花金ってやつですね。
大学生活も3年目に突入し、今日俺は新クラスの交流会という名の飲み会に参加している。
2年の基礎課程が修了し、自分で専攻したより専門的な科のクラスに再振り分けされるのだ。
俺はデザインと縫製技術に磨きをかけたくて、ドレスクリエ―ションの専科クラスに進むことにした。


「木手くーん」

盛り上がる周りを眺め、壁に寄りかかり泡盛が入ったグラス片手にぼうっとしていると見覚えのある女子に名前を呼ばれた。
彼女は、なまえのクラスメイトで2人で仲良く話している姿をよく見かける。
たしかなまえと同じ専科クラスに進んでいたはずだ。

「どうしたんです?」
「それがなまえちゃん、酔いつぶれて寝ちゃったのよ」
「・・・わかりました、俺が連れて帰りますから」
「よっ!流石彼氏様!」
「はぁ・・・」

彼女に聞いたところによると、なまえの新クラスの飲み会で酒に弱いのに間違えて隣にあったグラスの酒を飲んで寝てしまったらしい。
たまたま、偶然に、同じ居酒屋で飲み会をしていたなまえの彼氏である俺を見つけて声をかけた、というわけだ。
もちろん同じ居酒屋で飲み会をやっていたのは偶然じゃないですがね。

会費は先に払っていたし、俺はなまえを連れて帰るのを理由に早めに飲み会の席から抜けることにした。

「じゃあお先に失礼しますよ」
「起きたらなまえちゃんによろしくね〜」

クラスメイトの彼女はまだ飲んでいくようで、ひらひらと片手を振って見送られた。

2人分の鞄もあるし、安定した体勢を選んでなまえを背中に背負った。
今日なまえが穿いていたのが、マキシ丈のスカートで良かったと俺は心底思った。
これなら背負っても脚の露出は抑えられるはずだからだ。

店を出て、外気のひんやりとした風に当たって起きたのだろうか、なまえがもぞもぞと身じろいでいる。
4月になったとはいえ、まだ夜風はひんやりとしている。
東京で迎える3度目の春、南国育ちの俺はまだ長袖と温かいアウターが手放せないでいる。
そのうち身体が慣れるのだかろうか・・・まぁ、考えても始まらないことだが。


「んん・・・えーしろ・・・?」
「あい、なまえ、起きたの?」
「・・ふふふ、背中あったかーい」


背中のなまえは首にしっかりと腕を回し、脚を腰に絡めてぴったりと背中に密着してくる。
素面でならやらない、積極的なスキンシップに思わずどきっとさせられる。
なまえが匂いづけする猫みたいに顔を首の付け根にぐりぐりと摺り寄せてきてくすぐったい。

「なまえ、止めなさい。くすぐったい」
「むぅ」

普段とは違う子供っぽい様子になんだか腹の奥がじんわりと熱を持つ。
これが世にいうギャップ、というやつなんだろうか。

温かい揺れる背中がお気に召したのか、なまえはご機嫌な様子で微睡みの中でふふ、と無邪気に笑っていた。

次の駅で降りれば、家はもうすぐだ。








「ほら、家に着いたよ」
「・ん・・ただぃ、ま・・・」

そして当然のように自分の部屋に連れ帰ってきたわけだが。
今はまだ別々の部屋を借りているがゆくゆくは同じ部屋に住みたいところだ。
そのためにFXで小金を溜めているところだ。俺は堅実な男ですからね。

玄関でパンプスを脱がしてやり、ベッドの上に名前を下ろす。
うつらうつらと微睡み、いまにも瞼がくっついてしまいそうだ。
それでも寝ていないのか、ふふふ、となまえが笑う。

「えーしろ、添い寝してほしーの?」
「・・・え?」
「・・ぃぃょ?ほら、ねょ?」

ぽんぽん、と開いてるスペースを叩いていた。
というか、あなたまだ化粧も落としてないでしょうに。

部屋に置いてあるシートタイプの化粧落としを取り出して、なまえの顔を優しく拭う。
寝ぼけたままのなまえはもちろん俺にされるがままだ。
時々、んや、だの、むぅ、だのと小動物のような鳴声を出している。

シートにラメ入りのオレンジやブラウンのアイシャドウ、ブラウンのアイラインやカラーマスカラが移る。
飲食して大分薄くなっていたが、忘れずに口紅も移し取ってやれば素顔のあどけないなまえが戻ってきた。

その後簡単にスキンケアを施してやれば、撫でる手つきが心地よかったのかなまえが

「・・・えーしろのてぇ、すき」

なんて言ってにこにこと笑っていた。
その瞼はもう完全にくっついていたが。

服もこのまま寝たら皺が大変なことになるので、着替えさせることにした。
下心はみじんもない・・・と言ったら嘘になるが、抵抗されないというこの状況にあんまり燃えないのも事実だ。
やはりコトに及ぶのなら、なまえに可愛く抵抗されつつそれを組み敷いた上で心行くまで思う存分貪りたいのだ。

着替えを準備して戻れば、完全に寝落ちてしまったなまえはすうすうと静かに寝息をたてていた。
明日起きたらきっと驚くだろうな、なんて想像しながら、花柄のレースが可愛いブラウスとロングスカート脱がしていく。
どっちもなまえによく似合っていて、もっと見ていたかったがこればかりは仕方ない。

脱がした服の代わりに俺が部屋着にしているオーバーサイズの黒のTシャツを着せてやる。
下着は・・・上だけとってしまおうか。
背中に手をまわしてホックをはずし腕から肩紐を引き抜いて袖口からするすると引っ張って下着を回収した。


(黒のレース・・・ですか)

そして最後の悪戯とばかりに、襟ぐりから覗く鎖骨や白い首筋に吸いついてキスマークを残していく。

さすがの俺も今日はもう眠い、このまま寝てしまおう。
着ていたものを乱雑に脱ぎ捨て下着だけになってなまえの隣にもぐりこんだ。
羽毛布団がひと肌で温かい。

急ぐことはない、明日は土曜日、明後日は日曜日、恋人たちの時間はたんまりとあるのだから。
なんだか今夜はいい夢が見れそうだ。


「・・・・ニンジミソーレー、なまえ」

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