『逆転!黒のキングと白の騎士』


床に手をつき、腕立て伏せ。
ひたいに汗を浮かべたルルーシュは、腕立て伏せを14回してからドシャッと床に崩れ落ちた。

「な、何だよこの身体は……!
ルルーシュ、キミって本当に体力ないね。ひどい……」

息切れをしながら嘆くように言ったのはルルーシュ。
だが、中身はスザクだった。
声も表情もルルーシュなのに、スザクが喋っているんだとすぐに分かってしまう。
不思議だなぁ、と空は感心した。

そして、スザクの姿をした中身ルルーシュは高速腕立て伏せをしながら悪どい笑みを浮かべる。

「フハハハハ!! この身体と俺の頭脳さえあれば無敵だ!!」

そして人間とは思えない動きでジャンプし、軽やかに着地した。
声も運動神経もスザクなのに、口調と表情でルルーシュが喋っているんだとすぐに分かる。
さすがルルーシュ、と空は呆れた。

朝、目が覚めたらお互いの身体が入れ替わっていたそうだ。原因は不明。

「これから先どうするルルーシュ?
僕は軍に所属してるからキミには行動しづらいかもしれないけど。
……そうだ、記憶喪失を装ってみたらどうかな?」
「ああ、そうだな。
そこらは上手くやっておく」

スザク(中身ルルーシュ)が微笑んだ。
違和感のない爽やかな表情。
だけど空は見抜いていた。
きっとルルーシュなら軍の情報を洗いざらい盗むだろうな、と。

「スザクはどうするんだ? 俺のフリは上手にできそうか?」
「多分大丈夫。
だけどナナリーが怖いなぁ。
めちゃくちゃ鋭いところがあるから……」

ルルーシュ(中身スザク)が何かに気づいたように、あ、と口を開いた。

「……そうだ。
僕は今ルルーシュなんだよね」
「うん、そう。
一人称と口調変えたらまんまルルーシュだよ」
「そっか。なら……」

ルルーシュ(中身スザク)は空の肩に腕を回して引き寄せ、空いてる手で頬に触れ、輪郭をそっとなぞった。
彼女は真っ赤になって硬直する。

「……キミにこんなことしても許されるんだね」
「スザァアアアアク!!
待て! どうしてそうなる!!」
「だってキミ達恋人同士じゃないか。
なら、愛しあうだろう?
それとも、ルルーシュは空に恋人らしいことをひとつもしないのかい?」

ここで真実を言えば男として敗北するような気がして、キリッとした顔で否定する。

「いいや。もちろん毎日している。
濃厚なキスから過剰で執拗なボディタッチまで」
「わぁあああああ!! なに言ってるのよ!
違うからねスザク、あたしはルルーシュとそんな恥ずかしいことしてないからね!」

空が真っ赤な顔で否定する。
あまりにも必死な様子にルルーシュ(中身スザク)はくすくす笑い、彼女からサッと離れた。

「分かってる。
それとごめんルルーシュ。空の前ではキミのフリはしないから」
「当たり前だ。
そもそも、入れ替わっているのを知ってる人間の前で演技する必要はない」
「うん。僕達だけの時は気が楽だね。
……あ。うわ、もうこんな時間だ。
ルルーシュ、軍に戻らないといけないから行ってきてほしい。
場所は前に話したから知ってるよね?
自分のことが分からないって言い張れば、僕の上司の人、必ず信じてくれるはずだから」
「ああ。わかった。
スザク、もしナナリーが少しでも感づいたら正直に話してくれ。
ナナリーには心配をかけさせたくない」
「うん、わかった。
いってらっしゃいルルーシュ。
こっちのことは僕に任せて」

と、言いながら自然な動作で空の手を握った。
すぐにスザク(中身ルルーシュ)が間に割って入る。
普通の人間では有り得ない速度だった。

「お前のそれはわざとか!?」
「はははっ、そんなまさか。
身体が勝手に動いちゃうんだよ」

嘘だな、とルルーシュはスザクを睨んだ。
結局、元に戻るまで空のそばにいた。
最強の騎士だなぁ、と彼女は思った。

                  終わり
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