夢と現どちらかえらぶなら。
*埋火の続き。
鉄火が大変トチ狂ってます。
絶賛閲覧注意。
「っ、き、やぁあぁあァア!!エリ、えりぃ!!エリ、カあ、ぁ、や、だ、なん、いゃあア、やめてぇえ、 。」
小煩い女だ、と、見下ろす。
あーあ、汚い顔。涙がこぼれて化粧がぐちゃぐちゃじゃねーか。
足元でびくびくと痙攣を繰り返す女をそのままに、手をのばす。
掴むのは、煩い女の、長い髪。
「ひ、いぁ、や、た、すけ、いやぁあ、あ、」
汚い顔を何度も横に振る。
床にへたりこんだまま俺を見上げる女の髪型は、俺の大好きなツインテールだった。
ああ、いいなあやっぱり。このバランスがさあ。
でも、煩い女はやっぱり煩いので。
髪を掴んだまま、顔面を蹴ってやった。
鈍い音、
煩い女。ああ、面倒、な。
右腕を振り下ろす。
手首まで真っ赤な右手の、握る、包丁が。
「何、してんねんッ!!」
「ッ…救急車!!●●くん、救急車呼んで、早く!!」
刃の先は、床に。
勢いよく飛び掛かってきた人に、これまた勢いよく蹴られたので、俺はぐらり、と、倒れた。
地味に痛い。なんなんだよ、もう。
「…なんなんですか、やだな、もう。」
「何なんはお前や!一体何のつもりっ…」
うるさい。
うるさい口を塞ごうとして、ん、ちがうか、もっと話せるようにしてあげようと?ん、あれ?あれ、まあ、うん。
「っ危な…」
「×××!!警察!!」
「っ…■■■ぁ、■■■!!」
うるさいのが、沢山いる。
とりあえず、黙らせようか。
振り下ろす、と、、あ。
「…△△。もう、やめろ。」
あ、ああ、あ!
名前、だ、名前を!呼んでくれた、のは!
「○○○さん、遅かったじゃねーですか!待ってたんですよ俺、ね、ちょうど今寺空いてますし一緒にどうですか、ああ、一人のほうがやりやすいってんなら後ろで見てますけど、どっちかっていうなら俺はとなりでやらせてもらったほうが嬉しいかなって。へへ、昨日、ですね、初めてキャンディクリアしたんですよ、イージー無しでですよ!すげぇでしょ!後で見てくだせぇよ、クリアマークついてますから、ねっ、○○○さん!」
頭一つ分背の高い○○○さんに駆け寄ると、○○○さんは俺の頭を撫でてくれた。それが嬉しくて嬉しくて堪らなくて、にっこり笑ったら、今度はぎゅうっと抱きしめてくれた!
嬉しくて嬉しくて仕方なくて、ぎゅうっとされて嬉しくて暖かくて気持ち良くて心地よくてなんだろう眠くなってきて腹が熱いような気がしてきてぼーっとしてきて身体がだるくなってきてなんだかなんなんだろうか頭が頭頭眠いっつーか朦朧っつーかあれあれなんだろうなまあいいか○○○さんがだきしめてくれて、
「少し休め。…おやすみ。」
○○○さんのこえがきこえる。
○○○さんがそういうならとおもっておれはめをとじた
*****
比較的奥まった所に配置されたスロットコーナーにまで響いた悲鳴はセリカのものだったと知ったのは、音ゲーコーナーに駆け付けてしばらく経ってからのことだ。
何があったのかなんてわからなかったし、何があったと聞いても誰も答えてくれなかったからだ。
そこにあったのは異質な現実。紛れも無い事実にして、受け入れようもない真実。
赤くそまった床と、倒れるエリカさん。そのエリカさんを抱きしめながらしきりに彼女の名前を叫ぶ兄貴と、怯えているのか、頭を掻きむしるセリカ。半ば発狂しているようなセリカを抱きしめて、必死に落ち着かせようとするナイアさんと、救急車、と叫ぶユーズ。呆然と立ち尽くすケイナは、ただひたすらに床をうめつくす赤を見つめていた。
そして、そんな騒然とした空間で。
赤くそまった、床の中心で。
騒然とするその場所なのに。まるで空間をそのまま切り取ったかのような静けさを。静寂を、沈黙を続ける影があった。
「…ニクス…これは…?」
たしかにそこは中心だったはずなのに。
真っ赤な、鉄の臭いのする、液体を滴らせる身体が、うっ、きもち、悪く、なって、
安らぎさえ見てとれる、穏やかな表情で眼を閉じる鉄火と、もたれるように、身体を預けてくる鉄火を抱きしめるニクス。
鉄火の腹に埋まるのはニクスの右手。引き抜かれたのは真っ赤に染まる包丁。
崩れ落ちるように、二人はその場に腰を下ろした。
*****
めがさめたら そこは まっしろいへや でした
なにもないへやのなかで いいこにしていたら むかえにきて もらえるらしいので
いいこにしていようと おもいます
はやくこないかなあ○○○さん
またぎゅうって してもらいたいです
まどのそとは たくさんとげのついた せんで いっぱいだけど
○○○さんがきてくれるので へいきです
きょうもたくさん あそんでもらいました
あしたもたくさん あそんでもらいたいです
*****
091002 埋火