愛し。
R18、とかかれた暖簾をくぐって、仕切られた狭い空間へ進む。
その空間に、所狭しと並べられたDVDやら本やらは、当然のように卑猥な誘い文句と、女性の裸体がでかでかと描かれていて、俺の後の小さな影は、それを見るなり一瞬にして顔を紅潮させた。
「っ、じ、じゃあ俺っ外で待ってますから!」
礼儀正しくお辞儀をし、素早くこの空間から逃げようとする鉄火の手をつかむ。
「なーに言ってんだ?お前も一緒に選べよ。」
力任せに掴んだ手を引き、俺より一回り小さな肩を抱き寄せれば、コイツはびくっ、と体を跳ね上げて
「っ、嫌だっ、つったら?」
頬を赤く染めて狼狽露わに眉をひそめ、俺を見上げて、そう、言った。
哀願するその様が実に嗜虐心をそそられるというか何と言うか。そこそこ付き合いも長いはずなのに、まだ、俺がこういう人間だと分からないおバカさんはついつい虐めてやりたくなると言うか。
本人は全く意識していないあたり、こいつは天然のいじめられっこ体質なんだなぁと、つくづくそう思った。
まあ、そんなところが愛しくて仕方ないのだけれど。
「拒否権はなし。ほら、これなんてどーだ?…女子高生の輪姦モノ。お前の大好きなツインテールじゃねぇか?」
「そっ、それとこれとはっ…!」
「あー、そっか。お前にゃこっちの方がイイか?素人女集団、ああ、こっちのホモがいいな。この男優お前にそっくりだし。」
「っに、ニクスさんっ!!」
今にも泣き出しそうなくらい、レンズ越しに見える大きな瞳は潤み始めていて、それが、それが、無性に愛おしく思えて。
俺は、腕にしがみつく小さな背中をぽん、と、なだめるよう撫でてやった。
これ以上は駄目。
愛しいが故の意地悪も、限度があると理解している。それも、愛しいが故だ。
「…ま、ここにAV以上に喘ぐ奴がいるから、こんなん見る必要ねぇな?」
「っ…もお!だったらさっさと帰りましょうってば!」
困ったような、恥ずかしくて仕方ないような
丸くて大きな、赤い瞳が愛しくて
「…了解、じゃ、次いくか。」
本当は醜いほどに。
壊してしまいたいほどに愛していることを。
こいつは、知らない。
(こいつが俺から離れる時がくるなら、きっと、俺は。)
*****
(td!の展示物でした。)