眠れる獅子と呼ばるるゆえん

春休みも明けて
ほのかにまだ春の匂いが鼻をくすぐる4/8。

始業式の長い校長の話のせいで倦怠な空気の3年6組。

あぁーーーーーーーーと間延びした自分より幾らか低い声に、不二は振り向く。
振り向くというよりは
隣で机に突っ伏している今年で3年連続同じクラスの菊丸の方にひどく緩慢な動作で首を巡らせた。


「……何突っ伏してんの」

「…いや、不二もでしょ」


同じように面倒臭そうに机でのびてることを指摘されて、不二は軽く声を低めた。

「僕は突っ伏してるわけではありません」

「じゃ何?」

「不二周助のポーズ」

「何だよ、それっ?」

「だからぁ、僕限定のポーズだよ。
英二はやれないんだよ。」

「おっと。マジか?」


倦怠な空気もいつの間にか晴れていて、3-6メンバーがみんな立って慌ただしく駈けているなかでは

机間の通路を挟んで、同じ体勢で向き合ってやり取りしているのが
どんなに下らない内容でも
はたから見れば相当目立つわけで。


案の定後頭部をクラスの学級委員長にはたかれた。


「いてっ」

「いたっ」

「…ちゃんと掃除しろよ、菊丸、不二。」

立ち上がりながら二人はぶーたれた顔をする。

「…別にサボってたわけじゃねーぞ。」

「そうだよ。机に突っ伏しながら、手から雑巾を離すという掃除をしてたよ。」

「サボってんじゃねーかっ!」

学級委員長は声を張り上げて、不二の頭を叩く。

そして呆れたように雑巾を投げ渡す。

「ともかく、ほれ。濡れ雑巾っ。ガラス拭け。」

投げ渡された雑巾を見、菊丸はそっとそれを右手に手を伸ばして拭きはじめた。


「って、拭くのはオレの眼鏡じゃねーよっっ!!」

「え、だって委員長がガラスって…」

「窓ガラスのことだーっ!」

委員長、再び激怒。

不二は微笑んだまま英二の肩にそっと手を置く。

「そうだよ。英二。彼は伊達眼鏡だから」

「お前もちがーーうっ!!!」

火に油。



さっき委員長に殴られた後がヒリヒリして菊丸はさらに倦怠な表情を造った。

それは隣の男もまた然り。

「不二子ちゃーん。ダルいから俺の雑巾洗ってきてー」

「………」

「……無視ですか?」

「…………」

「………不二ぃー」

「…不二くんはケンタッキーに入りました。」

「それをいうなら倦怠期だぞ。け・ん・た・い・き。」

「そうとも言う」

「………」

わざとか?素か?つかなんだよ、片仮名になってんじゃねーか。その前に倦怠期にはチキン売ってねーよ。
色々と突っ込みたいことがありすぎて結局なにも言えなかった菊丸は不二が真面目に雑巾を動かしてるのを見て自分も始めた。

雰囲気の切り替えは半端じゃないと菊丸は思う。
すでにいつの間にか沈黙がある。
でもそれは心地のよいもの。


菊丸は不二は本当にすごいと思う。
いつの間にか不二の雰囲気に包まれている不思議な感覚。

だから暖かさに誘われるように菊丸が笑顔を溢した。

「…もう3年目なんだなぁ。」

「そうだね」

「…不二、変わったよな」

呟くような菊丸の台詞に雑巾を止めた不二は開眼して彼を向いた。

穏やかに笑った菊丸の表情をみた不二は笑い返すでもなくそれを見つめ「そうかな」と返してまた掃除を再開した。

しかし菊丸にバレないように噛み殺せなかった笑みを溢す。
英二のお陰だよという言葉と一緒に。


しばらく窓ふきを続けていると不意に不二が雑巾をとめ、文句を垂れた。

「あ、クレンザー使わなくちゃ。」

「あー、めんどっ!」

同じく文句を垂れた菊丸はくるりと振り返って叫んだ。

「オーイ、眼鏡野郎!!クレンザー、パスっ!!」

「誰が眼鏡野郎だ、コラァ!!」

委員長また再び激怒。

「英二、違うよ。伊達眼鏡野郎でしょ?」

「だからお前も違えよ!!」

再び火に油。

しかし委員長が雑巾を投げようとしたときガラリとドアがひらかれた。

「コラァ!!学級委員長たるものがなにやってる」

担任の怒声が委員長の声から変わって響いた。


その後廊下に

「英二、不二、待てゴラァ!!!!」

委員長の声が響いたのは言うまでもない。



+--+--+--+--+--+--+--+

はい、下らないー
我のなかの猫かぶってない素の不二くんはこんな感じです。
ケンタッキーって…w

捏造委員長が登場しましたね。我ながらこの伊達眼鏡野郎を気に入ってしまったので彼には活躍してもらいます。


実際は伊達眼鏡ではありません。



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