学校からの帰り道。
小さな男の子が嬉しそうにママの手を引いて、『大きくなったらママと結婚する!』なんて言っちゃって、それはそれは幸せそうに笑っていて。アタシも思わず頬が綻んじゃったけど、やきもち妬きの貴方はもしかして、ひょっとするとそれすらも、面白くないと無言で眉を潜めるんじゃないかなぁなんて、二人の未来を思い描いては自惚れてみたりした。
「俺をバカにしているのか?」
『……してない…』
バカはアタシかも……
そんな事聞いてみた所で意地悪な誓さんがyesと言ってくれるはずがない。
「……成る程」
『へ?…きゃッ!』
冷ややかな返しに俯いて、ベッドに座る自分の膝を見つめていたらボソリと声がして、気づけば誓さんに覆い被されていた。
『せッ、誓さん?!』
「つまり俺の子供が欲しいと言いたいのだろう?」
『ち、違ッ、んッ!』
噛み付く様な濃厚なキスをされて、骨が軋む位に抱き締められて息が上手く出来ない。
『ん、ッ!ふ、!』
「ン、……ハ、」
誓さんの口から漏れる吐息混じりの声が色っぽくてクラクラする。
「子供が子供を産んでどうする」
なのにこの言葉で熱は覚めた
『…………』
「………名前?」
突然反応を止めたアタシの顔を誓さんがキスをやめて覗き込む。
『子供じゃない…』
「?何?」
『子供じゃないもん!』
キョトンとするその顔にすら腹が立ってプイッと顔を背けた。
だって子供だなんてわかってる。そりゃあ誓さんから見れば子供に決まってるじゃない!
ううんそれよりも、ただアタシは見たものと感じた事を話しただけなのに。何でそんな事言われなきゃなんないの?!
「名前……」
『……………』
「……名前、すまなかった」
誓さんはアタシの髪をゆっくりと優しく撫でた。だけど何だかすっきりしなくて、それすらにも無反応を続けていると、アタシの肩口に頭を埋めて、誓さんはボソボソと話し始めた。
「……嬉しかったんだ…」
『………?』
「名前が……俺と一緒の未来を考えてくれたなんて……嬉しくて、愛しくて、君を抱きたくなった。」
『…………』
「余裕もなく酷い事を言った……子供は俺の方だな。すまなかった」
誓さん、顔は見えないケド、きっと照れてる。アタシはきっと耳まで真っ赤だし、ホントは嬉しくて仕方ないけれど、何だか素直になれなくて、その分やっぱり子供だなって今度は自分に腹が立って泣きそうになって固まった。
「名前?」
だけど顔を上げた誓さんをチラリと見るとアタシよりも真っ赤な顔を切なそうに歪めていたから、精一杯素直になる事にした。
もう1度キスをして
啄む様な優しいキス一つで機嫌を直したアタシはやっぱりまだまだ子供だ。誓さんの首に腕を回すと同時にそれは徐々に深いものとなり、一つになった瞬間にまた誓さんに近づけた気がして、もう一度、と、キスをせがんだ。
2010.10.22
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