自分勝手






いつと同じ平日の朝。俺はお京さんといつも通り台所に立ちいつも通り朝食の準備をしています。ただ、いつもと違うのは…


「名前ちゃん、遅いわねぇ〜」
「そうですね、いつもならもう起きてる時間なのに…」
「お疲れかしら?……太一ちゃん、身に覚えは?」
「え……なッ!何言ってるんですか!そんなのッ」
「あら、ないの〜?ウフフ、ホントかしら〜♪」
「ないですよ!!はぁ、ちょっと見てきます」
「やだぁ、照れちゃって可愛い♪」


今朝は名前ちゃんがなかなか起きて来ない。寝坊なんて珍しい。勿論お京さんが言うような事はした覚えもないのに……





トン トン
「……名前ちゃん?」


部屋の戸をノックしても中からはカタリとも音がしない。もしかして本当にねているのかな?だとしたら急いで起こしてあげないと遅刻しちゃうな。女の子は支度に時間がかかるし……って、本当は寝ててほしいとも思ってるんだけど。寝顔見たいし。俺、自分勝手かなぁ……


カチャ…
「名前ちゃん?入るよ?」


入った途端に香る名前ちゃんの匂いにクラクラする。視界に入るベッドの上の小さな膨らみに、顔の一つも見えていないのに胸がソワソワして仕方ない。全く、こんなに年の離れた女の子にこんな気持ちにさせられるなんて。


「名前ちゃん…」


いよいよこの目に捉えた愛しい女の子はやっぱりまだ夢の中にいる様で、このまま暫く眺めていたいけれど、やっぱり遅刻させるわけにはいかないし………なんて、本当は寝ている君も素敵だけど、早くその目を開いて俺を見てほしいって、また自分勝手なんだけどね。


「名前ちゃ……」
『んん……』


ベッドに腰をかけて頬に触れて気付いた。熱い。漏れた声も苦しげで…





















「まあ?!風邪?!」
「えぇ、熱が高いようなので、俺これから病院につれて行きます」
「そう、宜しくね。アタシは学校に連絡しておくわ」
「お願いします」










『太一さん……ごめんなさい』
「え……?」


病院から帰りベッドまで名前ちゃんを運んでいると、彼女は俺の腕の中でポツリと呟いた。


「どうして謝るの?」
『だって…迷惑かけちゃった…』
「迷惑だなんて、思ってないよ?」
『でも……仕事だってあるのに…』


キュッと俺のシャツを掴む彼女が愛しくて、可愛くって仕方がなくて、不謹慎にも嬉しいなんて思ってしまった。


「名前……、気にする事なんてないよ。君が辛い時は側にいたいし、その役目が俺だって事、凄く嬉しいんだ」
『太一さん……』


熱のせいだろうか、ベッドにそっと小さな体を優しく下ろすと、真っ赤な顔で瞳を潤ませた君と目が合って。本当に不謹慎だけど、幸せを感じてしまった。









「名前ちゃん、おかゆだよ。食べれるかな?」
『はい…』
「??、どうかした??」
『……怒らない?』
「へ?何が?」
『迷惑かけてるのわかってるけど……太一さんと……一日中一緒にいられて嬉しいなって………ごめんなさい』
「(ズキューン!)」
その上目遣いは  
反則です



2010.10.26


←back