最高のキスを君に




戦場に一陣の風が舞う。
戦仕事を終えた清正は、風の中にかすかにまじった血の匂いを嗅ぎ
目を細めた。
自身の背後には確か三成が陣を構えていたはずだ。
正面からの敵は清正が一掃したが、背後から血の匂いが香ってくるとは
情けないことだが背後をとられたということだ。
(三成大丈夫か?)

何かしらの伝令が清正の陣に来ていないということは
三成の陣に異常はないと受け取るべきなのだが
石田三成という男は頑固なのだ。
前線で交戦している清正に、口が裂けても助けてくれなどと言えないだろう。
自身の陣が壊滅しようとも自身の意地を貫き通す精神は
見ようによっては美しいものだが、秀吉という主君に仕えている以上は
邪魔なものでしかなかった。
(あいつもそこまで馬鹿じゃない、危険だと察すれば
意地を捨て逃げるし、助けも求める・・・だが・・・)
敵将を一戦を交え体も神経も疲れ果てているが
清正は「もし」の疑念が拭えなかった。
しばらく空を見上げ思案に耽った後、ふう、と一つため息をつき
陣を味方に預けると、馬を走らせ三成の元へと向った。



大一大万大吉の旗印がはっきりと目視できる距離まで馬を走らせた清正は
落ち着き払っている、軍勢の姿を見るとほっと胸を撫で下ろした。
自分のとりこし苦労であったか、と自陣へ帰ろうとしたが
陣中にいる三成の姿が目に入った。
三成の傍には家臣島左近がぴったりと寄り添うように警護をしている。
いつもの見慣れた光景である・・・が、少しだけ様子が違うように伺えた。
左近の腕には真新しい包帯が巻かれ、三成はその怪我を気にしつつ左近を守るように
一歩前に立っている。


「どうしてお前がここにいるのだ」と邪険にされるのが目に見えたが
清正は自然と三成の陣中に馬を向けていた。

「三成」
「清正・・・どうした?お前は前線で戦っていたはずでは・・・?」
「いや、あらかた敵は片付いた。もう暫くで陣払いする、それよりこっちは?」

三成が「ああ」と気のない返事をしたあと、一呼吸置き静かに口を開いた。

「少数部隊の襲撃があったが、問題はない」
「左近のおかげでね」

弱弱しい三成の口調に被せるように左近が明るく言葉を発した。
察するに、左近が三成を庇って怪我を負ったのだろう。
普段人の心など省みない三成だが、自身のせいで左近が負傷したことで
主君としてのふがいなさを感じたのか、珍しくしおらしくなっている。
(面白くない)
と清正は顔をゆがめた。
左近が三成を守ったことが、ではない。
左近を案じてしおらしくなる三成に対してである。
これが、三成の他の家臣だったらどうであろうか。
気に病むであろうが、こんなに目に見えて落ち込みはしない。
それだけ三成にとって左近は大事な男だという事実が
清正を不快にさせる。

「殿、そんなに落ち込まないでくださいよ左近はこうして無事なんですから」
「落ち込んでなど・・・いやすまん、左近には十分な褒美をやらねばな」
「ああ、そりゃ嬉しいですね」

左近はニコリと笑顔を浮かべると清正を見やった。

「清正さん、あなたも疲れているでしょ?今から自陣に戻るとなると夜も更けますよ
ここからすぐ先に宿舎があるんで良かったら泊まっていったらどうです。」

嫉妬に苛まれ今すぐにでも、その場を離れたかった清正だが
左近が言うとおりいつの間にか空が夕焼け色に染まりつつあった。
馬を走らせたところで自陣へつくのも真夜中になるだろう。
清正にすれば夜中につこうが、大した問題でもなかったのだが
このまま左近と三成を二人にしておくのも面白くなく
「ああ、そうする」と気の良い返事を返し
二人と共に宿舎へ足を向けた。




宿舎は質素なものだった。
秀吉とは違い三成は衣食住にこだわりがないためか
最低限のものが揃っている宿舎で十分なのだろう。

清正は湯をもらったあと、あてがわれた部屋で煙管をふかしていた。
普段煙管は吸わないが、戦の後は無性にふかしたくなる。
よく戦のあとは酒を飲み女を抱きたくなるというが
清正は戦のあと逆に一人で篭り、煙管をふかしながら悶々と思案に耽る
ことのほうが多かった。
だが今回はそれも上手くいかず、短く切られた前髪をぐしゃぐしゃと
かきむしると大の字に横になった。

三成は左近を大事にしている。
それは左近の卓越した軍略に対して・・・だけではない。
左近の軍略、そして左近自身に惚れこんでいる。
清正は三成が秀吉に恩を感じ熱い視線を向けているのを何度も見たことがあった。
三成はそれに似た視線を左近に送るが、その視線には秀吉のものとは
違う”何か”が感じ取れるのだ。
(俺の思い違いでなければ、あれは愛しい者を見る目だ
秀吉様へ向ける敬愛ではなく、そうもっと生々しい・・・)
勘が良いというのも、心労が重なるばかりで良いものではない。

「考えても仕方ない、な」

くしゅん。
と大きめのくしゃみをしたあと、冷え切った自分の体に気づき
もうそろそろ寝ようと、厠へと腰をあげた。





用を足し、部屋へ戻る途中
暗闇に包まれている廊下を柔らかい光が一筋形どっているのに気づいた。
障子が少しだけ開いているその部屋からは、小さく唸るような声が聞き取れた。
清正はすぐにその声が情事のものだと気づくと、しまったと顔を強張らせた。
色恋沙汰に縁がないわけではない、が他人の情事は照れくさいものだ。
引き返し別の道を通って帰るか、と踵を返した
その時低い声が愛おしそうに「殿」と囁いたのを清正の耳は捕らえてしまった。

(左近・・・?)

清正の心臓がドクン、と大きくはねあがった。
それは間違いなく左近の声で、左近が呼んだ名は主君である
三成のことではないか。
清正の脳裏に一瞬よぎった疑心、もしそれが真であるなら自分はどうすれば良い
のだろう?と己に問いかけた。
情けないことだが嫉妬に狂うあまり、三成を殺してしまうかもしれない。
それだけは避けなくてはならない。

だが清正は無意識に障子を開き、行灯が弱弱しく照らす
その部屋で左近の懇親的な愛撫を受けている
三成の姿を目にしてしまった。

三成は突然のことに驚き、かろうじで腰にひっかかっていた
衣服で自らの体を隠すと、兄弟のように
育った清正に自分の情事を見られたことに対しての絶望に
青ざめた。

「きよ、まさ・・・」
「・・・」

左近と三成がそういう関係である、と
なんとなくは勘付いていたが、こうして前にしてみると
その衝撃は尋常なものではなく、今すぐにでも三成を殴ってやりたいとすら
思ったが拳が動かず、ただ荒々しく息をするだけで
清正は何を言うべきか、どうすべきかがぐるぐると頭の中で考えてはやめ
考えてはやめを繰り返していた。

「清正さん、こんな夜更けに何か用ですか?」

そんな中左近が落ち着き払った調子で清正に声をかけた。
一糸纏わぬ体に真新しい包帯がやけに目だって見える。

「今、殿から今日の褒美を頂いていたんですよ、用がないならお引取り頂けますか」
「さ、左近・・・やめてくれ・・・」

三成が青い顔をして、左近が清正を挑発するのを止めに入った。
いや三成は清正の好意に気づいていないため、身内である
清正に己の淫行を暴露しないでくれという懇願であった。

「お前達は、いつもこうなのか」

ようやくしぼり出せた言葉。
清正は、瞳孔の開いた瞳で三成、そして左近へと視線を写した。

「ええ、まぁ」
「そうか、とんだ主従関係もあったもんだな」
「羨ましいでしょう」
「は?」

普段の凛とした三成はどこへいったのか、口を噤み
二人のやり取りを静かに聞いている。

清正は左近の挑戦的な台詞に、今まで我慢していた
怒りがふつふつと湧き上がったが
清正と三成は恋仲でもなんでもないのだ、左近を殴ったところで
ただの一人よがりにすぎない、自分勝手な男に成り下がるのだけは
避けたかった。

「だってほら」

くく、と左近が喉をならし笑い声を漏らした。

「清正さんさっきから凄い勃起してるから」

恥ずかしさのあまり殴ることも忘れ
清正は力強く拳を握りしめながら、己の下半身のだらしのなさを呪った。

「ああそうだよ、羨ましいさ三成を犯す夢なんざ何度も見たからな」

もうどうにでもなってしまえ、と半ばやけくそに清正は言い放った。
当の本人である三成は、ぽかんと呆けているが
左近が面白そうに「ですってよ、殿どうします?」と聞かれて
ようやく頭が回転したのか、顔を真っ赤にしながら
「どうも何もあるか!」と口にした。
清正は、乱雑に服を脱ぐと三成の腕を強く引っ張り自分の胸に閉じ込めた。

「お前らの関係に口は出さん、だから今日は俺に抱かれろ」
「・・・は・・・?」
「良いんじゃないですか、たまにはこういうのも」

恋人が他の男に抱かれるというのに左近はあっけらかんとした表情で
答え、三成だけが未だ状況を上手く飲み込めずにいると
清正が噛み付くような口付けで三成の口をふさいだ。

「ん!?んっ」

そのまま三成を押し倒すと、柔らかな唇を何度も丹念に舐め
甘く噛み、舌を求め深く深く味わうと
チリッとした痛みを感じ名残惜しそうに唇を離した。

「あーあ、殿清正さんの唇噛んだでしょ」
「しかし、こいつがいきなり・・・」

夢中になって噛まれたという意識がなかったが
上唇からだらり血が流れ
清正はそれを舐めると鉄臭い血の味にぞくりとした。

「お前の唇も噛んでやる、血舐めさせろ」
「やめろっ!気色悪い」

清正が三成の唇に歯をたてようとしたところで
左近が三成の体を自分のほうに引き寄せ
優しく口を塞いだ。
清正より、経験豊富な左近の口付けに三成の瞳はたちまちに色香を帯び
白い頬が桃色に染まりゆくのが分かった。
小さく音をたてながら唇を離すと、首筋をつー・・・と一筋舐めた。
はぁ、と三成の唇から甘い吐息が漏れ
清正はその声を聞いただけで更に重量の帯びた自身を感じた。

「喧嘩するんじゃないんだから、ね」

と左近は呟くように清正に言い聞かせると
胡坐をかいた自分の膝に三成を下ろし
三成の夜着を大きく肌蹴させ、下穿きを強くひっぱると
質量を増した雄が空気に触れた。
三成は己の下半身が露出した恥ずかしさから、下穿きをずらしている
左近の手を退けようとするのだが、それは清正の手によって阻止された。

「離せ、この馬鹿」
「ふ、何だよさっきからやめろだ何だ言ってるわりにお前も
立派に感じてるのかよ」

清正が意地の悪い笑みを浮かべると、三成は「くそっ」と小さく言い捨てた。

「殿、清正さんに見られて興奮するなんて少し妬けますね」
「・・・左近も、余計なことをっ・・・言うな」

三成のなめらかな背中に左近の唇が落とされ
赤い印を花のように散りばめていく。
左近の吐息を背中で感じていると、下半身に異物が入り込んだ
感覚が三成を襲いはっと息を飲んだ。
腹部を押し上げる感覚よりかは軽いその質量にすぐ指だと理解した
自身に恥ずかしくなり、左近から顔を背けるように下を見ると
清正の大きな手が三成の雄にふれているのが目に入ってきた。
(どうしてこんなことになっているのだ・・・)
と流されるまま、愛撫を受け入れてしまう自分も
何だかんだと言いつつもスキモノなのだと思い知らされ
付きあがってくる快感に、身をよじらせた。

前と後ろから責められ、声を押し殺して耐える三成を見て
清正は早まる気持ちを押さえられず、自身を三成の雄にこすりつけると
そのまま一緒に上下に動かした。

「うっ、」

三成が我慢できずに漏らす吐息は清正をますます興奮させ
愛撫の速度は緩急をつけ、ねっとりとしつこく三成を責めた。
それと同時に、左近は三成の中に入れている指を一本増やし
三成の反応を楽しむようにある場所を何度も何度も刺激した。
(いつもなら、ここらで一回達すが清正さんがいるから我慢してるな)
と左近は自分の胸に寄りかかりながらも、強張っている三成の体を可愛らしく感じた。
左近は三成の体を支えている手でそっと薄い胸に触れると
こりこりと感触を楽しむように突起を弄んだ。

「くっ・・・そ、二人して、ず、るいぞ・・・」
「殿、楽にしてください」
「な、ならん・・・」

目じりに涙を浮かべながら、はぁ、と甘い吐息を漏らした三成は
幾重にも重なる快感の海に溺れそうになりながらも
自我を保つのに精一杯で、自身のそれにしつこいくらい絡み付いてくる
凶悪な清正のものを見やったあと、少し強く「さっさと出してしまえ」と
言い放った。

「ああ、そうだな・・・はぁ、そう、させてもらうか」

と清正が意味深に笑みを浮かべたかと思うと
清正は三成のものだけを離し
自身を丹念に愛撫すると三成の腰に精を吐き出した。

「あ・・・」
「三成は辛そうだな」

誰のせいだと、三成は奥歯をかみ締めた。
暖かく生臭い清正の精をかけららた三成の下半身には
まだ熱がくすぶっており、一人だけ置いていかれた寂しさに
思わず「触れてほしい」と口にだしそうになったが
それを察してか左近の指が強く三成の中をすりあげたのを合図に
達してしまった。
三成の精はちょうど清正の腹部にかかり、それを悪戯に
掬いあげた清正は、三成の下半身にかかった自分のものと
まぜると三成の口に含ませた。

「やめろ、苦い・・・ッ」

どうしてこいつは、こうも変な趣向があるのだろうと、三成が眉をひそめ
視線を下にやると清正の下半身は先ほどと変わらず熱を帯びていることに気づき
ぎょっとした。

「清正さんさすが、若いですね」

三成の下半身から指を抜き、膝に乗る三成の体を支え
足を組みなおした左近もその様子を見て驚いたのか
清正の若さを褒めたが「でも、今日の一番は俺が頂きますよ」と続けた。


三成と初めてまぐわう清正に一番を譲るのかと思いきや
そこは譲らないとばかりに主張をするこの男。
余裕の笑みの裏で、三成は自分に惚れているのだと
清正に釘を差すのはさすがというべきか
大人気ないというべきなのか、三成は左近の珍しい主張に
「そんなのどっちでもよい」と気のない言葉を投げかけたが
内心動揺していた。

「・・・」
「ッ・・・左近・・・」

返事に渋る清正を尻目に、左近は三成の蜜の入り口に自身をこすりつけると
じらすように何度も何度も入り口を刺激し、三成の耳元に息がかかるよう
顔を密着させると口を開いた。

「今日は武功の褒美を殿に頂く大事な夜だったんです」
「んっ・・・」
「それを俺の好意でまぜて差しあげてるんですよ」

清正はそれを言われるとぐうの音もでなかった。
押し黙った清正を、応ととった左近は三成の腰に手をあて
体を自分のほうにむけると、自分は体を横にして
三成をしたから見下ろした。

「殿、左近が欲しいなら自分で入れてみてください」
「・・・」

相変わらず左近の隆々とした雄は三成の蕾の入り口をこするように
行き来している。
三成は、左近のこういうところが親父臭いと思いながらも
左近の熱いものに貫かれる快感を知っている体はうずいて仕方がない。
清正に後ろから見られているという事実も手伝ってか
三成は情事に酔っている感覚に陥り、薄い唇をにやりと動かすと
自らの菊に押し当てられている赤黒いものに触れた。

「左近、今日はよく俺の身を守ってくれた」

三成の細い腰を支える左近の手は
いつの間にか汗でびっしょり濡れていた。

「褒美を、やろう・・・っ」

腰を少しずつ下ろし、三成は左近をゆっくり飲み込むと
自分の中が左近で満たされていくのを感じ
しびれるような快感に静かに耐えた。
左近は下からその様子を見守りながら、こんな可愛いお方を守れて
自分の縁を心底幸せに思った。

三成が男に犯されている。
清正にとってこれほど気が狂いそうな事実はなかった、が
不思議なことに己の大事なものが
他人によって汚される姿に興奮を覚え、左近が三成の中をじっとりと
出入りする様子を見て、自身を慰めずにはいられなかった。

三成のここ、という場所を知っている左近は
そこをじっくりと擦りあげたあと、ピタリと動くのをやめたと思うと
「殿も左近を気持ちよくさせてください」と自ら腰を振ることを催促する。
自尊心の高い三成だが、何度もじらされていくうちに
込み上がる快感を手放せなくなり、少しぎこちなく腰を動かし
清正に見られているということも頭から消えそうになった頃
清正が三成の顔に自身を擦りつけ、驚いた三成が口を開けた瞬時に
それを詰め込んだ。

「殿の口小さいんですから無理させないでくださいよ」
「そう言うなら、早く変われよ」

左近の意味深な言葉を頭から振り払うと
清正は一心不乱に三成の顔に腰を打ちつけた。
本来ならばこんな強姦のようなことはしたくなかったが
こうなってしまった以上、やりたいことは全てやってしまえと
やけくそになっていた。
三成は下から突きあがる快感に酔いながらも
清正のものを奉仕すると、絶頂を迎えた二人にほぼ同時に精を体にかけられ
口の端から垂れる精を腕で乱雑に拭うと自分の下で満足そうにしている
左近にちらりと視線を投げかけ紙を要求した。
清正は左近が紙をとりだすのを見て「飲めよ」とぽつりと言い放ったが
三成は清正のものを吐き出すと「馬鹿が、夢見すぎだ」と冷たく返した。

途端に自分を拒絶された気分になった清正は、三成の体を乱暴に
横に倒すと、ニヤリと笑みを浮かべた。

「どうだ、いつも馬鹿だと言っている男に犯される気分は」
「犬に噛まれるようなもの、だ」

ますます面白くない。
左近に対しては甘く、そしてその体を求めるのに
俺との情事は、なんてことのない性処理のひとつにすぎないというのか。
清正は左近のもので溢れた三成の中をぐりぐりとかき回すと
左近のものを全てかきだした。
三成は左近が傍で見ていることが不安でならない様子で
清正は追い討ちをかけるように口を開いた。

「すぐに俺でいっぱいにしてやるよ」

ぐっと、清正が三成を貫いた。
左近とは調子の違うモノに三成も「あっ」と声をもらし
両手で口を押さえた。
清正は嬉しそうに三成の両手を取り上げると
「もっとだ、もっと」と激しく腰を打ちつけた。

己を犯している男が心底嬉しそうに顔を歪ませている
姿をを見上げながら、三成は自分を包む若い汗の匂いに
興奮を覚えた。
三成が、揺さぶられながらも声をだすまいと
押し寄せる快楽の波がくるたび清正の唇に噛みつき
声を殺していると「聞かせろよ」と耳元で囁かれ三成の心臓は
きゅうと締め付けられるような感覚に襲われた。
(こいつは、ただ俺を犯して楽しんでるだけだ)
と言い聞かせたが、ふと清正が先ほど「ああそうだよ、羨ましいさ三成を犯す夢なんざ何度も見たからな」
などと言っていたことを思い出した。

「清ッ・・・正・・・」
「なんだ?」
「お前は、俺を抱く夢を何度も・・・見ていたのか・・・?」

清正は顔を真っ赤にさせた。
(今頃なに蒸し返してやがる)と恥ずかしく思ったが
こうなればヤケだと、「ああ、そうだ」と返事を返した。

「三成をずっと、ずっと抱きたくて夢に何度も見てたんだよ」
「それは・・・?」
「馬鹿!なんでお前そんなに鈍感なんだよ、それは・・・」

お前のことが好きだから――・・・

と清正が言いかけたとき
清正の体は強い力によって後ろへ倒れ、三成もまた清正にくっつく形で倒れこんだ。

「そろそろ、俺もまぜてくださいよ」

と左近が口元に笑みを浮かべながら
目元は真剣そのもので清正に訴えかけた。
その時初めて左近が清正の告白を阻止するために清正の体を引っ張ったのだと
頭が理解し、「この野郎」と悪態をついた。

そして清正を飲み込んでいる三成の蕾に半ば強引に指を入れると
「大丈夫でしょ」と呟き、いきり立った自身をぴたりとあてがった。

「ま、待て左近!」

すぐに非難の声をあげたのは三成で、左近が何をしようとしているのか
想像したのか青ざめながら顔を左近に向けた

「お前何を・・・と聞くのも恐ろしいのだが」
「大丈夫ですよ殿、最初ちょっと痛いだけです」
「・・・いや・・・大丈夫では、ない・・・」

三成が逃げ出そうとするのを清正ががっしりと腰を持ち阻止すると
左近が、ここぞとばかりにモノを埋め込み始めた。

「くっ・・・」

苦痛に顔をゆがめた三成は
涙を流しながら清正の胸に顔をあずけると
その迫り来る痛みに耐えた。
ゆっくりと時間をかけて左近が清正のいる三成の中に入ると

「ほら、殿きついけど入るでしょ」

と背中に唇をおとした。

「馬鹿、とんでもない・・・痛みだ・・・あとで・・・折檻だ」
「それは、楽しみにしてましょ」
「三成、ごめ、すっげぇ・・・気持ちいい」

左近によって圧迫された清正は、擦れる感触に
今までにない快感を感じ、ゆるゆると腰を動かし
三成はうめき声をあげながら二人が果てるのを、じっと耐え
清正の肩口に深い歯形を残した。







満足するほど堪能した夜であった。
あの夜の出来事は夢だったのだろうか、と清正はふと思い返すことがある。
だが自分の肩口には三成がつけた痣がまだくっきりと残っている。

肌寒い夜だ、とひとつくしゃみをする。

清正は自室で、就寝前の煙管を一服吸うと
三成の痴態を思い出し熱くなり、深いため息をついた。
あの夜から何日も経ったが、三成への思いもまた
深まるばかりだ。

もう暫くしたら戦がある。
また三成の陣を訪ねよう、
今度は左近が居ぬ間に愛していると言ってやろう
と清正は胸に決めた。

あの夜、
三成が疲れて眠ったあと、同じように煙管をふかした左近が眠った三成を
いとおしそうに眺めながら清正にこう言った。




「清正さん、あなたが今日殿を心配して馬を飛ばしてきたことぐらいお見通しなんですよ」





左近なりの牽制は清正の心に火をつけて
空振りをしたのだった。







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余裕の男左近と見せかけ
自分と三成のセクロスを見せ付ける
大人気ない男です。
3P初めて書いた・・・


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