昔から家が近所で、一番仲が良かった私は茜ちゃんの幼馴染みだ。
茜ちゃんはミステリアスで、時々電波なんじゃないのかなと思う発言をする時があるけど、私は大好き。
幼馴染みでもあるけど、親友でもあるから。


「っ、茜ちゃん…もう少し優しく…!」

「ダメ。怪我したんだから、大人しく…」


なんていう昔話をしている暇はあまりないらしい。先程行われた体育、不注意で転んでしまったのだ。私としたことが、まさか転ぶとは思わなかったので、血が出て足が痛くて動けなくなってしまった。そのために保健室まで茜ちゃんにおぶさってもらった始末だ。感謝の言葉と同時に、茜ちゃん結構力あったんだなーという気持ちも込み上げてきた。


「いっ、いたた! だから茜ちゃん! あともう少しだけ優しく消毒液つけてっ!」

「ファイト…名前ちゃん」


にこにこ。まるで楽しんでいるように私の怪我をしている膝に向かって消毒液をつけてくれる茜ちゃん。有り難いけど痛いものは痛い。


「名前ちゃん、痛そうで心配した…」

「心配してるならもう少し優しく…!」

「分かった」

「え? ありがとう、ございます」


いきなり言うことを聞いた(という言い方は相手に悪いけど)茜ちゃんに声がうわずる。
それでも笑顔を崩さない茜ちゃんに怒ってはいないことを察した。


「いきなり、どうしたの?」

「? 何が…」

「いえ、あの…なんか急に優しくしてくれたから…」

「…私は、名前ちゃんが早く治ってほしいって思ってるだけ」


女の子なんだから気を付けないと。そう言って私に今日一番の笑顔を見せてくれる。
嗚呼、私幸せなんだなって。そう思った。


「…もちろん、シン様にも優しくしたいけど」

「本音がぽろりと出てるよ、茜ちゃん」



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