「ご飯できたよー」
「うひょー待ってました!」


ソファーから騒がしくミスタが向かってきた。久々に訪ねてみれば腹減った腹減ったしか言わないもんだから会話もままならぬうちにキッチンへ追いやられ昼飯を作る羽目になったわけだ。調子の良いミスタは着席と同時に「ありがたくいただきます」と滑稽な挨拶をしてパスタをがっつき始めた。


「んめえ!やっぱよぉー名前の作る飯が世界で一番最高だぜ」
「そりゃどうも」


唐突な一仕事もちゃらにできそうなぐらい満面な笑顔を受けながら、エプロンを外して椅子の背にかける。まぁ遠慮せず食えよと見当違いな促しに甘えてフォークを取ってサラダにありつこうとしたら、ミスタの腰元から「彼ら」がギャアギャアと喚き立てた。


「そうだ忘れてた!」


慌てて解放されたミスタのスタンドは目に見えてご立腹だった。


『なんだとミスタァァー』
『飯!飯だ!』
「久しぶり、ピストルズ」
『久しぶりー!』


あらかじめセックス・ピストルズのぶんも別の皿に取り分けてある。量は充分用意した…つもりだったけど、やはり取り合いが勃発していた。ミスタは自分の食事に夢中だ。やれやれ…


『テメェはあっちいきやがれー!』
『うわあああーん』
「ああまたそういう…」


これまで何度も目にしてきたお決まりの光景である。足蹴にされているNo.5を見兼ねて手招きした。


「こっちおいで、No.5」
『うううう…』
『マンモーニだなあいつ』
『マンモーニ!マンモーニ!』
「こら!」


心ない中傷を制すると、泣き止んだNo.5は私の横でちまちまアボカドを食べ始めた。騒がしい食卓。それも楽しいけど、たまには二人きりで過ごしてみたいなあと思うこともある。


「ああもうこんなにこぼして…ミスタからもなんとか言ってよ」
「なんか家族みてーだなー」
「……………」


家族…
言い出しておきながらミスタは、しばらくもごもごして私の視線から逃れるようにそっぽを向いた。なに赤くなってんの、ばかじゃないの。自分の発言には責任を持っていただきたい。フォークにパスタが上手く絡まない。ああもう!


『ミスタは甲斐性ねえぞー』
「そうかもねえ」
「…おい!」