深夜3時



深夜1時。
面白そうなテレビも終わったので消すと、ソファーに座って読みかけの小説に手を伸ばす。一つ欠伸をして栞の挟んであったページを開く。
しばらくすると壁の掛け時計の針の音が気になったので、手元にあったiPodの電源を入れてヘッドフォンを装着する。よく知らない洋楽のアルバムを選択する。本を読むのを邪魔してこないので読書の時はこれに決めている。



読み終わって時間を確認すると2時。
一応夫の帰りを待っていたのだが、今日は帰ってこないのだろうか。私は明日も仕事なので寝ないと……っていうかあの人だって明日も仕事のはずなのだが。
連絡くらいしたっていいのに、とは思ったことはあるが言ったことはない。ふらふらする人なんだ。いちいち連絡をもらっていたら面倒だ。それに平気で女の匂いをさせて帰ってくるような人だ、直接的な言葉で連絡してくるかもしれない。これ以上のショックはない気がする。
……すぐに流される人だからといって、私に愛がないわけじゃない。ただ来る者拒まずなだけで。愛がなかったらとっくに別れてるし。


立ち上がって寝室へ向かう。ベット脇の天井にまで届く本棚の空いたスペースに読み終わった本を入れる。携帯のアラームをセットして電気を消してベットに潜り込む。
目を閉じて闇に引きずり込まれる感覚を感じていると遠くで玄関のドアが開く音が聞こえた。ああ、帰ってきたんだなあ、と遠のく意識の中でぼんやりと思った。
思っただけで、また眠ろうとしたら寝室の扉を開けられた。
それでも無視して眠ろうとしたら、掛け布団を剥がれた。


「なに、私もう寝る…んぅ!」

奴は無言のままで噛みつくようなキスを落とす。
私は晋助の胸に手をあてて力一杯押す。でもやっぱり力では敵わないようでびくともしなかった。

密着した晋助の体からは私ではない、女の匂いがする。
ただそれだけで、好きな人から受けるキスは最悪の味になる。

ようやく解放された時には私は生理的でない涙が私の頬を伝っていた。
彼はそれに気付かず私に体重をかけてくる。堪えきれなくて思わず嗚咽を漏らすと、私の服を弄っていた手の動きが止まる。


「どうした」

「どうした、じゃないわよ。また流されてきたんでしょ、触らないで」

「流されてねェ」

「だったらなんでそんな匂いするの…」

「呑んでただけだ、きっちり断ってきた」

「誘われはしたんだ…」

「それは俺の所為じゃねェ」

「じゃあわかったから、せめてシャワー浴びてきて」

「あァ」


体を起こした晋助を見て、私は剥がれた掛け布団をかけなおす。…と晋助の手が私の手を掴んだ。


「なに?」

「風呂」

「いってくれば?」

「お前も」

「いやよ、さっき入ったし寝るもの」

「あ?何言ってんだ」

「そっちこそ。何時だと思ってんのよ」

「もうすぐ3時だろ。ぐだぐだ言ってねーで早く起きろ」

「それ深夜3時に言う?…うあっ!」


手を掴んだままで構わず歩きだすものだから私はベットから転げ落ちそうになる。
でも本気で断る気がない私は、この男に甘すぎるのだろうか。



温もりを感じる午前3時



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