ハッピーエンドを知っている




いつものように屋上でぼーっと空を見てたら、バタン、とやけに大きな扉の開く音がした。
下を見れば一人の女子生徒…っていうか普通にみょうじ。何しにきたのかと疑問に思って見てると、何でもないようにフェンスに攀じ登りフェンスの向こう側に移動した。さすがに驚いて目を離せずにいるとみょうじは後ろ手にフェンスを掴んだままじっと下を見ている。
それからゆっくりとした動作でフェンスから手を離した。


「…!」


本気で落ちる、と思って上体を起こすとさっきまで飲んでいたコーヒーの缶が倒れた。
カラン、という音が耳に届いたようで手はフェンスに戻された


「あ、高杉」

「お前何してんだ」

「違う違う!落ちたいわけじゃないから!」

「?」


よいしょ、とまたフェンスのこちら側に戻ってきた。ついでに俺がいる給水塔まで登ってきた。


話を聞けば本当に死のうとしているわけじゃなくてあの場所に立つことでデットオアアライブを楽しんでいるだけだから大丈夫らしい。……って何が大丈夫なんだ


「何も大丈夫じゃねーだろ」

「え?あー、うん」

「なんなんだお前」

「ちょ、まじで不審な目で見ないでよ。大丈夫だって」

「そのうち死ぬぞ」

「その時はその時よー。色のない世界になんか興味ないし」

「あァ?なんだそれ」

「毎日平凡過ぎてさ、今生きてるのか死んでるのかもわかんなくなるじゃん」

「だから確かめてるのかァ?」

「そゆこと」

「んな危なっかしいやり方以外にいい方法知らねーのかよ」

「知らなーい。高杉は知ってんの?」

「知ってる」

「本当に?」



俺の「知ってる」一言にあんまり食いついてくるもんだから思わず笑う。
そしたら今度は不満げな顔をするもんだからまた面白い



「教えてやろうか」

「うん」

「クク、教えてやらァ」

「待って高杉、なんか今凄い悪い笑い方した!」

「気のせいだろ」

「嘘つけェエエエエエ!」



ハッピーエンドを知っている
(だから死んでもいいなんて言うんじゃねェよ)



(屋上なんかでこんな……お嫁に行けないっ!)
(俺んとこ来れば問題ないだろ)
(……)
(なんだよその目)
(こんな怖い人のとこになんか嫁がない)
(素直じゃねーなァ)


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