人間ってさ、どういう状態のときに「生きてる」っていうんだろう。なんて下らないことを考えた昼飯時、空は真っ青で綺麗で正直うんざりする。購買で買ったパンもコーヒー牛乳も食い散らかしたまま、屋上でひとり、ぼけっとしてた。友人たちは校庭でサッカーをしに行ったらしく、背にしたフェンスの下から溌剌とした声が響いている。いつもだったら交ざってるはずだけれど、俺は誘いを断ってたったひとりで飯を食べてた。そう、ひとりで。


「…、」


「生きてる」ということの定義を考える。心臓が全身に向けて脈打ち、肺を動かして呼吸をし酸素を吸って吐くということが「生きてる」ということなのか。いやそうだとしても、俺はそうじゃないと全力で否定したい。そんな身体機能を示すのならば、人間って俺が思うよりも遥かに下らない生き物ってことになる。生憎と俺は人間が好きで、俺自身も人間でありたいと思っているから、その定義だけには首を縦に振れない。


「…あ、」


いつの間にか午後の授業の開始を知らせるベルが鳴って。屋上に残ったのは俺一人になってしまった。そう、ひとり。ガランとした屋上のコンクリートに、影はひとつ。その他には何もない。


「…やべ、氷室の数学だった」


声に出してぼやいてみるのに、俺の体は動かない。いきたくねーやるきでねー。後で絶対に怖い目にあうことくらい馬鹿じゃないから理解しているが、今は動く気になれない。遠くから聞こえる雑音を受け止めながら、俺はただ空を眺めていた。もしアンタがいたら、きっと「もう」とぼやきながら教室なり部室なりへと連れていってくれるだろうに。だけどそんなアンタはいない。


「…はは」


乾いた笑いが溢れて、ひきつる表情筋が痛い、ついでに心臓も痛い気がしてきたし肺も苦しくなってきた上に涙腺が熱い。誰もいないんだから泣いてもいいのかもしれないけれど、おかしな話で涙は一滴も出てこない。きっと俺は壊れたのかもしれない、ガガーピーガシャン故障中につき使用不可。こんな俺は、多分あの時彼女と一緒にいなくなっていればよかったんだ。


「…みなこちゃん」


呼んでもこないことくらい知っている。だけど呼ばずにはいられないんだ。冒頭で言っていた通り、ただ呼吸して鼓動してるだけじゃ生きてるとはいえない。ということは、もう俺は、死んでしまっているのだろう。胸を焦がすような彼女の笑顔も、今はないのだから。


「さよなら、みなこちゃんと俺」


しばらくしてそんな死人の俺を見つけた氷室に教室まで引きずられたのは言うまでもない。



いきをするのは億劫で退屈
(だから僕らは恋し愛したんだろう)
title by カカリア


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