彼が消滅した。
死んだのではなく、さらさらと消滅していった。あたしが彼に触れたのは彼を叩いた時だけ。あの時、あの一瞬だけあたしは彼に触れられた。彼は確かにあたしの近くに居た。けれど遠すぎた。心を重んじるあたしと、心を軽んじる彼。心を信じるあたしと、心を否定する彼。なにもかもが対照的でかけ離れていた。人間と、虚。
それでもあたしは、彼が愛しかった。
恋の愛でも友の愛でも家族の愛でもなく、ただただ愛しかった。強すぎて儚い彼を、幾度となく抱きしめたかった。でもそれも叶わず、彼は消滅した。儚い彼らしく儚く散った。悲しいと言うより、哀しい。なんという虚無感。彼は、いつもこの虚無感を味わっていたのだろうか。胸が押し潰されるようなこの感覚。今ならこの胸を引き裂いて虚無に満ちた心を、彼に見せられるかも知れない。けれど、彼は、もういない。
「っひ、…ウル…っ!」
ウルキオラくん。あなたをこう呼ぶのはあなたが人間のようだから。ウルキオラくん。感情があるのだからあなたは心があるよ。ウルキオラくん。心は見えたかな。ウルキオラくんウルキオラくんウルキオラくん。あいしてるよ。
この涙をあなたに拭ってほしかった。あなたにしか拭えない、この涙を。
(触れぬ指先)(絡まる心)
end――――――――――――――――――――――――
原作もちーふに改造!
切ないよウル織!
ギャグ書きたいよ!
20111214
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