この佳き日を君と言祝ぐ

 エイリアンハンターになってからというもの、宇宙を飛び回っていた神楽が万事屋に戻ってくるのは数ヶ月に一度で、一人きりになった銀時の暮らす家で過ごす時間もそれに伴って増えた。別に寂しそうだからというわけでもなく、若い娘のいる家でこんな関係を露わにするべきではなかろうという自制が解かれたのと、俺の仕事に余裕ができてきたのがその理由だった。近藤さんがいて、俺がいて、それで成り立っている組織だという自負と誇りをもって仕事をしてきたけれど、それが次の世代を育てなければならないという自覚に徐々に変化して、気づけば俺の仕事量も随分と減っていた。重要な事項の決裁が俺か近藤さんの手に委ねられることはいまでも続いていたけれど、たとえば警備の布陣を整えたり、ましてや日常の巡察の当番を決めたり、なんて仕事は俺の手から離れて、同時に非番の回数も増えた。休みなのに職場にいられたら部下が迷惑なんですぜ、なんていう総悟の言葉に乗って借りた借家よりも、万事屋に入り浸ることが多くなったのは、やはりそこが仮住まいではなかったからだろう。昔は意地を張り合ってばかりいた恋人とも肌が馴れ、ともに多くの時を過ごした今となっては、彼の棲処が居心地のよい場所になるのも当然だった。
 万事屋を訪ねるときは、たいていスーパーに寄って買い物をする。とはいえ、日常の必需品は平日に彼が買っていることが多いから、俺が買うのはもっぱら嗜好品だ。酒につまみに、甘いもの。食いすぎて身体を悪くしたら心配だろ、と何気なく言ってからというもの、彼の甘味の量は少し減って、同時に彼の家での俺のマヨネーズと煙草の量も減った。十四郎が買ってきてくれるのが一番うまい気がする、なんて言われると弱くって、量は多くないけれど少し高級な菓子をついついかごに入れる。真選組に届けられた進物の店を覚えておいて、わざわざ買いに寄ることさえあった。たまに、トイレットペーパーが切れそう、なんてメールが入ると荷物は両手にいっぱいになって、それを察知したようにスーパーと万事屋の間で奴と出くわしたりする。重い方を手にとろうとする相手に、素直にずっしりと酒の入った袋を渡せるようになったのはいつからだろう。
 つまらないことで意地を張り合うことはもちろんあるけれど、喧嘩ばかりでもなく、餓えたように身体を触れ合わせるわけでもなく、二人で別のことをしながらゆったりと時間を過ごす非番は心地の良いものだった。
 その日は多分、火曜だった。前夜にだらだら過ごしたせいで昼前に起き出した俺たちは、シャワーを浴びて昼食をとった後だったか。少し余らせていた書類に目を通している俺の向かいで、彼はジャンプを読んでいた。と、彼の携帯電話が鳴る。神楽と新八が独立した後にさすがに不便だからと購入されたそれはほとんど着信専用で、大抵はデフォルトの着信音が鳴ることが多いが、今日は神楽からの電話らしかった。
「もしもしー……あ。来週? 日曜? お前、帰ってくんの?」
 無造作にでた銀時の声が、わざわざ聴くでもなく耳に入る。うるさいか?と問うように、部屋を出ようかと身振りをした彼に、首を左右に振り、書類に視線を戻す。
「二時? 別にいいけど、わざわざ時間を指定してくるなんて珍しいな……え、えぇえ!?」
 大声に、驚いて顔を上げた。寝ころんだままだった彼ががばりと起きあがる。
「そ、それってお前……いやそんな、騒ぐほどのことだろ。え、まさか、え……」
 狼狽えた声はいまだかつてないほどのもので、何やらわめきたてている銀時をよそに、神楽はあっさり電話を切ってしまったらしかった。ぱたり、と携帯を机に放り出した彼は、頭をぐしゃぐしゃとかきむしったかと思うとまた携帯をとり、リダイヤルをしかけて思い直したようにやめる。頭を抱えて重いため息をつくのに、おそるおそる声をかけた。
「……どうしたんだ?」
 書類を置いた俺を、彼がぼさぼさの頭で見上げた。
「神楽……だよな?」
「土方くん……来週の日曜は空いてますか?」
 問いに答えずに返ってきた言葉は、珍しく丁寧語で戸惑う。そもそも二人きりのときに名字で呼ばれるのも久しぶりだった。とてつもなく下手にでるときにしか使われない口調に、よっぽどのことらしいと、脳内で手帳を繰る。
「……来週? 午後か」
「うん」
「大丈夫だと思うが」
「じゃあ、うちで一緒にいてください」
「……何で」
 神楽が帰ってくるんだったら、お前だけの方が喜ぶんじゃねぇの、と返すのに銀時が縋るような視線をこちらに向けた。まるで、遠い昔に告白されたときのようなそれに、不覚にもときめく。
「神楽が……」
 会わせたい奴がいるから、日曜の午後は家にいろって……
 消え入るような声に、ぽかんと口が開いた。煙草をくわえてなくてよかった、などと関係ないことが頭をよぎる。
「それって」
「まさか、だよな……?」
 口に出したくない、と主張するかのように俺を見つめる彼を、否定する言葉は持たなかった。
「まさか、なんじゃねぇの」
「ぇぇえ……やっぱり……?」
「お前、あいつの育ての親みたいなもんじゃねぇか」
 はぁあ、と彼の口からでるため息はまるでこの世の終わりのようで、本当に娘をもつ親のようだと少し微笑ましい気すらする。
「でも、それならやっぱり、俺がいない方がいいんじゃないか?」
「いや!! お願いだから、一緒にいてください」
 がしっと拝むように両手を掴まれた。
「神楽は俺たちのこと知ってるんだし、俺たちのことも理解できないような狭量なやつにあいつを幸せにできるわけねぇだろ!!」
「……だからって何も、こっちまでカミングアウトする必要ねぇだろ」
「俺を一人にする気なの?」
 あまりにも弱々しい台詞に少し呆れる。
「……わかったよ」
「ありがとう」
 掴んだ手を引き寄せて、押し抱くように額に当てられたりなんてしたら、絆されるよりほかなかった。腰を浮かして手をほどき、彼の頭をぽんぽんと撫でてやる。慣れ親しんだ柔らかな髪は夜中にかき回すときと違ってふわふわと心地いい。膝を机にかけるようにして背に手を回し、胸元に頭を引き寄せると、素直に抱きついてくる彼が愛しかった。

 俺に抱きついてある程度の心の安定を取り戻したらしい彼に珈琲をいれてやって、前日の残りのシュークリームを食わせて(あーん、までしてやったんだから、まさに食わせたというのにふさわしい)、家にいたらぐちぐち言いそうなので連れだして映画をみて、本当は夜には帰るつもりだったのに朝まで一緒に過ごして、屯所に朝帰りする。セックスはしなかったけれど、俺を抱きしめるんじゃなくて、抱き込まれている彼がどれだけ傷心なのかと考えながら、まるで癒しを求めてるみたいに胸元に埋められた頭が愛しくて、とんとんと叩いている間に眠りについていた。
 約束の日までに、銀時に会ったのは一日だけ、たまにはと巡察に出た街中で偶然すれ違った。よぉ、と手を挙げる彼が虚勢を張っているのは明らかで、思わず引き留めて、団子屋に誘う。みたらしと餡ころ餅を頼んで、二人並んで食べる。何の風の吹き回し?なんて笑ってみせるのもわざとらしくって、つき合い始めたころより昔の彼みたいだった。
「今日の夜は空いてるぞ」
 こっそり伝えると、驚いたようにこちらを見て、後ろ頭を掻く。そんな癖はずっと変わらない。
「……明日は仕事なんだろ?」
「まぁな」
 だが、大過ないと告げると、ほんのり顔を赤らめた。
「俺、そんなに凹んで見える?」
「そうでもないけど、俺が一緒にいたいだけだ」
「土方くん、俺のこと甘やかすの、うまくなったよね」
「お前が甘えるのうまくなっただけじゃないのか?」
 夜も甘やかしてやってもいいぞ、と吐息のような声で囁くと、よろしく頼むわ、と言い残して立ち上がった彼の耳の後ろは先ほどのなごりを残してほの紅く、愉快な気持ちになる。付き合いはじめて十年以上にもなるし、俺が誘うことだってそこまで珍しいことでもないだろうに、未だにああやって照れるのがおかしい。……まぁ、若い頃ならいざ知らず、久しぶりの逢瀬でもないのに俺が昼間っから乗り気なのは珍しいかもしれないが。お茶を飲み干して勘定を置き、席を立つ。さっさと仕事を終えて、今日は定時上がりにしてやらなければ、なんて思考も昔にはなかったものだ。

    
 問題の日曜日、昼過ぎぐらいに行けばいいだろ、と告げた俺に向かって、銀時は昼飯一緒に食おうぜ、と情けない声で言った。仕方なく訪ねる道行きで、茶菓子を買う。まさか神楽がそんなものを携えて現れるとも思いにくいし、間が持たなかったときの助けぐらいにはなるだろう。そんな気遣いをしている自分が少し滑稽だが、それぐらいには銀時のことも神楽のことも大切なのだから、仕方ない。万事屋は珍しくきれいに掃除されていて、ジャンプも押し入れにでも突っ込んだのか見あたらなかった。
「茶菓子買ってきてやったぞ」
「あ、あぁ……サンキュ」
 寝不足らしく目の下にくまを作っている彼に、紙袋を渡す。
「飯はどうするんだ?」
「やきそばでいいか……?」
 彼について台所に移動すると、すでに炒めるばかりになった材料が準備されていた。
「俺が作ってやろうか」
「いや……なんかやってる方が気晴らしになるから」
 茶でも煎れといて、と言いながらフライパンを温め始めるのに、それでこんなに部屋がきれいなのかと得心した。ならばと手を洗い、薬缶を火にかける。
 手早く作られた焼きそばはいつも通りの味で、狼狽えていても料理の腕は落ちないらしかった。片づけは俺がしてやって、ソースのにおいじゃあんまりだからと換気して、それでもまだ一時でどうしたもんかとソファにかける。銀時はといえば、さっきから立ったり座ったり、窓の外を見てみたりまた戻ってきたりと、落ち着かないことこのうえない。
「とりあえず座れよ」
 熊じゃねぇんだから、とソファの座面をぽんぽんと叩いて促してやるとよろよろと戻ってきた彼は、ぽすん、と隣に座った。膝に肘をついて頭を抱え込むようにする。
「……今日だって言ってたよな?」
「そうだな」
「二時?」
「そう言ってたぞ」
 腕の間から窺うようにこちらを見る彼に、いちいち答えてやる。
「会わせたい奴が……」
「いるんだろ」
 言いたくない、とでもいうように濁した語尾を拾い上げると、腕を解いて上体を起こす。恨みがましげな視線がこちらを向いた。
「実は俺の勘違いで、神楽が帰ってくるなんて電話はかかってきてない……とか」
 さすがにため息が出た。
「電話はかかってきてたぞ。俺が証人だ」
 しゃんとしろ、しゃんと、と腰を叩いて背筋を伸ばさせる。
「でも、うちの神楽に悪い虫なんて!!」
 伸びたはいいが、今度は天を見上げて叫ぶのに、そこまでかと可笑しくなる。
「お前が大事に育てたやつが選んだ相手なんだから、悪い虫とは限らないだろう?」
 ……それにしても、あいつももうそんな歳なんだな。
 俺の呟きに彼は細々と、まだ早いってと抗弁した。昔から飄々としていて、いまとなっては泰然という文字すら似合うようになった男を、こんなにも狼狽させることができるのはきっと神楽ぐらいだろう。もっとも、神楽の前ではきっと見栄を張るだろうから、こんな姿を見られるのは俺だけに違いない。そう思うと隣でげっそりしている彼の姿も愛しくて、口元が緩む。
「十四郎はずっと楽しそうにしてるよな」
「お前が狼狽えてるからな」
「面白がってるんだろ」
 拗ねる銀時の肩に身体をもたれ掛からせて、目を閉じる。瞼の裏にお転婆にはね回っていたころの神楽が浮かんだ。手探りで銀時の手を探して握り込む。
「考えてもみろよ。あんなに小さくって走り回ってた奴が、大人の女になって結婚の報告にまで来てくれるぐらい長い時間お前と一緒にいるんだな、と思うと嬉しくもなるさ」
 だろ?と続けると、きゅっと手を握り返された。指先に触れる手の甲はあの頃に比べて少しかさりとしているけれど、興奮や欲情だけじゃなくて安堵を伝えられるようになったその温度が愛しい。
 ようやく落ち着いた銀時と二人、何をするでもなく凭れあって座っているうちに、時計は二時の五分前を指した。薬缶を火にかけていつでもお茶を煎れられる準備をする。と、ただいまー、と引き戸が開く音がした。びくん、と銀時が固まる。
「迎えに出ろよ」
 言いかけた俺の言葉を遮るように、邪魔しますぜ、という声が聞こえ、無言になった。おそるおそる首だけをこちらにむけた銀時も、当然声の主が誰か気づいているらしい。
「……うちの虫が悪かったな」
 とにかく迎えに出てやれよ。再度促しながらも、俺も動揺が隠せない。居間に出るべきか否か迷いながら、急須に茶葉をいれる。
「銀ちゃんただいまアル!!」
 わん!と吠える定春と神楽が銀時に飛びついたらしい音に、廊下に倒れ込む音と叫び声が重なる。
「……ってお前、もう俺そんなに若くないんだからほどほどにしてくれよ」
 あまりの音に心配になるが、まさかめったなこともあるまいと我慢する。
「元気そうだな」
「元気ヨ。銀ちゃんも思ったより老けてないアルな!」
「お前……言うに事欠いてそれかよ」
「立つのに手ぇ貸しましょうか、旦那」
 じゃれあう声に混ざってまた、聞き馴れた声がした。
「あぁ……平気」
 沖田くんも、いらっしゃい、と言う銀時の声がわずかに強ばっているのがわかる。立ち上がる音の後に、三人と一匹分の足音が居間に入ってきた。
「とりあえず座れよ。茶ぁ煎れてくる」
 神楽と総悟に告げた彼が、台所に入ってくる。それを追うように総悟の声が響いた。
「土方さんもいるんでしょう?」
 ちょうどよかった。一緒にこっちきてください。
 顔を見合わせる俺たちを察知したように続けられる言葉に、入ったばかりのお茶と茶菓子を盆に載せて居間に戻る。
「十四郎も久しぶりネ」
「おお、元気そうだな」
 銀時を真似るように名前で俺のことを呼ぶ彼女と会うのは久しぶりで、素直に嬉しい。とはいえ、隣に座っている総悟に視線を流しにくいのも確かで。隣り合わせに座る神楽と総悟に向かい合うように、俺と銀時はかけた。総悟も非番のはずだが、隊服で来たのはやはりそういうことなんだろうな。湯呑みと茶菓子を全員に配る。しかし何故俺が妻ポジションで振る舞わなきゃならんのだ。
 しばらく嫌な沈黙が続いた。まさかここで、俺が何か言い出さなきゃならないのか。銀時をちらりと見ると、顔は完全に固まってるし、手元は少し震えている。いつも自信家なくせにこういうときはからっきしらしい。俺が動じてないのは、総悟が男だからだろうな、と考えながら軽く肘で小突く。
「あ、会わせたい奴って……沖田くんのことだったんだな」
 弾かれたように言い出した声もわずかに震えていた。
「そうアル。いまさら会わせるも何もないと思ったけど、総悟がちゃんとしないと駄目って」
 言いかけた神楽を遮るように総悟が腕を軽く上げた。神楽が黙るのを確認して、座ったまま軽く前に出る。膝の上に両手をついた。来るな、と思う。
「旦那。今日お邪魔させてもらったのは、神楽とのことです」
「あ、ああ」
「土方さんも聴いてください」
 改まった口調に思わず俺まで居住まいを正す。
「実は、こいつがエイリアンハンターになった後ぐらいから付き合わせてもらってます」
 神楽が隣で頷いた。
「それで、今度所帯を持とうと思ってます」
「しょ、所帯」
「ええ。つきましては旦那にきちんと報告しておくべきだと思いやして」
 神楽さんと結婚させてください、と頭を下げる総悟の横で、神楽は乗り出すように銀時を見つめる。
「あー、と。とりあえず顔上げてもらえるかな、沖田くん」
 ふざけることなく型どおりの結婚の挨拶をした沖田に、銀時の狼狽が治まったのがわかった。
「別に俺に許可を求める必要なんてないけど……えーと、神楽」
 お前も沖田くんと結婚したいんだよな。
「するアルよ」
「だよな。でもとりあえず、俺たちに最初に言いに来てくれたのは嬉しかったよ」
 おめでとう、と照れもせずに言い切った彼は、促すように俺をみた。残り二人の視線もこちらを向く。反射的に咳払いをする。
「総悟、神楽、おめでとう」
 お前らがこんなに大人になってたなんて、気づかなかったよ、と続けると、総悟はそっぽを向いた。何か毒づくか?と思ったが、耳元がほんのり紅くなっているところをみると照れているのか。
「俺ももうあんたらが付き合い始めた頃と同じぐらいの歳なんですぜ。いまさら大人も何もねぇでしょうに」
「……何でお前、俺たちが付き合い始めたのがいつだったのか知ってるんだよ」
「旦那はともかく土方さんはわかりやすいですからね」
 自分で言い出すまで黙ってやってた俺の侠気を誉めてほしいでさぁ。
 いつもの調子を取り戻し始めた総悟をよそに、銀時と神楽は茶菓子を食べ始めて、先ほどまでの堅苦しい雰囲気は台無しだ。ま、その方がこいつららしいか。
「近藤さんには報告したのか?」
「ここが終わったら行く予定にしてます」
「姉御と新八にも報告するアル」
「そうか」
 本当に一番に来たんだな、考えながら自分も湯呑みに手を伸ばす。渇いた喉が潤うのに、自分で思っていたよりも緊張していたことに気づいた。

 結局、買っておいた茶菓子を神楽がすべて食いつくしたところで総悟と神楽は帰っていった。泊まるんじゃないのか、と尋ねた銀時に向かって、おじゃま虫はしないアル、と返す神楽に二人赤面した。もっとも、引き留めようとした俺たちの方がおじゃま虫だったのかもしれないが。
「夕飯どうする?」
 どこか食いにいくか、と尋ねると、神楽が食べていくだろうと思っていたから材料がたくさんある、と返された。
「お父さんとしてはがっかりだな」
「誰が父親なもんかよ」
 笑う俺に不満げにしながらも、肩の荷が下りたような銀時が冷蔵庫から鍋の支度をするのを手伝う。神楽が総悟と付き合っていたのは少し意外だったが、総悟が銀時の眼鏡に叶っているというのは嬉しかった。
「あいつらが付き合ってたとはなぁ」
「神楽も総一郎くんも忙しいのにな」
 白菜を剥きながら呟く俺に、包丁をリズミカルに鳴らしながら返す銀時は、名前を間違えてみせるところまでいつも通りで。
「総悟があんなまともな挨拶する日が来るとは思わなかったよ」
「神楽が、大人しく沖田くんが喋り終わるのを待ってる日がくるとも思わなかった」
「近藤さん、驚くだろうなぁ」
「お妙は案外知ってそうだよな」
 新八は今日は、カップル二組に囲まれて夕飯か、と続けた銀時に笑いがこみ上げてきた。
「それに比べたら、俺たちは平和でよかったな」
「だな」
 隣で笑う銀時の目元には、まだうっすらとくまが浮いていて、飯を食ったら久しぶりに風呂にでも誘おうかと思案する。温めたタオルを目元にのせて労ってやって、髪の毛を洗ったりしてやりたい。柔らかな髪をさわるのは本当は好きだけれど情交の後の風呂ではそんな余裕もないことだし。今日はお疲れさん、と言って誘えばきっとお前は乗ってくるだろう?



twitterで書いた小ネタをふくらませてみました。
銀土の未来に幸あれ!


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