アーサー王の世界で、私たちは嘆きの洞窟を目指すためにちょっとした冒険をしていた。
もともと体力のない私はみんなに着いていくだけでも精一杯で、何度も私だけのために休憩をとってもらってやっと何とか進めている状態だ。同じマネージャーでも葵ちゃんたちは選手の皆と同じように進んでいる。マネージャーは選手のみんなをサポートするのが仕事なのに、足を引っ張ってしまって、…情けないなぁ。
それでもそんな私をみんな気遣ってくれて、でも逆にその優しさが辛くてますます情けなくなって、溢れそうになる涙を必死で堪える。ああ、なんて情けないんだろうか。


蛇の大群や燃え盛る炎を抜けた所にあった広場で、何度目かの休憩を取る。
談笑するみんなとは少し離れた場所で、溜息を吐いた。一度ヘコんでしまうと、どつぼにはまったようにぐるぐると嫌な考えが頭の中を回る。
…これからきっと、もっともっと大変なことが起こるだろう。果たして私はそれについていけるのだろうか?


「はあ…」


本日何度目か分からないため息をついた時だった。ガサガサガサ、すぐ隣にあった茂みがいきなり揺れて短い悲鳴をあげてしまった。
茂みから顔を出したのはついこの間仲間になったトーブくんで、私が悲鳴を上げたことでなんだなんだと注目していた皆も、彼の姿を確認すると、すぐにまた談笑をはじめる。



「ト、トーブくん…いきなり吃驚したよ」
「名前が元気ないってトンマたちが言ってたぞ!」
「…そんなこと、ないよ」
「そーかぁ?ココとココ、寄ってるぞー?」

そう言うと、トーブくんは私の眉間に人差し指を当てる。急なことだったので何も言えずに驚いていると、そんな私を見てトーブくんはニカリと笑った。
太陽のような笑顔で笑うトーブくんに、再び何も言えないでいると彼が口を開いた。


「オラは名前が笑顔のほうが楽しくなるぞ!」
「え…」
「名前の笑顔はぽかぽかして陽だまりみたいだぞ!オラ、笑ってる名前が好きだ!」
「ト、トーブくん…!」

他意はないことなんてわかってるけど、それでもなんとなく恥ずかしくて、嬉しくてドキドキしてしまう。
赤い顔を隠すように俯いていると、トーブくんがぽんぽんと私の頭を撫でてくれた。


「名前、疲れたらオラに言ってくれ!」
「え?」
「オラ元気ウッホウホだから、名前のことおぶって崖でもなんでも登るっぞ!」
「…そ、それはだめだよ…トーブくんに迷惑かかっちゃうし…」
「そんなことないぞ?それにきっとトンマたちだってそう思ってるぞ!」
「?」
「オラも、トンマたちも名前の仲間だ!仲間は助け合うモンだからな!」
「……」
「どうした?」


私が急に黙り込むと、トーブくんは困ったような顔をして私の顔を覗き込んできた。
そんなトーブくんの顔を見ると申し訳なってきて、ああ私は何をしてるんだ、と自己嫌悪に陥る。


「私、助けてもらってばかりで…みんなを助けることができなくて、今日だってたくさん迷惑かけて…マネージャーなのに、こんなんじゃ、足手まといになるんじゃないかって思って…」
「……」
「情け、ないよね…」
「難しいことはオラにはよくわかんねーけど名前は笑っていればいいと思うぞ!」
「…え…?」
「もう一回言うぞ!名前が笑ってると、オラもトンマたちも嬉しいぞ!名前の笑顔を見ると元気になるんだ!見たらやる気がウホウホ湧いてくるんだぞ!」
「トーブくん…」
「名前!」
「え、あ、ト、トーブくん!?」


いきなり大きな声で名前を呼ばれた後、私はトーブくんに持ち上げられた。突然のことに私が驚いていると、トーブくんは私を横抱きして、それから「ウホウホー!」と言いながら走り始めた。ええええええ!?


「ト、トーブくんどこいくの?」
「決まってるぞ!」
「えええ?」
「ト、トーブ!名前を連れて何処へ行くの?」
「トンマ!休憩は終わりだぞ!行くぞー!!」


トーブくんはそう言うと、更に走るスピードをあげた。私は彼に必死にしがみつく。ちょっと怖かったけど、でも嫌な気持ちにはならない。むしろ…。
全身にぶつかる爽やかな風がとても気持ち良くて、自然と笑顔になる。するとそんな私を見て、トーブくんがニカリと笑った。




「やっぱり名前は笑顔が似合うぞ!」


ひだまりの笑顔
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