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お題*ジェクトさんとばばばばっちゅ

「俺にもおめぇくらいのガキがいてよ。」
「男?女?」
「ちっともかわいくねぇ、男だ。」

夜。月を肴に酒を飲もうなどと『かぜなさけ(風情じゃないのか?)』のあることを言い出したのはラグナだった。最も言い出した張本人は酔いつぶれて、一緒に飲んでいたバッツの隣で転がっている。たまに聞こえる『ちゅーちゅーされちゃう』だの『隊長!』だのという寝言も気にならなくなってきた頃、俺は唐突に思い出した息子の事を口にした。

「ジェクトの子供かあ、あんま想像つかないな」
「泣き虫でよわっちい馬鹿なガキだよ。口ばっかり達者でびーびーうるせぇんだ」
「でも可愛いんだろ?」
「どうだか」

たしかアイツは一七だったか。目の前でほんのりと頬を赤くするバッツの顔を見ながら息子の顔を思い浮かべる。若い頃の俺様にそっくりな、アイツ。痛んだ金髪以外うり二つだと、いつだったか旧友に言われた気がする。
息子と同じくらいのコイツに何を言ってるんだろう。そう思ったのは口に出した後の話で、少し霞みがかった思考回路はそれを無かったことにした。酒は飲んでも飲まれるなというが、これくらいはいいだろう。

「反抗期かなんだかしらねーけど、一々突っかかってきてうぜぇのなんの」

俺にしてみれば勝手に言ってろ、と思う次第だが、その必死になって噛みついてくる様を見ていると、どうにもこうにももっときーきー言わせてやりたい欲求と繋がってしまう。

「反抗してくるってことは、アンタが越えなきゃいけない壁で、負けられないライバルだって思ってる証拠だよ。男ってそういうものだろ?コイツに勝ちたいって思うのは、相手を凄いヤツだって認めてる証拠。そして、息子もジェクトに、コイツは出来るヤツ!って、認めてもらいたいんだよ。」
「そうかぁ?」

分かっている。口では面倒なヤツだと言ってはいるが、この俺、ジェクト様は、アイツを。ティーダを。案外気に入っているのだ。それを誰かに言うつもりはない。でもそれが俺の本心。誰がどう思おうと俺はそうあるべきだと思うのだ。今更父親ぶるつもりはない。そんな資格は、俺にはないのだ。
(でも。)
アイツと、年の近いコイツに、そう言われると。
(泣き虫だって笑ってやりたいのも、もっと強くなってほしいのも。)
(俺様が、お前の父親で、お前が、俺様の息子だからってことで、いいんだよな?)



「親父と息子って、きっと、そういうもの、だよ。」

爆ぜる火の粉を見ながら、バッツは器を傾ける。
少しだけ微笑むその顔がなんだか凄く優しくて、少し、救われた気がした。


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111105

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