『愛してるゲームをしよう』
「そうだ。
ねぇ空、愛してるゲームって知ってる?」
スザクと話していたら、いきなりそんな事を聞かれた。
「愛してる……ゲーム……?」
「クラスの女子達が最近やってるやつだよな」
離れた場所で本を読みながらルルーシュは言った。
「そうそう。さすがにルルーシュも知ってるよね。
空は知らないみたいだからルールを言うよ」
「うん」
「相手に愛してるって言い続けて、照れたほうが負けのゲームだよ。
多分そんなルールだった。そんな感じで女の子達がやってた気がする。
すごく楽しそうで、見てていいなぁって思ったんだ。
僕もやりたいんだけど、いいかな?」
「そこでどうして俺を見る。
勝手にやればいいだろう」
苦笑するルルーシュは視線をまた本に戻す。よほど面白い本みたいだ。
「ありがとうルルーシュ。
空はどう?」
「面白そう! やろうやろう」
「それじゃあ、どっちが先攻かじゃんけんで決めようか?」
「うん。勝ったほうが先攻で!」
「オッケー。さーいしょは」
「グー」
「「じゃんけん、ぽん」」
スザクはグー。あたしはパー。
負けたのにスザクはワクワクした笑みを浮かべた。
「空の勝ちだ。
それじゃあいつでもいいから言ってね。負けないよ」
「あたしだって負けないよ。
ねぇスザク」
「うん」
「愛してる」
「うん」
うっわ全然表情が変わらない。
次はどんな感じで言えば良いんだろう?
笑顔のままのスザクを手強く感じた。
「愛してるよ」
「うん」
全っ然笑顔が崩れない。
もっと心を込めて言わないとダメみたいだ。
「スザク、愛してる」
120%を意識して言えば、スザクは爽やかさ120%の笑みを返してきた。
「ありがとう、空」
強すぎて白旗を上げたくなった。
どうすれば勝てるのか。
「うーん……スザクって手強いね……。
……そうだ」
少女漫画にありがちな感じで言ってみようかな。
スザクにぐいっと顔を寄せ、こそこそと耳打ちする。
「スザク、愛してる」
いい感じに直撃したみたいで、スザクは口もとに手を当てた。
「……空、それはちょっとずるいよ……」
「あ! スザク照れてる!
やった!! あたしの勝ちだね!!」
「うん……空の勝ちだよ……」
スザクはごにょごにょと言った後、ごほんと咳き込み、深呼吸し、キリッとした顔でこっちを見た。
「それじゃあ次は僕が言うから」
「う、うん」
なんかすごい迫力がある。
どんな愛してるも受けて立ってやると身構えたら、あたしの肩にスザクの大きな手が乗った。
ぐいっと引き寄せられ、スザクの顔がすぐそばにきた。
「空、愛してる」
全然キャラの違う低音の声に耳と肩がゾワッとする。
しかも耳にフッと息を吹きかけられた。
「ひあああああっ!!!」
そっと離れたスザクはしたり顔でピースした。
「はい、僕の勝ち」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!
すっザクって負けず嫌いだねぇええええ!!」
ぞわぞわする耳を手でゴシゴシする。
スザクはすごいニコニコして超楽しそうだ。
「よし空、もう一回しようか」
「え、やだよ! スザクに勝てる気がしない!!」
「そうかな? 空のほうが強いと思うけど。僕はマネしただけだし。
次は空がやってよ。僕が照れたらきみの優勝だよ」
そのしたり顔は何だか腹が立って、負けるもんかとスザクを睨んだ。
「よし! もう一回やろう!!」
ルルーシュがいきなり席を立った。
「次は俺がやる。空は見ていろ」
「え!? なんでルルーシュが!?」
どうしてやる気になったか分からないけど、ルルーシュからゴゴゴゴゴ……という擬音が聞こえる気がした。
「いいよ。やろう、ルルーシュ。
今度は交互に言い合おう。そんなルールだった気がする」
と、笑顔で言ったスザクの目は据わっていた。
それから二人の愛してる合戦は凄まじくて、観戦者のあたしが鼻血を出すまで続いた。
終わり