会計×3万×聞いてない
やべェ完全に飲み過ぎた…。
ちょっと引っかける程度のつもりが…なんでこの女といるといつもこうなるんだ。
「ねぇ土方さん聞いてるー?やっぱ銀さんって変な薬かなんかやってんのかな?3回ほぼ連チャンでしてもまだ勃つっておかしいですよね?土方さん勃ちます?」
「ぜってェ勃たねぇ。今度アイツんち家宅捜索すっか。」
見ろよ、柄にもなく下ネタ乗っかってるから。これ脳ミソヤバイ証拠だから。
こんな状況で帰り際、攘夷浪士なんかに襲われたら守りきれる気がしねェ。
若干ボンヤリする視界の中で、携帯のアドレス帳を開く。
「わりィ、今屯所か?迎えに来てくれねぇか?あの、3丁目の裏路地の…近藤さんが良く使う、いつものスナック。」
電話を切って会計を頼むと、廃れたスナックでの会計とは思えない数字に頭を抱えたくなった。
この金でマヨネーズ何本買えると思ってんだ!!
つーかちょっと待てこのレシート!!
「なんだよこの"ツケ"って!!」
「ん?銀さんの分。」
「なんで俺が払う流れになってんの!?」
「ここでアンタが払おうが、夕日ちゃんがスマイルで働いて払おうが、どっちにしろ金の出所はアンタになるんだろ?だったら今払いなよ。」
「あーまぁそうだな。スマイルで巻き上げられるよりここで払った方が安そうだ。」
「さすがトシ兄太っ腹ぁ!」
「トシ兄お前にいくら使えばいいの?どんだけ巻き上げれば気が済むの?」
酔ってるせいで思考がおかしくなってるのは言うまでもない。
「そろそろ迎え来るはずだから行くぞ。」
「ママともっと話したかったなぁ。また来ていいですか?」
「いつでもおいで。次は銀さんとね。」
「絶対来る!ご馳走さまでした!」
カウンターの向こうに、これ以上ないくらいの笑顔を向けた夕日と、店の前に出ると、丁度パトカーが走ってきた。
「あ、来た。」
「ん?あっ、あのモフモフは…」
「わりィな終。」
「終さんお久しぶりです!」
「あ?なんだお前ら知り合いなのか。」
「そうですよー?ねー?仲良しですよねー?」
コイツ完全に酔ってる。
勝手に助手席座ってるし!
仕方なく後部座席に乗り込むと、夕日が助手席から運転席に向け身を乗り出す。
「ねぇ終兄さんその頭地毛なんですか?」
発車しようとした手を止めて、終は夕日の方を見て頷いた。
つーかいつの間に兄さん呼びになったの。総悟の影響なのか?つーかコイツ下手したら終より年上だろ。
「触ってもいい?」
何故か目を輝かせた夕日に、終の顔が赤くなる。
なんか…終が女と絡んでるの見るの新鮮だな。つーか真選組以外の人間と絡む場面なんてそうそう見ねぇし。
ちょっと様子見てみよ。
「ちょっとだけ、ダメ?」
アレ、なんかこれ卑猥なシーンみたいになってない?
終は目をギュッと瞑って頭を差し出した。
夕日はその頭にそっと触れた。
「あ、うわっ!モフモフ!銀さんが大きくなったみたい!」
「ふっ、」
思わず吹き出した。
だってコイツ、アイツのことしか頭にねえじゃねぇか。
こんな風に、幸せそうなコイツを見てると、なんでこんなに安心するんだろう。
もし…妹がいたら、こんな感覚なんだろうか。
もし…妹がいたら、幸せでいて欲しいと、願いたくなるもんなんだろうか。
…こんな妹ぜってェやだけど。
つーかアレ!?!?
「オイィイ!!!どうした終ぅう!!!」
まともに人と話すこともできないスーパーシャイボーイが、女に触られて無事でいられるはずがなかった。
顔真っ赤だし、目ん玉グルグルになってるし、なんかコレ、
「わー!なんか湯気出てるー!アハハハ!!」
「お前が触ってるからだっつーの!!離せ!!」
「終兄さんなんか可愛いなー!愛くるしいなー!ペットにしたいなー!」
「いい加減にしろ酔っ払いぃぃいいい!!!」
この後酔っ払いと終を落ち着かせるのに30分かかった。
やっぱ、こんな妹絶対やだ。