短編、あるいはただの小間切れのようなもの | ナノ

トライ・アンド・テラー




用事を済ませて帰ると見慣れない男が見慣れない機械に繋がれて唸り声を上げていた。
何を言ってるのかわからないとは思うが俺も何が起こってるのかわからない。
隣では家政婦ロボットが何かで通信している。
眺めてみるとひとりぼっち惑星というのをしているらしい。
隣にはハート型の箱。今日はバレンタインデーだった。
モテたことのない俺はすっかりそんなこと忘れていたが。

「晴臣様、チョコレートにございます」
彼女はピクリと体を動かしてぎこちなくチョコレートを受け取った。
「これは一体」
「ご友人の梨沙様から借り受けた性奴隷育成マシーンforMでこまざいます」
「は?」
「正確には置く場所がないから晴臣様のところに置いておけ、ですね。梨沙様の発明品でございます」
「forMって?」
「メンズということになりますアイドルマスターsideMみたいなものです」
「うん、そうだとは思ったよ」

リケジョの知り合い、梨紗はこういった狂った機械をすぐ作る猛者だ。彼女は犯罪すれすれの行為を嬉々としてやる。こちらの迷惑も考えてほしい。
「で、お前さんは何を」
「ひとりぼっち惑星でこのマシーンの宣伝を」

平然という家政婦ロボットメグミンに俺は詰め寄った。
「悪魔の所業じゃねえか!」
「あくまでも梨紗様のためですから。それに晴臣様のためにもなります」
その言葉が飲み込めず、吐き出したくなった。いや、泣き出したい。こんな場面を見られたら俺が犯罪者だ。

「これから晴臣様にも入っていただくんです」
「嘘だろ?!なんであの女の性奴隷に俺が」
「梨紗様じゃありません。私の従順なペットになるんです。主従逆転、下克上!です」
「認めねー!絶対こんなマシーンみとめねえ!」
「愛ゆえですよ。私の機械じかけのハートに燃え上がるヒート!」
「うん、もうお前をバラすことにしたい。でもお前がいないと対等または部下の話し相手がいない」

「嘘ですよ!大丈夫です。私に素股機能を付けてくれるんです。この機械を置くお詫びに」
「そんな機能なくてもいいから!お前十分役に立ってるから!このチョコレートだってお前が作ってくれたんだろ」
「フォンダンショコラです。温めてお召し上がりください」
「ああ、温めて熱々のを食べてやるよ。恐怖だって克服してみせる。このマシーンの存在という」

「素股機能を付けていただいたら晴臣様の性処理ができますね」
「有り難いけど、こっ恥ずかしいな。それに少し怖い」
「怖がらないでください。人生、トライ・アンド・エラーですから」
「俺の体がエラーにされそうだけど」

機械の存在を忘れるように話し込んだ。ここまで話したのは久しぶりだ。
S女は悪魔だ。しかしそんなメグミンや梨紗に踏み躙られて喜ぶ自分がいる。悲しいくらい性癖に忠実に生きていきたい。
「キス、してください」
熱がこもり温かくなった唇にそっと触れる。何ていう背徳。
彼女が言う愛が本物かは分からない。彼女はアンドロイドだから。彼女が俺を求めてくれる限り、彼女を愛する。
それだけだ。壊れないように優しく彼女を抱きしめる。
人形を愛する、人でなしの恋。それに嵌ったのは梨紗も俺もだ。彼女にそっと溶けたいと思った。
機械がピーピーと鳴り、恍惚とした顔の男性が現れた。
その男性は「リサ……」とだけ口にしてる。
「梨紗梨紗梨紗梨紗梨紗梨紗」
その言葉はやがて積み重なり、恐怖となってこちらに襲いかかった。しかし、メグミンが首に空手チョップをすると喋らなくなった。
「これでいいでしょう」
「何が」
「この方は梨沙様の性奴隷です。そしてメグミンは晴臣様の恋人で、晴臣様は性奴隷です」
怖いよ。怖い。
「大丈夫です。テクには自信があります。素股を手に入れたら優しく淫らな関係を作りましょう」

やっぱりこの世界はトライ・アンド・テラーだ。
ハッピーエンドは用意されているか?



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