望まなかった終末



※本誌で銀時と高杉の戦いが始まった時に書いたものなので原作の展開ではありません。


いつかはこんな日が来るだろうと思っていた。かつての盟友であり、今はその道を違えた二人が相対する様を目の当たりにしながら、私はただ見守るしかできないでいた。戦場に立っている時ですら、こんなに心を掻き乱されることはなかったように思う。あの人の力になりたい。盾でも何でもいいから、少しでも有利になるための力になりたい。でも誰であってもこの戦いを邪魔することは許されない。混じり気のない一対一のこの状況を彼らは望んでいて、そこに入り込む不純物はすぐさま排除されるだろう。私は力になりたい気持ちを抑え、晋助の意志を尊重するため崖の上から彼らを見下ろし微動だにせずにいた。見守ることしかできない状況に歯を食いしばりながら、結果がどうあれ、ただ晋助が死んでくれないことを祈るしかできなかった。


その瞬間、世界は止まった。そしてまた子ちゃんの悲鳴でまた動き出した。
完全に心臓を貫かれ、地面へ倒れるその身体に、生は感じられなかった。ずっと、彼のために私は生きてきた。もう無くしたと思った命を拾われてから、晋助のためだけに。だけどもう終わりだ。
これほどまでの苦しみは味わったことがない。体の内部のあらゆる所が握り潰されるような感覚に負けないよう、泣き崩れてしまわないよう、体と心に鞭打ちながら私は崖を降りる。うつ伏せに倒れる晋助を横目に立ち尽くす銀時の前に立ちはだかる。

「…なまえ、お前生きてたのか」

ゆっくりと近づき彼の握る木刀を取り上げ地面へ落とす。代わりにその手に短刀を握らせるとそのまま切っ先を私の腹に宛がう。あまりに緩慢な動作に抵抗の気配も見せなかった銀時はそこでやっと状況を理解したように手を引こうとする。自分でも驚くほどの力でそれを押さえつけて、刃を腹へ埋めていく。

「忘れないでね。晋助の命と、私の命と、私たちの子どもの命を奪った感触を」

晋助以上に辛い思いをしてきた銀時を知っているけれど、私にはこうするしかできない。ごめんね、と笑いかけると銀時の手を離し短刀を引き抜いた。そして晋助の元へへたり込むとどうにか彼の体を仰向けにする。まだ残っている体温に触れて、やっと涙が溢れてきた。この人と、赤ちゃんと、未来を過ごしたかった。もう叶うことはない願いが、頭から離れない。これ以上ここに留まっていても辛いばかりだ。最後に晋助の頬に触れて、短刀を首に刺すと彼の傍らに倒れ込んだ。



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