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××年後〜

「あら、なまえ、今日も白龍の鍛錬見てあげているの?」
「白瑛様。えぇ、まぁ。しかし、白龍様は熱心な子なので俺が教えることなど何も。」
「ふーん。そうなの。……あら?でも、
なまえって、白雄お兄様には教えて無かったわよね?」
「そうですね。……あの頃の俺は、まだ戦の感覚が残っていて下手したら白雄様を怪我させてしまうかもしれませんでしたからね。」

日差しが強くなってきた。これは、白龍様を室内に入れた方がいいな。
そう思い、白龍様の方を見るといつの間にか白雄様もいた。
兄弟を並べて見ると、本当に似ている。けれど、今ではあの様に真面目な白雄様がもし子供の頃白龍様みたいに真面目だったなら。俺の心労は少しは減ったはずだ。侍女たちの小言ももっと少なかったはずだ。

「なまえ、白龍のことは白雄お兄様に任せて私達はお茶でもしましょ?」
「そう、ですね。白雄様に見ていただいていれば安全ですし。」
「ふふ。信頼してるのね。お兄様のこと。」
「…信頼、というか。
俺は白雄様に忠誠を誓っています。だから、もし全ての人が黒だと言ったものが、白雄様が白だと言ったなら。俺の世界でそれは、白になる。俺が白雄様に抱いているのはそういうものです。信頼なんて生易しいものではありませんよ。」

ふーん。といいながら笑う白瑛様。何かおかしいのだろうか。全く持ってわからない。

「ね、なまえ。小さい頃にした質問。もう一回してもいい?」
「ええ。答えられる範囲であればなんでも、答えましょう。」
「どうして、なまえは白雄お兄様に付いたの?」

それは、とても俺の根源に関わることだった。ずっとずっとひたかくしにして、勿論本人にも言ったことがない事だ。
だけど、もう、いいか。あの人はもう俺が護らなくても他の誰かが護ってくれる人がいる。俺が一番じゃなくていい。

「白瑛様は昔からその事が気になりますよね。」
「だってなまえは強いから私の従者になってもらいたかったんですもの。今は青舜がいるからいいけれど。それに、何度言ってもお父様はこの問に答えてくれないの。私の口からでは言えないって。」
「それは、俺との約束を守ってくれているからですよ。しかし、時はきました。話しますよ。どうして俺が白雄様についているのか。」

キラキラと子供のような顔で俺を見つめてくる。こんなところはまだまだ子供だなぁなんてほのぼの思う。
そんな白瑛様に後押しされて口を開いた。

「助けて、貰ったんです。ずっと昔に。」
「お父様に?」
「いいえ。白雄様にです。」


***

昔々、雇われればどんな殺しもやる殺し屋の男がいました。その男はある日煌帝国という所に雇われました。その期間は約1年間。男ははじめはその期間の長さに仕事を渋りましたが、報酬の金額に目を奪われ承諾しました。煌帝国には戦争が多く男は楽しく暮らしていました。そんなある日、王様に呼ばれた男は王宮に行きました。そこには、小さな子供を抱えた王様がいたのです。

「おい、何の用だ。そのガキ見せるために来たんじゃねぇだろうな。」
「感がいいじゃないか!朱鬼。この子は白雄と言ってな私の子供だ。」
「はぁ…。で?」
「お前にこの子の面倒を見て欲しいんだ。」
「はぁ!?てめぇ、何言ってんだ!俺に子守なんかできるわけねーだろ!」

王様の言葉に声を荒らげる男は踵を返そうとします。そんな男を見越して王様は畳み掛けるように言いました。

「白雄の面倒を見てくれたのなら、上乗せするぞ?」
「……っ。人の足元みやがって。」
「そういう訳じゃない。君は曲がりなりにも王子なんだろう?その知識を生かして欲しいんだよ。」

男が金を欲している理由。それは、自分の国の為でした。男は自国の王子でした。その国はとても平和に暮らしていました。ところが、突然ある国が侵略してきたのです。平和に暮らしていたその国は対抗する術がなくあっけなくある国に負けてしまいました。その時、王子である男は国にいませんでした。男が国に帰ってきた時、そこはもう自国ではありません。母は王族の奴隷として働かせられ、姉や妹は豪商に売り飛ばされていました。父や、兄は斬首され、さらし首にされていました。
男はその国の王を恨みました。今やもう王子ではない男はその王を殺したくても近づけやしません。そこで男は国を買い上げることにしたのです。

「絶対に……殺してやる!」

それから男は日雇い武人として名を売り出しました。元から剣術の才能があった男はすぐさま有名になりました。そして、煌帝国に雇われたのです。



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