雛森さんを好きだと確信を得て以降、自分からも本当にたまにだが雛森さんに話しかける様になった。その度に雛森さんに抱き着かれる。嫌な気は、しない。


「ゆいなちゃん!」

「はい、なんでしょう?」

「あのね、これから友達と甘味処行くんだけど…一緒に行かない?」

「……雰囲気を壊すと思うので、遠慮しておきます」

「大丈夫だよ!ね?」

「おー、問題ねぇ」

「あ、う、うん…」

「……阿散井さんと、吉良さん」


雛森さんの言っていた二人とは、阿散井恋次と吉良イヅル。少し離れた所にいたが雛森さんの問いにこちらまで来た。話した事もないクラスメイトと言う名の他人。私の言葉か態度か…なにかしらが勘に触ったのか阿散井恋次の眉間に皺が寄った。


「だーっ!阿散井さんだぁ!?気色悪りぃもっと砕けて呼べよ!」

「…阿散井くんで良いですか」

「お前…ホント雛森以外に態度悪いよな」

「あ、阿散井くん!美濃くん…その、気にしなくて良いよ?」

「……いえ、本当のことだと思います。私雛森さん以外友達居ませんので」

「…!ゆいなちゃん…っ!」

「はい?」


ガバッと勢い良く雛森さんに抱きつかれた。吃驚はしたが彼女は軽いので然程問題なく支えられ倒れる事はなかった。いきなりのことのため、あちらの二人とも驚いた様子をしている。


「嬉しい…!私のこと友達だって思ってくれてたんだね!私だけだと思ってたから…!」

「あ…、」


そう言えば先程彼女を友達と述べた。無意識に出た言葉の為自分でも気付かなかった。私は彼女を"友達"と言う存在と認識していたらしい。そんなモノ本から得た知識に過ぎないのに脳がいつの間にか彼女を友達としていたらしい。思い出すと何を言ってしまったのだろうと、ぐるぐる何かが渦巻く。


「何だよ雛森は友達だから、かよ。…よし、今から俺と吉良も友達だ」

「え、僕も!?」

「嫌なのかよ?」

「そ、そんなことないけど…」

「なら決定だ。美濃、これから宜しくな」

「よ、よろしく…」


自信満々な阿散井恋次と申し訳なさそうな吉良イヅル。友達と言うモノはこういうモノだっただろうか?と思いながらも、嬉しそうに楽しそうに笑っている雛森さんを見ていたら言葉も出ずに頷いていた。