レクイエム
帰ってくるって信じてた。私の好きなあの笑顔をまた必ず見せてくれるって信じていたのに。
どんなに喚いても、目の前の2つのお墓からは何も返ってこない。愛しい人と偉大なる父はもう2度と、私の元へは戻ってきてくれない。
もうすっかり腫れてしまった目を覆う。きっと私は今酷い顔をしているから。家族たちは気を遣ったのか、見ていられなかったのか、私を1人にしてくれた。あの戦争が憎い。2人を殺した奴が憎い。全ての引き金となった裏切り者が憎い。弱い私が、何よりも憎い。自分の中でどす黒い感情が渦巻いてしまう。
溢れ出しそうになる黒いモノをぐっと抑え込む。彼が好きだって言ってくれた私の声を、歌を、綺麗なままにしたいから。
「_____________」
震えないように。崩れないように。私の故郷に伝わる、魂を鎮める歌だ。私が愛した2人がどうか安らかに眠れますように。頬に涙が流れたけれど、私の声は震えなかった。
歌い終わると、堪えていたものが一気に溢れ出した。声は震え、言葉すら紡げなくなる。私はただ、幸せなあの日々を取り戻したかった。このままじゃダメだってわかっているのに悲しみは止まらない。
ああ、どうして。
Requiem 今はまだ無理だけど、いつか笑ってあなた達の元へ行けるように。
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