたいで可愛らしいでござる……」
はふう、と気の抜けた声を出しながら恍惚とした表情でそれらを見詰める彼を見て、東は予想通り、といった風にニコニコし始めた。
「きっと東殿のご先祖様たちは見た目にもこだわったのでござるな」 「やっぱりそない思うどすやろ?」 「はう?」 「いやな、この構造、結構合理的なんどすよ。星型にせんと、内側が急に膨れて油の中で大爆発を起こすの。 そやし、こうして表面積を広くすれば均等に温まるからこんな形になったんどすよ」 「爆発、油の中……」 「危険やろ?」
急にチュロスを見る目を変えた灯幸を見て、東は更に愉快そうに口角を持ち上げる。 そして何かを思いついたかのように口を少し開け、溜息を吐いた。 勿論それに気付いた火幸は、一歩静かに彼女に近付く。
「どうしたのでござるか?」 「あ、いや、なァ……」
いつもの癖で東は卑屈げに苦笑いを起こす。そのときは限って彼女は眉尻をちょこっとだけ垂らす。疲れたときか、あまり喜ばしくないことを思い出したとき、彼女はこういう表情をする。
「ラモールはん、居るでしょ?」 「あぁ、あの方……」
出だしの東に同調されたかのように灯幸も口調を落す。二人の脳裏には、艶やかな金髪と、宝石のような緑色の瞳、そして真っ白な肌が映し出される。 凄艶な容姿とは裏腹な性格。その美少女、少年に付き扱い注意。
「あの子が、うちに料理おせてって言うたから、簡単なチュロス教えたのよ。 でも、ラモールはんったら、絞りを星型にせず絞っちゃって……」 「…………」
彼にも最悪な結末くらい容易に想像できる。寧ろ得意分野だ。そこらに油が飛び散る地獄絵図が浮かび上がった。
「はは、bongやおへんよ?bon!や」 「そ、それで?」
他人の不幸を喜ぶわけではないが、どうしてもあの破天荒過ぎる出来事だ。出来るだけ聞きたい。 東は諦めたように肩を揺らすも、笑顔は絶やさずに手振りで伝える。
「爆発したチュロス見てね、『わー!凄い凄い!スパニッシュマジック!!』やって」 「は、はぁ……」
きっとその時のモグラは目を一杯に開き、キラキラと輝かせていただろう。 ……普通にしていればとても愛らしいのだが。いや、しかしそこも彼、彼女の魅力だろう。火幸は無理矢理そう思いを埋め込ませる。
「もー、こっちから言わせて貰えば、ラモールはんの行動が魔法なんやけどもね」 「魔法、でござるか。でも、ラモール殿の魔法はきっと、人を笑顔に出来るのでござろう」 「せやけどなー。魔法に爆発は付き物やけどねー」
そこでやっとけらけらとさも可笑しそうに笑う東。そして手際良く油の中で狐色に染まったそれを菜箸で摘み上げ、皿の上に盛り付ける。 しかし、東は灯幸の言葉の奥底まで見抜けなかったようだ。ただただ暢気に出鱈目な鼻唄を口ずさむだけ。
「うし、でけたで!!」
*
いや、ただ単にらもにすぱにっしゅまじっくっていってほしかっただけなんだからね!← ネタ纏まんなくてgdgd。お菓子を作る、がリクエストなのに、なのに……! 書き直したいorz 遅くなったけど、天地ちゃん誕生日おめでとう^^
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