『はぁぁぁぁ………』 思いっきり溜め息を吐いてアタシは立ちすくんでいる。今や最も住みたい街No.1と唱われる吉祥寺に、アタシは立っている。溜め息ついてるあたりでわかってくれると思うけど、嫌なんだよね。ぶっちゃけ。マジで。 『やっぱムリなんだけど…』 そもそもこうなったのは両親の都合なわけで。かと言って一家共々ってわけでもなく。とにかくアタシは今日からこの街で1人暮らしをする事になった。 「え?!吉祥寺?!マジで?!超羨ましんだけど!!」 元クラスメートの友人達はアタシの気持ちそっちのけで寂しいの一言もなく羨ましいを連呼した。 (いやふざけんなよ。) 確かに人気No.1かもしれないけど住む家は商店街の中なんだけど?カッコ悪くない?全然シャレオツ臭しないんだけど。しかも、10年経ったにしたって昔住んでた街。殆ど記憶にないけど絶対「あら!名字さんとこの!」とかっつって、商店街のおばちゃんトカに声かけられたりとかして〜…………ウザッ!アタシ、そーゆー馴れ馴れしいのマジ嫌なんだけど。 『どーしよー……』 まー嫌だと言っても荷物はもう新しい家に送られちゃったんだけど(ほぼ強制的に)うちの母親は天然のくせに絶対ドSだ。仕方なくその新しい家の大家の店に行くことにした。 「キャー!」 プラプラ歩いていると悲鳴にも似た声が前方から聞こえてきた。つーか何だアレ。めっちゃ女子高生いるんだけど。進行方向だったんで、通りすがりにチラリと見た店構え。 (フラワーショップ種村…) 確かに、花屋だ。めっちゃ花あるし。でも別に普通の花屋だし、つーかむしろかなり商店街丸出しな感じなんだけど。何をそんな……… 『!!!!』 「はいはい、順番だよ?危ないから押さないでねー?」 「キャー!!」 「ハルくーん!!」 成る程。 超イケメンいた! 何あれ?!どこの王子?!すっごいイケメンじゃん!!そりゃキャーキャー言われるっつーの!!うわ笑顔!!目の保養っつかむしろ毒ー!! 「あれ?」 『…え?』 な、なんか王子がこっち見てる、?つかこっち来る?!ぇぇええええ?!なになに何NANI?!ごごごめんなさいー!← 「ねぇ君どっかで会った事ない?」 『………は?』 いや…………は??? 『な、ない……と思うけど…』 「んー…そんな事ないと思うんだけど……絶対どっかで…」 さすがにこんな王子忘れないって。てか近くで見るとより王子。王子2割増し。何コレ何アナタ。超キレイ。超まつげ長い。ちょっとヤダあんたマジ何者?! いやいやいやいや落ち着け。 とりあえず落ち着けぃアタシ。 この下りはアレでしょ?つまりあれですよね?超ベタな最早誰も使ってないんじゃないか的な化石レベルのナンパってヤツじゃないですか??え?王子にお前ごときがナンパされるわけねーだろとかマジシャラーップ!!つーか王子のくせに化石レベルでしかもタラシとかマジないんだけど。超ガッカリ。返せよトキメキ。 「ちょ、何あの子…」 「なんでハル君に話かけられてんの?」 うーわ……出たぁぁ…THE女子 「ねぇ君『意味わかんない。あんたなんて知らないし』 タラシ王子の言葉を遮りそう言ってアタシはその場を後にした。 |