困惑
私は入部希望の紙を書いたその日のお昼休み、担任の先生に呼ばれて職員室へと行きました。とりあえず午前中は平穏に過ごし、クラスメイトともお話しました。特に仲良くなれたのが美人で結構なお嬢様なのにさっぱりした性格の東雲美姫(しののめゆき)さんと、普通のご家庭だけれど可憐でどこか気品の漂う宮沢優歌(みやさわゆうか)さんです。両手に花とはこのことですね。幸せすぎです。
さて、そのお二人とお昼を済ませその足で職員室赴きました。担任の先生を見つけ声を掛けたらついてこい、との事を言われ先生に付いて行きます。何故か嫌な予感がひしひしとします。気のせいなら良いのですが…。そして到着きたのは、音楽室でした。
「失礼致します、榊先生」
「うむ、入れ」
ぽかんとすればガラッと扉が開き、中には脚を組んで優雅に座っている榊太郎。驚き過ぎて動けないのを見かねて、担任の先生…小林先生が中に入れと促します。唖然としたまま榊太郎の前まで行ったら、小林先生は失礼致しましたと言いました。え、嘘…先生ひとりにしないで下さい!と気持ちを籠めて視線を送ったのですが見事にスルーされました。いえ、背中だったので当たり前なのかもしれませんが。今はそんなことに構っていられません。どうしましょうか、この状況…。
「夢野姫子、くんだね」
「!は、はい」
「私はテニス部の監督の榊太郎だ」
「え、…と」
「いきなりですまないが、今日からテニス部マネージャーの仕事を開始して欲しい」
「……え?」
「どうした?」
「な、何故私なのでしょうか?他にも希望の方はいらしたのでは…」
「?いや、君だけだ」
パリーンと何かが壊れる音がした。何故私だけ…?落ち着け私、今はとにかく落ち着くべきです。深呼吸深呼吸、ひっひっふーひっひっふー…これじゃ妊婦さんですね。ああ駄目落ち着けないです。何かがもういろいろと崩壊してます。
私はいったい何処で間違えたのでしょうか…?
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