case number:02
ニクス:ホスト
デュエル:客
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「まぁたテメェかよ」
「客に対してなんだその口調は。」
長い脚を投げ出して、思い切り質のいいソファーで寛ぐ今夜のオキャクサマ、は、最高に最悪な野郎だった。
「あーもうやる気失せる…お前早く帰れよ?」
「嫌だ。今日は離さねぇってオーナーに言っといた。」
「…サイアク。」
今日の指名数勝負は確実に負けだな、とため息混じりにぼやき、肩をおとしつつも職業柄、だろうか。
煙草をくわえた仕草に気づけば、どんなにムカつくやつであっても自然とライターを握る手が出てしまう。
かち、と気持ちのいい音とともに火が点れば、デュエルの野郎は満足げに笑い、紫煙を吐き出した。
「わかってんじゃねぇか」
「クセみたいなもんだっつーの。」
「ふうん、クセ、ねぇ?」
意味ありげに繰り返す口元はこれまた意味ありげに歪んでいて。
昔の、そう、昔のことを思い出して、俺は視線を逸らした。
ユーズに拾われて、ここで働くようになってからもう二年が経つ。
二年もあれば、人は変わる。
あのろくでなしの極みだった俺が、一応日本の義務にしたがって勤労してるし、納税だってしてる。
なんていうか、劇的だ。
二年。
二年か。
「にしても。ホストんなるって聞いた時はお前みてェな奴につとまんのかと思ったが、ちゃんとホストしてんじゃねーか。」
「ッは。俺を誰だと思ってんだっつーの。」
機嫌よさ気なデュエルが続ける。
「これもオーナーユーズのおかげ、ってか?」
つけてやったばかりの煙草を灰皿に捩り伏せると、のばされた指先に顎を掬われた。
流れるような動きで、慣れた手つきで、猫をあやすように喉を撫でられて、唇を、重ねられた。
「ユーズ。俺の愛しのハニーを奪った憎い男だな。」
「ッは。愛しのハニー?寝ぼけてんのか?」
「いーや?」
腰に腕を回され、抱き寄せられる。
こいつがこういったスキンシップを取りたがるのはいつものこと。
まあ、ホモだから、仕方ねぇなんて思いつつ、髪、頬、瞼、と、落とされる口づけを甘んじてやった。
二年。
二年で。
俺は変わった。
ユーズに拾われて、ここに来て。
やっていることは似たようなもんだった。
自分自身を持て余して、ただ、時間を浪費するだけの行為。ぽっくりいくまで、息をしている間の、暇つぶしみたいな。
でも。
それで、よかった。
それが、よかった。
「お客さん、ここはそう言うお店じゃナインデスケド?」
「つれねえなぁ。」
舌打ちしたデュエルをそのままに、俺は天井を見上げた。
(今日は士朗に負けてやるか…)
ゆっくり流れていく時間に埋もれて。
錆び付いて、朽ち果てていくナイフのように。
こんな時間も悪くはない。
噛み潰した言葉をそのままに、俺は、そっと、抱き返した。
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0730 ニクスとデュエル。
昔の相方同士。
みたいな。
(crow69の拍手文でした。)