他のところの鏡音リンはこんなんじゃなかったのに。確か前に見た他の鏡音リンは強気な女の子だっと思う。鏡音レンの方は鏡音リンに引っ張られていた。

なのに、どうして俺の鏡音リンはこんなにおどおどしてるのか。目の前にいるリンと他の鏡音を比べてしまう。

「俺、リンになんかした?」
「えっ・・・えっ?」
「何でそんなに怯えるの」

いつも思っていた。俺が話し掛けたり、近付いたりするたび、リンの身体がビクッと変なふうに反応するのだ。
姉や兄たちには普通に話していることにいらいらする。男が苦手かと思えはカイトとは楽しそうに話すし。カイトはあまり男らしくはないが。
リンが座っていたソファーに同じようにして隣へ座った。やはりリンは肩を寄せてびくびくしている。


「俺が嫌いなら言ってよ。あんま近づくの止めるから」

本当は近くにいたいけれど、リンが嫌なら仕方ないと諦めてやる。自嘲的な笑みを漏らすとリンの顔は少し強張っていた。

「えっ、あの・・・」といつまでもおどおどしていた。きっとリンは俺を嫌いだと言えない。こいつは優しいやつだから。
いつまでもこうしててはらちが開かないと、諦め半分でソファーから立ち、部屋に行こうとすると後ろに引っ張られる感覚があり、振り向いて見ると服の裾をリンが掴んでいた。俯いていて顔は見えないが耳が赤い。

「あ、あった、し、レ・・・ン、くんのこと・・・すっ・・・きだよ」

ゆっくりとゆっくりとリンは言葉を紡いでいった。リンの頬に両手を当てて上を向かせた。リンの顔は熱を帯びていてとても赤かった。触れると思った通りリンの頬はとても熱い。瞳からは今にも涙が零れそうで。ついつい虐めたくなってくる。



「レン」
「え・・・?」
「レンくん、じゃなくてレンって呼んでよ」
「レ、レ・・・ン」
「うん。それでいい」


そうか、俺は勘違いしていたかもしれない。心の中に溜まっていたような塊がすっと消えた気がした。


「あのね、・・・あた、しのこと、嫌いに・・・ならないでね」
「ならないよ」

引き寄せられるように赤い唇にキスを落とすと、リンの目は大きく開いてついに涙が零れた。

「わわ、はわ」と変な声を出してさらに顔を真っ赤にして慌てるリンが可愛くて、もう1回キスをした。

「リンは、こういうの嫌?」
「・・・いやじゃ、ないよ!」


きっとリンは俺を嫌いだったんじゃない。ただ恥ずかしがってただけなのだと。
リンは確かに俺にびくついていたけれど、俺を拒絶したことはなかったのに。


指先まで真っ赤になってしまいそうなリンは、誰よりも可愛い。
少しずつ俺になれていけばいいと思う反面、緊張したままの今でも良いと思う。

可愛い姿を見れるのは俺だけの特権だから。












20110226



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