彼の勝ち


けたたましく鳴り始めた携帯のアラームに眉をひそめる。目を閉じたまま手探りで携帯を掴んでアラームを止める。


(平日か…)

うっすら目を開けてディスプレイを確認する。平日の朝というのはいつも休日であることを願う。叶ったことはない、残念ながら。


隣をみるとアラームの音で目を覚ましたらしい晋助がぼんやりとこちらを見ていた。
私も凄く寝起きが悪いし起きてすぐは不機嫌になることが多いのだがこの人には敵わない。この人の寝起きは世界の全てを恨んでいるかのようだ。実際そうなのかもしれないけど。


「晋助、起きて。朝だよ」

「……ん」


起きてないらしい。返事なのかもわからない声を発してまた目を閉じてしまった。

今度は揺すってみる


「晋助ー、しーごーとー」

「…るせェ」

「遅刻するわよ」

「いい」


もう知るか。起きる気配のないこの人は放って私一人で仕事にいこう、そうしよう。私は起こした。

私は起き上がって、ベッドに腰掛ける。携帯のメールチェックをしてから振り返ってみるが、もう寝息をたてている彼に苦笑。丸くなって布団に包まる様は大きな猫みたいだと思って、何気なく頭を撫でた。どんな人でも寝ていれば可愛いもんだ………なんて油断をしていた


突如頭を撫でていた手が凄い力で引かれてベッドに逆戻りする。


「ちょ、」

「お前は俺を置いて仕事にいくのか、ほォ」

「だって起こしたのに起きないから」

「目覚めのキスでもされれば起きる」

「嫌よ。じゃあもう一人で起きてよ」

「あァ?そんなん断る。ふざけんな」

「なんで。子供じゃないでしょーが」

「人に起こされねーと駄目なの知ってんだろ」

「それじゃ私がいなくなった時どうするのよ」

「…いなくなる予定でもあんのか」

「…ないけど」

「じゃあいいだろ」


私のそれよりも逞しい腕が私を抱き込む。晋助の匂いに満たされて自然と瞼が落ちてしまう。


「待って、寝ちゃうよ」

「寝ればいいだろ」

「でも仕事…」

「時計見ろ」

「え?…………ああー!」


晋助の胸板から少し顔をあげて掛け時計をみるととっくに仕事には遅刻の時間だった。


「るせェよ、黙れ」

「黙れないわよ!遅刻!」

「もういいだろ、今日は休みってことで」

「…………」



なんだかもう、それでいいような気がしてきてまた晋助の胸板に顔を埋める。


「もういいのかァ?」

「うん。休む」


そう返すと晋助は楽しそうに喉を鳴らして笑う。


「え、なに?」

「いや、別に」

「?……おやすみ」

「何言ってんだ、起きろ」

「はぁ?」


驚きで顔を上げると柔らかい唇が降ってくる。
ああそうゆうことかと理解して、私は目を閉じて口付けに応えることにした。




どうやら今日は彼の勝ちのようです




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