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静まり返った城内、ぼんやりとした薄明かりが燈された室内。
軋むベッドの音がやけに大きく聞こえた気がした。

「…久しぶりだ。」

「何が。」

「こうして君と触れ合うのが。」

白いシーツに艶やかな黒髪が滑り、僕は組み敷いたユーリの頬を撫でる。

相変わらずの低体温。
僕の手の平より少し冷たい頬が心地よかった。



「そうだったか?」

「そうだったよ。」


ふいに視線を泳がせるユーリ。
至極どうでもよさそうに答えるのはいつものことで、僕は構わず頷いた。

そっけないように見えるくらいが当たり前。皮肉屋で自信家な僕の親友は、野良猫のように媚びることを知らない。
身も心も自由で、でも信頼を絶対に裏切らない、有言実行を絵に書いたような兄貴肌。
それが、僕の大好きなユーリなのだ。




明日、僕たちはザウデ不落宮に乗り込むと決めた。
僕は騎士団長代行として、騎士団を率いて、ユーリはエステリーゼ様と、仲間達と一緒に。

本当は、一緒に行きたい気持ちでいっぱいだった。
アレクセイは強敵だ。いくらユーリや仲間達がこれまでいくつもの強敵と戦い、打ち勝ってきたといえども、それとこれとは話が違う。ユーリの実力は百も承知だけれど、勝てるとも負けないと言い切ることもできないのが正直な僕の意見だ。もしかしたら…と考えると、じっとしていることすらできなくなってくる。


だからこそ、僕は。

いや、違う。…僕は。

前のように、ユーリの隣に居たいだけなのかもしれない。
アレクセイが強力だから、共に戦いたいのでもなく、仲間達とではなくただユーリと一緒にいたいだけ。
なにもかもを分かち合って、共に笑って共に泣いて。…気持ちすら共有して、二人でひとつに。かつて抱いたそんな幻想を、手放すことなんかできなくて。



頬を伝って輪郭をなぞる。
耳に触れると、少しくすぐったそうに顔をしかめるユーリが可愛くて、自然と笑みが零れた。



僕たちはいつも一緒だった。
それこそ、互いの考えが手にとるように分かってしまうようになるくらい、一緒で。
だからこそ、喧嘩もたくさんしたし、それだけの数仲直りもしてきた。その度に僕らはまた、ひとつの思い出を共有して。


ひとつ。
だった。


「…ん。」

「ユーリ。」




その一方で、言いたくても言えない言葉があって、言わなくてもいいような言葉もあって、結局僕らはふたりでふたつなんじゃないかって、一人で、一人で。

僕だけが、君を想っているだけなんじゃないか。
君は僕がどれだけ君を想っているかなんて、興味すらないんじゃないかって。そんな不安がいつからか僕の心を押し潰そうとする。


どうしてだろう。いつからだろう。ただ、ただ、寂しいよ。苦しいよ、ユーリ。



「キスしていいかい?」

問い掛けとも独り言とも取れない僕の言葉は、君に届いただろうか。
困ったように微笑んだ後の口づけは切ないほどに優しくて、僕は、少しだけ泣いた。


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090307

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